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「書く」ために「読む」、「インプット大全」を読んで

 本を読んで知識をつけたいのになかなか読んでも身についた気がしない。そもそも本を読み切れない。そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないだろうか。

 私もかくいうその一人で、なかなか身についた気がしないことに悩んでいた。本を読んだ翌日に、友達にその本を勧めようと要点や面白かった点などを話そうとするが、なかなか内容が思い浮かばない。必死に思い出して出てきたものが2,3個しかなく、とうとう話を盛り上げられず「面白かった」で強引に締める。そういったことが一度や二度の話ではなく、しょっちゅうあった。そのために、効果があるインプットの仕方を学びたいとずっと思っていた。

 そして、今回「インプット大全」を手に取った。

 この本は脳科学に基づいて効果があるとされるインプットの法則を、本を読むことだけにとどまらず、すべての学びに応用させて、どのように実践していくべきかを紹介してくれる良書だった。特に、本の読み方、観察力を鍛えたい人、インターネットでうまく情報収集したい人、自己洞察したい人などにおすすめだと思う。

 以下自分にとって大事な部分を重点的に要約する。

インプットのルール


インプットするときには、
①知りたいことだけ効率よくインプットする            
②アウトプット、目的ありきでインプットする

この二点が非常に重要である。順を追って説明しよう。


「知りたいことだけ効率よくインプットする」

 本を読むにせよなんにせよ、自分にとって必要な知識が本全体にすべて書いてあることは非常に少ない。自分にとって本当に必要な部分だけ見ることで、最小の時間で最大の勉強効率を上げることにつながる。

「アウトプット、目的ありきでインプットする」

 勉強は目的を決めてやると効率的にできる。
 例えば、受験勉強、もしくはテストのための勉強を思い出してほしい。ただやみくもに勉強してもテストでいい点が取れるわけではなく、出題範囲や残りの日数、到達したい点数を決めて実行に移したはずだ。
 同じように何か勉強をする際はいつでも、具体的な目標と期間を定めてみよう。自分が目標に達するにはどのように行動すればよいか、具体的な行動を考えやすくなり、効率的に動ける。

 また、アウトプット前提で勉強すると、記憶は長持ちする。
 ロンドン大学の研究で、「勉強時間の後、今学んだことを他人に教えてもらいます」とアナウンスされたグループは、ただ単に「テストをする」といわれたグループよりも、テストの点数が高かったという結果が出ている。
 これは、ヒトが緊張すると分泌される脳内物質ノルアドレナリンの効果によるものだ。ノルアドレナリンは、人間の記憶力や判断力、想像力を高めてくれる。なので、「誰かに教える」という緊張感をもって勉強したグループの方が、勉強した内容をより記憶できたのだ。
 20歳以降になると、それまでの勉強と異なり、アウトプットをしなければ記憶に定着しなくなる。アウトプット前提で覚え、実際にアウトプットすることが必要なのだ。


以上の二点のルールを、読む、聞く、見る、インターネットを使う、その他学ぶことに応用して、効率のいいインプット実践法を紹介していく。


「読む」

「パラパラ読み」をする

 「パラパラ読み」により15分程度で本の大体の内容をつかむことで、二周目に本を最初から読もうとすると、内容の緩急がわかるので読むスピードも理解度も高まり、「積読」(※読まずにおいておく事)をふせげる。


 「パラパラ読み」の方法は、
①目次を見て学びたいことを3つ挙げる。
②学びたいことに当てはまる項目と、本の最初と最後の一章を大雑把に読む
③各章のまとめは注意して読む。
 

 3つに絞る意味は、人間が一度に処理、記憶できる数を考慮しているから。また、本の最初と最後の一章は、たいてい筆者が一番伝えたい重要なことが書かれているので、その部分もぜひ読むこと。


徹底的にアウトプットする

 本をやみくもに読んでも記憶に残らない原因の一つは、その知識をアウトプットしていないからだ。人間は使わない記憶は徐々に忘れていく。目安としては、2週間に3回以上使うと長期記憶に残りやすいとされる。その為、本を読んだら徹底的にアウトプットして、長期記憶にしていくことが大切だ。

感想を書く、人に話すことはもちろん、実際に行動してみることも大切である。本の内容を最低でも50%以上達成したら次の本にいこう。すると、多くの本を読めなくなるが、それでいい。多くの本で浅い知識を得ていくよりも、少ない本で濃い知識を得ていく方が、お財布にも効率的にもいいのだ。


読む本は「選ぶ」

 徹底的なアウトプットによって本を読む数が少なくなってしまうので、当然本は選んで読んでいかなければならない。自分の知っている知識が載った本や、レベルに合わない本を買っても意味がない。なので、本屋に行って目次や内容を見てから買うことをお勧めしたい。

 また、素人が選ぶよりも専門家に頼った方がいい。ぜひ自分の知りたい分野で、自分に合うおすすめの本を勧めてくれる信用できる人をみつけて、そのアドバイスに従ってみてもいいだろう。


