見出し画像

【カンボジアのモダニズム建築】Bophana Center (推定:1954年〜1965年建設)

こんにちは。カンボジアでは公共施設などの入場制限が緩和されたので、以前から時間をかけて見たいと思っていたBophana Centerをゆっくり訪れる機会ができました。

最初はChinese shophouseとして建てられたとのことでした。Chinese shophouseとしてイメージするのはホーチミンのチョロンやシンガポールにある植民地時代のヨーロッパ風の建物なんですが、ここは台形の柱といい、直線を多用したシンプルなデザインといい、ル・コルビュジェのフレンチモダニズムを思い出します。

1階:受付・ギャラリー

今回は特に制限なしで簡単に入れました。

前回来たときは、予約をしないと入れずアプリのチェックインや検温など、かなり厳しかったです。また映像ライブラリーは入れなかったような記憶も。

中央にアトリウムがあり、明るいです。2006年に元の設計に準じて復元されたそう。

階段室

この階段が素晴らしいです!
手すりのデザインはプノンペンのタウンハウスのテラスの手すりによくあります。
階段下の穴は、建築当初はどのように使われていたか気になります…
踊り場から見たところ。タイルはカンボジアやベトナムのモダン建築でよくあるタイプです。

ボパナセンターの名前の由来、ボパナさん

内部を案内してくれたスタッフによると、この女性がBophanaさんだそう。
左はクメールルージュ前の普通の生活をしていた時、右がトゥールスレンで囚人となった彼女。
その後亡くなったそうです。

このセンターは、クメールルージュで断絶した文化や芸術を、映像作品としてできるだけ集めて後世に残したいというRithy Panhさんの願いを10年かけて形にしたものだそう。Bophana centerの中心に掛かっているこの絵が創立の思いを強く表しています。

外観


正面は樹木でうっそうとしているので、気をつけないと見逃します。
左にはプノンペン名物の電線ぐるぐる。
電線地下化が進んでいるので、そのうちなくなるかもしれません。

企画展:トンレサップ湖の写真

今回は1階でタイの写真家による、トンレサップ湖の写真展を開催していました。トンレサップ湖はアンコールワットから15kmくらい南にある、カンボジア最大の湖です。

この写真は水上住居に住む子供たちが、学校へボートで通っているところ。
水位の上がる雨季は交通手段がボートしかない。

ベトナム在住時にはホーチミン市美術館で、トンレサップ湖に住むベトナム系住人の写真展を見ました。高島屋も近い、大都会の中心部にあるそのコロニアル様式の美術館で、カンボジアの湖の水上住居にひっそり住むベトナム人の写真や映像に衝撃を受けました。
理由はわからないですが(おそらくベトナム戦争時の混乱?)トンレサップ湖にはベトナム系住人が多いそうです。

ベトナムのアイデンティティを持ち、カンボジアの国籍やIDカードは持たず(ベトナム国籍も無いので無国籍)子供はカンボジアの学校でなく、水上の小学校でベトナム語の初等教育を受けさせている映像はショックでした。

一度自分の目でも確かめたくて、その後アンコールワットに行った際にトンレサップ湖も行ってみましたが、乾季でギャラリーで見た写真とは全然違った風景でした。

2階:ライブラリー

素敵な階段室を上がると、映像と本のライブラリーがあります。コンピューター上にアーカイブがあり、スタッフが資料を探すサポートをしてくれます。

昔の撮影機材が展示されています。左奥はアトリウム。
全部の部屋が明るいです。

意外に美術と建築の本が多かった

読みたかった、カンボジアモダン建築の本。ここにありました。
オンラインで読めるヴァンモリヴァン氏の情報は、この本が元でした…!
ネットなどで見ると、ボパナセンターで近代の悲しい歴史が強調されているので、近代の歴史資料が多いのかと思いきや、アートや建築の本がかなりありました。
それもカンボジアだけでなく、カンボジアの近代・現代建築につながるヨーロッパの本も多かったです。もっと早く気付けばよかった…
ル・コルビジェを筆頭とするフレンチモダニズムをカンボジア的に解釈し、
熱帯の気候に合わせた独自のデザインにした(みたいなことが書いてあります、多分)
Bophana Centerのロゴがバウハウスっぽくていいですね。

2階:テラス

あーすごい好きです。この縦横一直線デザイン。
(フレンチモダニズムは意外にフランス人には不評のようですが…)
木がもじゃもじゃ。
お隣は普通の住居なんですが、
ボパナセンターと全く同じ円窓があったので、同時に建設されたのかもしれません。

公式サイト

60年代〜70年代前半のプノンペンのポップカルチャー


公式サイトからお借りしました。60〜70年代クメールポップのレコードジャケット。
クメール語のフォントがカッコいい!
ホーチミンでもこの時代のベトナムポップのレコードジャケットを見ましたが、
比べると、カンボジアのものは、よりインドに近い雰囲気があります。

サイゴン(現ホーチミン)に60年代にポップカルチャーが来ていたのは、それをテーマにしたカフェが最近人気があることから知っていました。

それがプノンペンにもあったとは。いや、これだけ近い(東京〜名古屋間の感覚)のだから、近代で文化を共有するのは当然なのですが、その後の時代があまりにも悲惨なため想像できませんでした。


70年代前半のプノンペンの街並みとロックンロール、なかなかいいです。繁栄を象徴する外資系ブランドロゴ、全部日系ですね。日本の勢いが最高潮の時期だったのだなあ…
では!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?