着物にときめく~もっと身近なものに~

第84回

難聴ソルのゆんたくTime

 

2018(平成30)年6月16日 島原新聞掲載

 

私にとっていま一番心ときめくもの。それは着物です。GWに静岡で義弟の結婚式がありました。気持ちのよい青空のもと、本当によいハレの日を迎えることができ、嬉しい限りでした。私は精一杯のお祝いの気持ちと親族の皆様への敬意を込めて着物を着て出席しました。

 

会場に着くまでは緊張していましたが、主人の母や妹と一緒に着付けをするうちに、しばらく会っていなかった時間を取り戻して、自分の気持ちも落ち着いてきました。着物を着ると凛とした気持ちになります。

 

この日は、どこにいても富士山がよく見えました。雄大な富士の山をバックに着物姿でハレの日の記念写真を撮ることができ、なんとも言えない日本の風情を感じた日になりました。着物っていいなぁと改めて感じました。

 

この歳になって改めて着物が好きだなと思うようになりました。小さい頃から好きだったわけではありません。着物を着た最初の記憶は七五三の時。がんじがらめに巻き付けられているような感じで、とても辛くて嫌だったのを覚えています。一緒に着物を着ていた妹は「嫌だ!脱ぐー」と泣きながらジタバタしていました。この姿を見ている私も辛かったです。

 

その後は成人式。この時もハプニングがありました。美容室で現代風のヘアスタイルにアレンジしてもらい振袖を着てみたところ何となく違和感が…。写真を撮りに行くために母が迎えに来ました。私の姿を見た母は「その髪型は何?」と、着物の格に合っていないことを指摘。その場で母が収まりよく直してくれましたが、私としてはとてもショックで写真を撮る気もありませんでした。

 

不機嫌なまま写真撮影になり、私はニッコリもできませんでした。困った写真館の方が、七五三で泣いている子どもをあやすようにオモチャの鈴を振って私をなだめようとして下さっているのですが、それが私にはまた悲しくて、ますます気持ちが落ち込んでしまいました。この時の写真はしばらく見ることができませんでした。今は笑いながら見ることができますが…。

 

決して着物を着ることによいイメージがあったわけではありません。よいイメージを持ったのは妹の結婚式で着物を着た頃からです。成人式の時と同じ振袖だったのですが、大好きな妹のお祝いの席で沢山の方から「着物姿が素敵ですね」と言っていただいたのがとても嬉しかったのです。

 

それ以降、式典やハレの日には必ずこの振袖を着ました。そのうちにこの着物に袖を通すたびに、ワクワクした気持ちに切り替わり、とても楽しい時間を過ごすことができました。振袖さん、ありがとう。

 

私はもう着ることがないと思うので、姪達が着て、また新しい喜びを与えてくれると嬉しいです。着物のよい点は、自分だけでなく、次の世代、次の世代へと受け継がれていくところでしょう。

 

私も大事な着物を受け継ぎました。それは黒留袖。母方の祖母が母の嫁入りの時に着たもので、母が妹の結婚式の時に着たものです。いま私に合うように仕立て直しをしてもらっています。

 

これを一度着せてもらった時、何だか私は守られているような不思議な感覚を味わいました。祖母の思いや母の気持ちが、この着物を通して伝わってきたのです。祖母、母、私と3代に渡って受け継がれ、それぞれの人生に関わってきた着物だと思うと胸がいっぱいになりました。これからは私が大事に着て次の誰かに伝えていかなければと思います。着物は着るたびに物語が生まれます。

 

現代は「着物離れ」と言われています。本当に特別な日にしか着なくなっていますが、それでも着物を着ると、私はやはり日本人なんだなぁという感覚を心の底から感じます。着物は日本人のアイデンティティを呼び覚ますものです。出来ればもっと身近なものにしたいですね。

 

このところ、着物に対する興味が深くなって、色んなことを知りたいなと思うようになりました。初歩的なところで言うと、着物は人に合わせて小さくも大きくもできるところが不思議です。また、クリーニングはどんな方法で行われているのでしょうか?ちょっとしたことも気になります。興味がわいているいま、どんどん調べてみたいと思います。

 

若い方は、夏の花火大会の時などによく浴衣を着て歩いています。着物も気軽に身近なものになっていくとよいなぁと思う今日この頃です。

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