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Why? と聞かれたら?


* イラスト、今回もお借りしています。どんな人が描かれたものか知りたい方は、イラスト右下の"photo by"以下をクリックすると見に行けます。


『ビコーズ問題』


今回はこちらの記事を拝読して。

英語の授業で、『Why~から始まる疑問文には、Because~から答えると習いましたか?』というのがきっかけになった話。



現役高校教論のJuneさんが、『ビコーズ問題』と掲げられているこのお話。私も、学生の頃にそう習った記憶があります。 

Q: Why do you want to study abroad? (どうして留学したいのですか)

A1: I want to learn English. (英語を学びたいんです。)
A2: Because I want to learn English. (英語を学びたいから。)
A3: It is because I want to learn English.(それは、英語を学びたいからです。)

(Juneさんの投稿から引用)


Because~で答えるんだからA2が正解、と思うけれど、A1が最も自然な回答とのこと。
(*元の文章より一部削除しました。)


because は、if や when と同じ、従属接続詞なので、because 節だけで文は成り立たないのです。主節とセットでないと、文として成立しないのです。

(Juneさんの投稿から引用)


なのに、日本の学校の英語の授業では、未だに昔と同じまま指導されているそう。


Juneさんの推測によると、

これは、私の昔からの推測ですが、国語教育の影響だと思います。国語の問題で、「なぜ~か?」という問いには、必ず、「~だから。」と答えますよね?それを、昔の真面目な英語の先生たちが、そっくりそのまま(直訳方式で)英語に適用してしまったんだと思います。

(上に貼ったリンク記事より引用)


なるほど。 確かに日本語だと、「どうして〜なの?」って聞かれれば「だって、〜だから」と国語のテストでなくても答えます。 

そういえば中国語でも理由を説明する時に、“因为~”という単語を前に置く文法があるけれど、中国語が母語の学校でも似たような教え方をするのかな?と思ったのが、今回調べようと思ったきっかけです。

ネットでも出回っている自習用の教材など、ネットでちょこっと見て回った範囲内での検証です。サンプル数も少ないので、その辺りご了承の程。

前置きが長くなりました。


1)Why~には、やはりBecauseで


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テスト対策用の重点をまとめたサイトから拝借しました。小学6年生向けとあったので、英語は中学からだった私はびっくりしましたけれど、日本の小学校も今はこのくらいは知ってて当たり前なんでしょうか?

説明には、"通常Because...を用いて回答する"とあります。通常=Usuallyなので、例外もあるよ、とも取れます。


2)どちらもあり、のもの


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こちらは中国・人民教育出版社の英語の教科書。予習用に提供されているものがネットにありました。イラストが結構可愛い。てっきり昔の中国チックなイラストが使われているものだと勝手に想像していましたが、違いました。

Why~?, Because~の文が出てくるのは、小学5年生の下巻。ここでは、どちらもBecause~で始まっています。

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読み書きのページではBecauseを使っていますが、“ 主節(言いたいこと)because 従属節(どうしてかを説明するもの)“という形で書かれています。

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最後の章のまとめは、最初のページと同じ。

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指導用の資料等は一緒になかったので、この用い方の違いについて、先生から説明があるのかどうかはわかりませんでした。


3)どちらもあり、のもの。 もう一つ

こちらは対象学年は不明ですが、小学校の英語の先生向けのサイトより。英語の授業中、どうやって生徒の英語へのモチベーションを上げるか、というトピックの参考会話例として載せられていたものです。ちょうど上であげた季節についての話なので、同じ章のことかも。

(学习完冬天后,师生讨论冬天)

情景2:
T: Do you like winter?
S: Yes, I do. Because winter is white, white is my favourite colour.
T: I guess you have a white coat.
S: Yes, I usually wear my white coat in winter.
T: Cool, you will look like a snowman. What else are white?
S: The trees are white. The houses are white. The rivers are white. The cars are white.
情景3:
T: Do you like winter?
S: Yes, winter is quiet.
T: Why?
S: In winter, the birds sleep. The lake sleeps. The animals sleep. The flowers sleep. The trees sleep.
T: Wow, we can sleep a long time too.
S: Yes.
...

この参考例文では、1つめの会話ではWhyが使われていないですが、その回答にはBecauseから始まるもの、使わないもの、どちらも掲載されていました。これをみると、少なくとも口語の指導では、Becauseから始めてもOK、使っていなくてもOK、という印象です。


4) 論文レベルでは

英語の論文校正等のサービスを提供している会社のブログに、この話に関係する記事がありました。参考資料は洋書のようなので、Juneさんの話とも通じます。



(上記リンクより抜粋)

我们必须清楚了解句子「because we don’t want to be rejected by the journal editor」,问题不在于以「because」作为句子的开头,而是因为这是个不完整的句子。一组字词只有在下列条件才能组成一个完整的句子:1) 内含一个主词 ,2) 内含一个述语,并且 3) 表达出一个完整的想法。我们的例句未符合第三个条件,例句具有一个主词及述语,但只表达了部分想法,还需要一些部分来补足这个句子。


即和訳出来るほど中国語に精通していないので、全訳は省略しますが、単語の羅列が一つのまとまった(意味のある)文となる為には、1)主語1つ 2)述語1つ 3)一つのまとまった(意味のある)考えを表している ことが必要であるとあります。


一つのまとまった(意味のある)考えを表すってどういう意味?と思われた方は、先程のリンクにあったこちらの参考例文を。

不完整句子:Because I don’t like stinky tofu.
完整句子:Because I don’t like grease, I avoid going to night markets.

不完整句子:When students acts crazy.
完整句子:When students act crazy, teachers often take sick days.

Whenを使った文が分かりやすいですが、一つ目の不完全な文(不完整句子)では、確かに話が中途半端に終わっている感じがします。「うん、それで?」と次を促したくなる感じです。Becauseを用いた文も、一つ目だと、そのように読めるということなんでしょうね。


◇◇◇

余談ですが、上の例文中に“stinky tofu“が入っているところが微妙に笑えました。中華圏で中華を食べたことがある人はご存知かと思いますが、とても臭いがきつい豆腐(臭豆腐)のことです。揚げたものをよく見ましたが、唐辛子などが入った辛めのタレと一緒に食べると美味しいですよ。

◇◇◇

ということで

以上より、少ない対象数ではありますが、中国語を母語としているところでの英語の授業では、Whyで聞かれたら必ずBecauseから始めるように、と指導している様子は見つけられませんでした。

英語圏でもこのルールについて、詳細を話しても理解が難しいと思われる学年には「文頭には用いない」と単純にルールを教えるケースもあるようです。生徒からすると、理由はよく分からないけれど、学校の先生がそう言ってたからダメ、そんな感じで覚えている人もいるのかもしれません。

過去の書籍・雑誌の寄稿文等(論文よりは硬くない書物)ではBecauseから始まる文章は数々あるとのことで。。「ここでも使ってる!」と探しながら読むのも楽しいかも?

***  ***

※12/16 追記

Juneさんが「ビコーズ問題」についての追記記事を投稿しています。日本の学校での英語指導上でのこの問題について、より明確に書かれていますので、元のお話が気になった方は、そちらも参考に。