UDトークの活用~教育の現場でも期待~

第80回

難聴ソルのゆんたくTime

 

2017(平成29)年12月28日 島原新聞掲載

 

先日、島原市で開催された草野仁さんの講演会で音声認識アプリ「UDトーク」を試験的に使わせてもらいました。私自身が会場と一体化し、感動を味わうことができました。そして、それが思いのほか他の方々からも好評でUDトークの可能性を強く感じました。

 

UDトークの利点はリアルタイムに文字が表示されることです。知りたい情報や人の発言などがすぐに理解でき、疎外感に悩まされることがなくなりました。今では、生活に欠かせないツールとなっています。

 

いま思えが、小中高校生の時期にこういうものが欲しかったです。一番多感な時期、友達とのコミュニケーションもスムーズに行いたいし、テレビ番組を始めとした、世の中の情報を知りたいし、毎日の授業をみんなと一緒に体感したい。自分だけ聞こえていないということで、周りと一緒に一体感が味わえないという辛い思いをしてきました。UDトークが、その時代にあれば状況は変わっていたと思います。これからの時代、UDトークを教育の現場に生かしていくことはできないでしょうか。

 

一つの方向性として、長崎県のUD訂正者である坂本さんの活動をご紹介します。12月に入ってから、「誰にでもUDトークを便利に使ってもらえるように」と個人として活動されています。さっそく隣県の熊本から依頼がありました。人工内耳装用している子どもが中学校入学を控えていて、中学校側としてUDトークを導入する方向で話が進んでいるが、使い方の詳しい説明をしてもらえないか―という相談でした。すぐに中学校に説明に行こうと考えていたようですが、中学校の都合がつかず次の機会を待っている状態です。

 

このとき熊本まで出向いたので、現在通っている小学校を訪問。UDトークについて説明をし、音声認識を実際に使ってみたそうです。すると周りの子どもたちも興味津々で、先生方も感心されていたそうです。私としてはこういう形でどんどん教育現場に広めていってほしいと思います。

 

学校で使う場合は事前にクラス別によく使う言葉を単語登録しておくとか、授業の内容で使う固有名詞を単語登録しておくとスムーズに使えるでしょう。UDトークには「漢字、かな、日本語設定」という機能があり、小学1年生から中学生まで1学年ごとにレベル設定をすることができます。習熟度別に漢字とかなの分量が調整できる機能がついています。さらに、ふりがなの設定もできます。小学生からでも利用しやすい機能がたくさんあるので、学校でも無理なく使えるのはないでしょうか。坂本さんと一緒に教育現場でのUDトークの普及を期待しています。

 

また、長崎県内でも様々な場所でUDトークを活用したいと思い、大きなホールでの利用環境(音源やネット環境など)を調べ始めています。まずは、長崎ブリックホール国際会議場での講演会。講演関係者の理解もあり、スムーズにUDトークを使って話し手のスピードと同じタイミングで内容を理解することができました。講演者の言葉がダイレクトに心に響き、その話に感動し涙が止まりませんでした。

 

長く忘れていたこの感覚。最近は年のせいで感動しなくなったのかと思っていましたが、そうではなかったのです。その人の一語一句を、すぐその場で受け止めることで生じる心の動きは私の中にちゃんとありました。リアルタイムに受けとめるチャンスがなかったのです。隣を見ると、周りの人たちも泣いていました。それを見て、私も会場の皆さんと一緒に同じタイミングで感動を味わうことができたのだと、さらにそのことにも感動しました。

 

この感動です。皆と一緒に、同じ時に、同じ気持ちになれる。この感動を、小中高校生の時に体験することがすごく大切なことだと思うんです。私には体験できなかったことだから。

 

UDトークはすごく利便性があるツールです。聴覚障害を持つ子どもたちの心の成長にも関わってくれるものだと思います。学習の手助けともなり、社会との懸け橋にもなるはずです。

 

聴覚障害を持つ子どもたちが、夢を持って楽しい学校生活を送れるように、UDトークの教育現場での活用を期待しています。

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