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いくらその言葉自体がウケるものでも、思い当たる節があるとあまり笑えない。「ハゲってマジおもろいよね!ギャハハ!」と言われても、聞いている側が薄毛に悩んでいたら笑えないのと同じ。久松の目はしっかり私の眼球の奥を掴んでいる。どうやらボケているわけでもない。一個のボケのためにここまで連れてくるほどギャンブラーなやつでもない。真剣に私に問うている。お前は本当に筆圧が強いのか?と。 『筆圧?んー。確かに強いかも。大体の人より、濃いな』 「それはいじめられてるからなの?内に秘め
『平たく言うたら、私と付き合うことのメリットよりもデメリットの方が大きいってことやんな』 「なんだよ、その言い方」 ちょうど私たちの座っている場所から真っ直ぐ芝生の斜面を降りてアスファルト、少し右側に、真新しいシーソーがある。そこでわんぱくな数人の子どもたちがきゃっきゃと遊ぶ。家の中では発散できないありあまるエナジーをここぞとばかりに発散している。そんなことはあり得ないのやけど、今からフラれることがほぼ確定路線の私の未来を、あの子たちが嘲笑っているかのように感じる。何笑
「耐えている」というと、めっちゃ辛いんかと思われるかもしれへんけど、そうでもない。心の中では、相変わらず、かつての担任の教師に対してと同じように「死ね!」とか「失せろ!」って気持ちは力強くある。ただそれを外に出すのをやめただけ。気持ち自体を封じ込めているわけじゃないからそこまでつらくない。 もちろん、外へ出せないことで溜まるストレスも少なからずある。あるんやけど、下校時自転車に乗りながらサザンの『勝手にシンドバット』を熱唱したり、飼っている猫を血眼で愛でたり、弟と一緒にマ
高校三年の5月の大型連休明け、私は東京の高校に転校した。転校してすぐ、結構モテた。いや、実際結構モテたのだ。 自己採点七十八点の顔面と中学時代のバレー部で引き締められているスマートな肉体のおかげやと思う。割と胸も大きい。実はほぼ胸筋やけど。 廊下を歩けば男子達は私のことを明らかに性的な目で、鼻の下をこれでもかと伸ばしながら顔と胸を交互に見つめてきた。 休み時間になれば自分のクラスは言うまでもなく、別のクラスからも、時には一、二年生でさえもが噂を聞きつけて私に近寄ってきた。