「重陽の節句」に~菊のよさを再認識~
第75回
難聴ソルのゆんたくTime
2016(平成28)年9月9日 島原新聞掲載
先日、久しぶりにフラワーアレンジメントのレッスンに行ってきました。普段は洋花を中心に生けていたのですが、今回は初めて和花に挑戦しました。テーマは「重陽の節句」。重陽とは九月九日のこと。古代中国では数字の奇数は陽を表し、九という数字は陽の気が極まった数字と考えられていました。その九が重なる日は最も陽の気が強い数字が重なっためでたい日です。
しかし、逆に気が強すぎて不吉だという考えもありました。そこで邪気を払い長寿を願うための風習が生まれたのです。どんな風習かというと、高いところに登りお酒に菊の花びらを浮かべた菊酒を飲むというものです。
この行事の始まりと言われる話は、中国の唐の時代に書かれた李瀚(リ・カン)の『蒙求(モウギュウ)』の中にあります。
内容は「九月九日、おまえの家に災いが起こる」と言われた桓景(カンケイ)は、言われたとおりにその日は家族全員で山に登り、菊酒を飲んで厄除けをした。夕方家に帰ると家畜たちが身代わりになって死んでおり、桓景たち一家は災いを免れた―という話です。
この話は漢詩にも題材として取り上げられ、平安時代には貴族の間にも大切な風習として取り入れられていたようです。重陽の節句には菊はなくてはならないものです。
ということで、今回の私のフラワーアレンジメントのテーマは「菊」ということになりました。
私が菊に対して持っていたイメージは、仏事に使われる花。美しいけれども華やかな場所では使えない花だと思っていました。
ところが今回のフラワーアレンジメントで目の前に出された主役の花は菊でした。最初はえっ?と驚きましたが、菊の花と向き合っていると今までとは違う感覚が湧いてきました。その高貴な存在感に気づいたのです。通常フラワーアレンジメントの時はいろいろな種類の花を取り混ぜて全体のバランスを整えていきます。しかし菊の場合は洋花と合わせにくく、菊の花のみで十分美しいのです。東洋のプライドをしっかり持った花だなとイメージを新たにしました。
菊は手に入れやすい身近な花です。今回重陽のことを調べたり、菊を使ったアレンジメントをする機会があったりして、日本人がいかに菊を大切にしているのかが分かり、改めて菊の良さを知りました。なぜ古来より親しまれてきたのかがちょっと分かったような気がします。菊は素敵で高貴な花です。私も菊のようにスッとまっすぐな芯を持ち、誇り高く生きていきたいと強く思いながら、今年の重陽を迎えます。(9月9日が重陽の節句ですが、旧暦ではカレンダー上の10月9日が重陽の節句になります)
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