パリオリンピックはSDGsだったのか?
■ そんなわけねぇだろ
声を大にして言いたい。そんなわけねぇだろ。
環境に配慮するんなら選手団を船で移送しねーよ。歩かせろ。
……SDGsがそもそも色々と批判のある思想や政治的方針だという前提は脇に置いておいて。
そもそも、パリ五輪サイドが主張していたSDGsは達成されているのか?
ということが気になりました。
(それ以外にも運営に関してうんざりするほどの問題点が指摘されているが、それ(特に競技ルールなどについて)は無知なので割愛)
で、SDGsのことを調べてみた。どうやらSDGsには、達成すべき17の目標なるものがあるらしい。SDGsというお題目を唱えるのなら、たぶんこういうのを参考にしているんでしょう。
というわけでざっとこの17の目標を見て――私は失笑しました。
いったい17の目標のどれに則ったんだ?
ひとつひとつ見ていきましょう。
貧困を無くそう
オリンピックと関連性が低いお題目なのでそもそもアプローチが難しい。
しかし『オリンピック開始前に、オリンピック村などのパリ市内、セーヌ川近辺に住む路上生活者が強制退去させられた』という報道がありました。ネットで見聞きしたので本当か?と思い調べたら、ロイター通信やニューヨーク・タイムズといったデカい新聞社のネット上の記事が見つかった。一通り読んでみたところ、どうやらスラム街となっていたサンドニという地区を筆頭に、路上生活者をバスに乗せて別所に送るか、もしくは強制送還される目にあっているようです。
貧困はすぐに無くなるものではないですし、社会福祉にも限界はあるでしょう。しかし、SDGsの最初にあるお題目に適う動きをパリ市ができているようには全く見えません。飢餓をゼロに
オリンピック選手村の飯が不味い。
……というのは流石に飢餓とは関係ないですが、上記の路上生活者への対応を考えると、これがちゃんと達成されているかは疑問。いっそ選手村で出た余剰食料を貧困層に分配するシステムでも作ればよかったのではないか。いや、報道されてないだけで、あるのかもしれないけど。全ての人に健康と福祉を
皆さんもうご存知ですね。
トライアスロン選手などのセーヌ川で泳いだアスリートが感染症を患いました。また、報道関係者の間で食中毒が発生しました。
これについて、現状パリ委員会やIOCは謝罪をしていません。していたらご指摘ください。謝罪して訂正します。質の高い教育をみんなに
パリ五輪の審判は競輪の周回数すら数えられませんでした。
まあこれは流石に難癖ですね。でも退去させられた路上生活者の中には子供も多かったらしいです。彼らは果たして義務教育を受けられているのでしょうか。ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダー問題で世界的な議論を呼びました。最も注目されたのは女子ボクシングでしょうが、これについてはIOCがはっきりとした基準を設ければいいだけです。
……と思いきや、どうやらバッハ会長は『男性と女性を判断する科学的な方法はない』と言ってしまったらしい。ただ、この話の出どころがX(旧Twitter)の動画で、私はこれをyoutubeの動画で知ったので正確性は確認できてないです。どうにもこの話はメディアからのインタビューの回答として出されたもののようで、バッハ会長は『XXとXYで男女を明確に分けようとしているが、それは科学的に真実ではない』とも言った模様。これが本当なら、少なくともIOCは競技における男女の区分を、科学的な根拠を基にせず決めるということにしたということになります。
私は科学者じゃないので詳しいことは分かりませんが、確かに科学というものには限界があると思います。男女差や染色体、ホルモン分泌の異常によって、スポーツ競技にどの程度の有利不利が出るかというのは判断が難しい側面もあると思います。
が、科学的な判断を放棄するということは、判断基準は全て感情や感覚に立脚するということになってしまうのではないでしょうか。これではスポーツにおける公平性を著しく損ないかねません。
分からない部分が多いからこそ、うやむやにして基準を曖昧にすることは非常に危険です。この基準があやふやだと、男性的に見える非常に強い選手が女性枠に現れた時、いわれのない批判を受けることになります。
あと、この項目だけやたら長くなるのであんまり言及したくなかったのですが、そもそも開会式のLGBTQの扱いも個人的には良くなかったと思っています。前のnoteで触れた『セーヌ川に放り出されたモナ・リザに見る美形蔑視』もそうですが、LGBTQを妙に派手に、そして露出を強調して描くのは『新しいステレオタイプ』の醸成じゃないですか。あれ見て『性的マイノリティはむやみに派手で下品だ!』思われたらどうするんですか。差別だ!と言って騒ぐんですかね?イメージを毀損したのは誰だって話なんですが。
日本人に馴染み深いそっちの人々、たとえばおすぎさんとピーコさんは服飾と映画の評論をそれぞれ行う文化人ですし、マイノリティ+プラスサイズの権化みたいなマツコ・デラックスさんは毒舌だが的確な言葉が人気のタレント、IKKOさんは著名なメイクアップアーティストです。
