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夕闇

夕方、まだ明るいうちに風呂に入り、濡れた髪も乾き切らぬうちに夕飯を食べるのが好きだった。まだ酩酊も化粧水も知らない、幼少期の話だ。

石像に戻ったウルトラマンティガが海底に沈んでいくのを見て、箸を持ったまま号泣した。記憶している中で、初めての絶望感だった。でも、そんなのは大したことなかった。本当の絶望は、翌週に訪れた。

画面の中のティガは、光となった人々によって復活した。でも、自分は見慣れた畳の上に座ったままだった。きっと笑顔で、夕飯を食べていた。
自分は、あんなに大好きだったティガになれなかった。

今の僕は、ティガになるなんてありえなかったことを知っている。でも、あれ以来、何かになることを諦めている。ティガのことなんか忘れたくせに、夢だの希望だの言う人たちばかりが、何者かになっている気がする。

あの頃のように、夕飯を夕方に食べたら、何か変わるだろうか。

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