見出し画像

真似るなら、真似られるモノを

なんぼー:去年の秋に、紅葉の季節に京都に行ってきたんだけどさ。この写真見てよ。

あやちゃん:うわ!きれいに撮れてるじゃないですか!ここどこっすか?

なんぼー:京都の比叡山の麓にある “瑠璃光院” っていう場所。「そうだ 京都、行こう。」っていうポスターで有名になった場所だよ。

あやちゃん:あーなんか見たことあるかも?「そうだ 京都、行こう」も聞いたことある気がする。

なんぼー:確か1993年から始まったキャンペーンだからね。今は少しコピーも変わっちゃったから知らなくても不思議じゃないかも。だけど、有名なキャンペーンだから、聞いたり見たことはあるはず。

https://souda-kyoto.jp/index.html

あやちゃん:うん、どこかで見たし、知ってる。でもそれ関係なしに、今でも人気になりそうな場所。超「映え」だもん。

なんぼー:そうそう。インスタ映えだよね。でもこれさ、実は彩度あげてて、本当はこんな感じなのよ。

あやちゃん:あー、あるある。

なんぼー:あるあるなんだ。

あやちゃん:料理の写真なんて、彩度あげまくりっすよ。それ以外の写真も、みんな大体加工してる。顔の輪郭細くしたり、目を大きくするとかばっかり「盛ってる」とか言われがちだけど、彩度あげたり明るくしたり、風景写真とかもゴリゴリに盛ってますからね。

なんぼー:実際にInstagramの瑠璃光院のフィード見ても、めちゃくちゃ彩度高くてきれいな写真ばっかりだったんだよね。でも自分で撮ってみて、「これ全部彩度あげてたんだ…」「本当は写真ほどじゃないんだ」と思ったら、何も信じられなくなっちゃったよ。

あやちゃん:それが令和でしょ。

なんぼー:そんなものなのかね令和は。でもさ、なんかそれって本物の価値を毀損しているようにも思えるんだよね。

あやちゃん:どういうことっすか?

なんぼー:だって、実際に見に行ったらちょっとがっかりするわけじゃん。「写真で見てた景色の方がよかったなあ」って。写真で眺めてる他の外国の綺麗な景色も、本物を見ると少しテンションが下がるようになると、 “本物”の価値が小さくなっていく気がする。

あやちゃん:んー。本物の価値ってそんな大事ですか?写真が綺麗ならいいじゃん。インスタにばえてる写真載せたいもん。

なんぼー:なるほどね。ただ、結果的には全体で言うと、瑠璃光院は満足度がものすごく高い場所だったんだよ。

あやちゃん:なーんだ。満足してるんじゃないですか。

なんぼー:彩度が少し低めだとはいえ、景色が綺麗だったのは勿論なんだけど、それと同時に、拝観のUXがものすごく印象に残ってさ。

あやちゃん:拝観のUX?

なんぼー:インスタに載っているのって、この景色だけじゃん。だけど見学にはその後まだまだ続くんだよね。

あやちゃん:えー知らなかった!

なんぼー:見学コースは、まずこのインスタで有名な景色から始まる。そこでみんなインスタに載ってるような写真を撮ろうと一生懸命スマホで撮影する。それで残りは尻すぼみかと思いきや、その後に写経があるの。

あやちゃん:写経。文字を書き写すやつですか?

なんぼー:そうそう。お経を書き写すやつね。キレイな建物の中で写経をすると、厳かな気持ちになるのよ。そこで集中して写経に取り組んでいると、さっきの写真を撮っていた気持ちが一旦リセットされる。そのリセットされた気持ちで、次の景色を見にいくんだよね。そうすると、また別の景色を「いいな〜」って純粋な気持ちで眺められる。

あやちゃん:それは上手っすね!確かに、インスタで有名な写真を撮ったらある程度満足だけど、そこで現地でしか味わえない体験ができるってわかったら、より一層満足度があがるかも!

なんぼー:そうそう。あくまでInstagramで有名な景色は入り口でしかなくて、その先に面白い体験があるのも素晴らしいし、ただ次の景色を見せてしまうと、「さっきのInstagramに載せる景色よりは微妙だな〜」とか、ついつい見比べてしまうと思うんだけど、一旦写経を挟むことで、気持ちをリセットさせているのがものすごくうまいなと。

あやちゃん:すごい。ものすごくこちらの気持ちを見透かされてる!(笑)

なんぼー:瑠璃光院って結構狭い施設で、見学料も2000円くらいするんだけど、ものすごく価値がある体験だと思ったよ。

あやちゃん:私も行ってみたくなりました。写真を撮れるだけじゃなくて、面白い体験ができるっていうと、やっぱり行きたい気持ちが増しますね!

なんぼー:ちなみに言いそびれてたけど、その「インスタ映え」を作る工夫もすごかったんだよね。瑠璃光院の写真って、紅葉があって、それが反射して映り込んでいるのが美しいじゃない。この反射しているのって、床だと思ってたら机だったの。

あやちゃん:机?!どういうことですか?

なんぼー:撮影している現場はこんな感じ。

あやちゃん:すごーーーい!!囲み取材みたいっすね(笑)斬新なスタイル。

なんぼー:コレめっちゃ頭良いなと思ってさ。こうすることで、誰でもいつでも人がいないキレイな写真が撮れるんだよね。

あやちゃん:なるほどそういうことか!確かに、インスタ映えの写真って、人が入ると一気にダサく見えちゃうから、いかに人が入らずにキレイな景色だけにするかってすごく大事なんすよね。人を消しゴムで消す画像加工カプリがあるくらいだもん。(笑)

なんぼー:そうそう。人が入らない角度を探すのにみんな必死でしょ。だけどこの方法なら、いつも人が入らない写真が撮れて、誰もがインスタ映えの写真を撮影するためのハードルを下げてる。その場にある景色はオンリーワンで、素晴らしいギフトだけど、この撮影スタイルは知恵と工夫によるもの。それがすごい。

あやちゃん:これはありがたい!!確実にいい写真撮れるなら、わざわざ早朝の人のいない時間にいかなくてもいいし……(笑)ことごとく、こちらの気持ちを考えてくれる場所ですね。

なんぼー:そうそう。これって、インスタ映えな写真を撮ってもらう上での課題じゃない。それを、身近なアイデアで課題解決しているのが素晴らしいと思うんだよね。「机にきれいな景色を反射させる」っていうアイデアだけ抽出すれば、実は京都でなくてもどこでもマネできるはずだからさ。

あやちゃん:確かに。この解決法は、どこでも真似できそう!

なんぼー:こういう考え方はどんどん真似していきたいよね。インスタ映えするような景色や資産は、真似することに限界はあるけど、工夫や知恵はいくらでも真似することが出来るからね。

あやちゃん:インスタ映えになる素材を元々持ってるだけで満足せず、知恵を絞ってさらにより良い写真が生まれる工夫をする、当日来た人の満足度をあげるためにもさらに知恵を絞る。インスタ映えな景色を用意するだけの “Instagramマーケティング” の一歩先を行ってるなあ。

なんぼー:なんぼー:僕にとっても、素晴らしいアイデアに出会った時は、そこにある工夫や知恵を真似するのが大事だなと感じた出来事でしたね。

あやちゃん:これまでいっぱい撮ったインスタ映えの場所にも知恵と工夫があったか振り返ってみよう……!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?