「聞く」

ノートやメモは最小限に

 講義を受ける時は、話を聞くことに専念することが大切だからだ。講義は本と異なり、音声や身振り手振りなど、非言語情報が多い。記憶はほかの情報と結びつけば結びつくほど残りやすくなるので、内容を覚えたければ非言語情報も注意して観察するべきである。

 メモを取りたい気持ちはわかるが、どうしても重要な気付きだけに絞って書こう。メモの取りすぎはかえって記憶力を低下させるという。プロの記者は、メモは思考の整理としてしか書かないと言われる。同じように、思考の整理のためだけにメモやノートは使おう。(ただし大学の講義など、高校までのように、テストのために全てのことを覚えなくてもよいものに限る)

目的をもって聞く

 講義でももちろん目的をもって聞く。話の全てを学ぼうと思うと、どうしても前半だけに集中力が使われ、後半になるにつれ記憶が薄くなってしまう。講義やセミナーは基本的に一番最後に大事な総括を話すことがあるので、この聞き方では非常にもったいない。
 「これだけは持って帰ろう」というものを三つ絞って聞くことで、自身の集中力を聞きたいものだけインプットできるうえ、自然と話の展開を想像しながら聞けるので、その他の点も漠然と全て聞くよりもかえって記憶しやすい。

・質問しようと思って聞く

 講義の最後に、講師から「何か質問はありますか?」といわれて、手を上げないのは非常によくない聞き方だ。質問をしないことは内容をすべて理解しているようだし、一見いいように見える。しかし、たいていの人は「自分はどこがわかっていないのか」がわからない状態ではないだろうか。

 質問を聞こうと思いながら聞くことで、「質問をしてもおかしくない質問」をしようと緊張感をもって聞ける。緊張感によってノルアドレナリンが分泌されるので記憶に残りやすくなる。つまり、質問はアウトプットなのだ。

 「教える」と同じ緊張感で聞けるので、質問を考えながら、目的をもって人の話は聞くといい。


「観察する(見る)」

・観察力を鍛える

 観察力を鍛えることのメリットは大きい。


 まず、人の「非言語情報」を読み取りやすくなる
 「非言語情報」とは表情や身振り手振り、声色など。人は言語情報よりも非言語情報を重視して、日々コミュニケーションをとっている。非言語情報を観察によって気づくことが増えれば、そこから人の感情をうかがうことで、より円滑なコミュニケーションをすることが可能になる。

 次に、学び取るものが多くなる
 同じ映画を見ていても、多くの物事に気づける人と、そうでない人がいる。これはひとえに観察力の有無によるものだ。観察力を鍛えることで、限られた時間で効率よく、多くの情報をインプットできる。

 そして、変化に気づきやすくなる
 例えば、本屋に行って新作コーナーで「アラビア語」の本が多くあることに気が付ければ、「アラビア語」が必要とされているのではないかと気づくことができ、自分の市場価値を上げたり、ビジネスに生かすことができる。

 昨今のグローバル化で、ものだけにとどまらず婚活や就活など、あらゆるものが市場競争の場となりつつある。観察力によって変化にいち早く気づくことは、これからの時代を生きるうえでますます重要になっていくだろう。

 では、実際に観察力を鍛えるためのトレーニングを紹介する。

・人の観察をする

 人の表情を見て、何を考えているのか推理してみる。ご飯に誘った時の返事が良いようでも、表情に一瞬本音が現れることがある。質問→観察でどこに変化が出るのか、どのような感情なのかを結びつけるトレーニングをするとよい。

 また、街中で出会う人の素性を推理してみる。ホームズのように、身に着けているものなどの限られたヒントから、その人はどういう職業か、何をしていたのか、どんな気持ちか・・・など考えてみる。正解がわからなくとも、観察力を十分高めてくれる。

・映画を見る

 映画は小道具や演技、表情など、見える情報だけで、主人公の生い立ちや素性、感情、世界観など、見えないものを表現している。アウトプット前提で見れば、細かいところまで見なければという緊張により、細かい部分まで見たり、なぜ主人公はこの行動をとったのかなどを推測することで観察力を鍛えられるだろう。

 わからなかった部分はネットで考察を見るなどして解決する。自分の見方とは別の見方を知ることもでき、さらに観察力を上げてくれる。

・絵画を鑑賞する

 アート作品、特に絵画などは観察力を鍛えるのに最適のツールだ。一枚の絵という制限の中で、作者はポーズや背景、小道具に意味を込めようとする。その一つ一つに何の意味があるのかを考えながら見るといい。わからない部分は音声ガイドなどを聞いてみると、自分の知識が広がり、観察できる幅が広がる。

・旅に出る

 海外でも国内でも旅に出てみる。国内で近場でも、最寄りの駅から三十分も行けば全く知らない街並みを見れる。

 海外旅行であれば特に、目的を決めて、毎日アウトプットしようと思えばいろいろなことに気づける。スーパーマーケットに行って現地の生活を垣間見たり、現地の人と話して観光地を探してみたりする。自分の知らない街に触れることで、観察できる幅が広がる。トリップアドバイザーなどを雇ってみるのもいい。

 とにかく、観察力を鍛えるための原則は

「アウトプット前提で観察する」と、「『なぜ?』を追求する」ことだ。


「インターネットを使う」

・「情報」は少なく「知識」を多く手に入れる

 ここでいう「情報」とは、ただの事実のこと。新しければ新しいほど価値があるもの。

 一方「知識」とは、情報がつまり何を指すのか?を分析、解釈したものであり、数年たっても価値が腐りにくいものを指す。

 ネットや新聞で手に入れられるものの大半は「情報」であり、本などで手に入れられるものの大半は「知識」だ。大量に「情報」だけインプットしても使いきれず腐らせるのが関の山。「知識」を多く手に入れ、知識で扱いきれるほどの最低限の「情報」のみ手に入れることこそが『知りたいことだけ効率よくインプットする』ことにつながる。

 知識と情報のバランスは7:3に心掛けてみること。

情報の宅配便化をする

 自分にとって必要最低限の知識と情報を効率よく得るためには、自分の信頼できる「キュレーター」をフォローし、タイムラインでチェックできるようにするといい。

 キュレーターとは、情報や知識を集めてくれる専門家のことを指す。決してフォロワーの数などで判断せず、自分にとって必要なキュレーターかどうか、自分で判断すること。一週間ほどフォローしていれば自分に合うかどうかを確認できる。

 そして、わざわざキュレーターのページを見て回るのは非効率なので、RSSを利用したり、ツイッターのタイムラインに一元化するなど、効率化させよう。


「人と会う」

・コミュニティに参加し、気の合う人を見つける

 一人だけで何かを続けて成し遂げようとすることは、脳科学の観点から言うとほとんど不可能。なので、自分と同じ目標を持つような仲間を見つけるといい。人と出会うことは、自分の知らなかったことを知れたり、教えあうことができるので、効率よくインプットするためには必須だ。

 同じ目標を持つ人と出会うには、コミュニティを活用する。コミュニティとは、セミナーや勉強会など、同じ志をもつ人々の集まりのこと。月に一度はリアルでのイベントがあり、自分の目指したい分野であるコミュニティを探して、積極的に参加してみること。

人とつながり続ける

 出会った人と仲良くなるためには長く、深く、頻繁に会うことが大切。心理学では、人間は会うたびに好感度が上がる「ザイオンス効果」というものがあることがわかっている。そのため、仲良くしたい相手とは頻繁にあった方がいい。

 また、あとでその人の重要性に気づくこともある。とにかく直感で仲良くしたいと思った人とはつながり続けることが大切だ。つながり続けるためには、まずは出会ったその場で次の約束を取り付ける。そうすることで、せっかくのチャンスがなあなあで終わらず、次につながる。

価値を提供する

 人との親密度を上げたい時は、「与える」ことを意識した方がいい。人間は「手伝ってもらう」などの価値を提供されると、価値を返したくなる「返報性の法則」が働くことがわかっている。なので、ものや金ではなく、応援や知識、情報のような価値を積極的に提供するといい。

・メンターを見つける

 メンターとは、自分がなりたい、もしくは目指している人物像。例えばある子供がイチローに憧れて野球をやっているなら、その子にとってのメンターはイチローになる。メンターを持つことによって、人間は「モデリング」が働く。すなわち、その人をまねしようと思うことで、学習が加速する効果があるのだ。

 なので、自分にとってのメンターをいくつか思い出してみて、その人物の行動などをまねしてみること。自伝や人物伝には、その人物の行った行動や思考法が載っていることも多いので、ヒントにするといい。もし御存命なら、その人物に直接会ってみるのもいいだろう。


「自分を知る」

自己洞察力を高める

 自分のことを知ることで、学習の適切なアプローチをとりやすい。自分のレベルや目標、学びたいことや得意なことなどを知ることで、学びのモチベーションにもつながる。その為に自己洞察力を高めることが大切だ。

 哲学書を読んだり、映画を見るなどの「自分と向き合う」インプット、自己洞察を文章化する、日記を書く、マインドマップを書くなどの自分と向き合うアウトプットをしてみること。また、自分の向き不向きを知るためにも新しいことにどんどん挑戦してみること。新しいものと現状のものを比べることで、今まで不向きなことをしていたことに気づくかもしれない。

 学びは特に自分の心地いい「コンフォートゾーン」を抜き出した時に見つかりやすい。積極的に新しいものに挑戦していくこと。


まとめ

 このほかにも、今回は紹介しなかったチャプター7では、さらに科学的に裏付けられた、脳を最大限使用するための細かいテクニックなどがつまっているなどこの本には役に立つ情報が多く掲載されていた。興味のある方は是非読んでみてほしい。

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