性的マイノリティは個性のように扱われていますが、その個性がその人の全てではありません。言ってしまえば肌の色や出身地のようなものでしか無いと私は思います。そして、下品だと思われる格好や挙動をする自由はありますが、その全てを個性として社会が受け入れるわけでもありません。
何でもいいからその手の活動家はさっさと性的マイノリティへの偏見を広めるのを止めてほしい。私自身、子供の頃に自分のジェンダーについて悩んだことがありますが、変な偏見が広まると自分の個性について否定的になったり、過剰に肯定的になったりするもんなんですよ。マジ勘弁。
長くなりました。申し訳ない。次に行きましょう。安全な水とトイレを世界中に
言わずもがな。セーヌ川は非安全な水です。安全なら練習を取りやめになったりしないですよ。あとトイレも、四方面式全開放路上男性用小便器が話題になったりしてました。増やしゃいいってもんじゃねーのよ。エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
題目だけじゃちょっと分からなかったので内容を見てみたところ、どうやらこれは『安価で安定した現代的なエネルギーを平等に』と『エネルギーは再生可能なものを』というのがくっついたものらしい。
これはいくらなんでも関係ないやろ……と思っていたら、どうやらパリ五輪中に停電騒ぎが起きていた模様。エネルギー供給こわれる。
とはいえ、オリンピックによるエネルギー面へのアプローチなんてできないだろうと思われるので、これはあんまり考えなくてもいいかも。強いて言えば選手村のそこここに太陽光パネルでも取っ付けるとかか。働きがいも経済成長も
開会式に採用されたダンサーがストライキを計画。リハーサルをボイコットしました。また、オリンピック期間中の特別手当を巡るストライキも行われたようです。こちらは警察、鉄道、空港など間接的にオリンピックに関わる人達によるストライキだったそうで。
このストライキによって賃上げなどが行われたらしいので、これは一応対処がなされたようです。しかし一方で、ストライキ権を規制する法案もフランスでは通っています。産業と技術革新の基盤を作ろう
これもいちいちケチをつけるようなことは起こっていないように思えます。まあ重箱の隅をつつけば、選手村に採用された段ボールベッドは東京五輪からだし、消えないトーチは日本製だし、インフラは一時ストでめちゃくちゃになってましたが。まあ選手村とか作るのに少なくとも一部産業は活性化したんじゃないですか。知らんけど。人や国の不平等を無くそう
猛暑に見舞われた選手村は水冷システムでは暑さ対策が不十分となり、各国選手団が独自の対策を求められました。また、料理についても不満が出たため、これも独自の手配を行った国が続出。国によってはそもそも選手村に入らず、ホテルに滞在した選手団もあったようです。
当然ながらこのような対処は、各国の経済力に準拠するでしょう。本当に選手団全員が、最低限のラインで平等だったんですかね?フランスは自国選手団にはエアコンを導入したという話もありますが。住み続けられるまちづくりを
これもどういうものか分かりにくかったので詳しく見てみました。すると、まず真っ先に出てくるのが11-1の『住むのに十分で安全な家に、安い値段で住む』『都市の貧しい人びとが住む地域(スラム)の状況をよくする』が出てきます。
上記の通り、選手村を含めた施設が建築された地域の路上生活者は、強制的な立ち退きを施され、移送先で再び路上生活に入る人もいました。つくる責任、つかう責任
食料、産業、資源などの廃棄物を減らそうというのが大筋らしい。選手村の食糧事情が貧しいのはこれも大きな一因になっているのでしょう。その結果、特に食において不満が続出してしまいました。
どこも報道してないので気になってるんですが、パリオリンピック選手村の食料廃棄量ってどのぐらいになったんでしょうね。東京が2割という話は聞いたことありますが。ホテルに滞在を移した団体がいる分、廃棄も増えてそうなんですが。
ともあれ、考えそのものはまあ分からなくもないですよ。オリンピックを継続するため持続可能な形を作りたいという理屈は通る。ただし、この食料廃棄を無くすという観点は正直スポーツと相性が悪いと思うんですよね。そもそも、廃棄しなくてもスポーツ選手は体作りのため、体力維持のため人よりもよく食べるものです。スポーツを奨励するだけで食料の消費量が通常の生活より多くなるんじゃないですかね?
あと、この一環なのか、選手村の清掃が行き届いていないとか、タオルが1週間も洗われないままだという話が選手からでているようです。環境には配慮する、選手には配慮しない。世界的スポーツの祭典ですることか?身内でやる大会でだけやってくれというのが本音。気候変動に具体的な対策を
CO2の排泄や、あるいは気候変動による人体への悪影響への対策の項目。
選手村は熱波を防げましたか……?
あと、選手村で牛肉がでなかったのもCO2対策の一環だと言われていますが、不満を持った選手は独自に食料を調達しました。エアコンも結局各国がつけたし、そもそも冒頭で触れたように選手入場が大量の船によって行われたりと、真面目に考えてんのか?と言いたくなるような挙動ばかりです。単なる経費削減を疑う声が出るというのも致し方ない。海の豊かさを守ろう
サーフィンの会場となったタヒチ島のチョープーの海には、サンゴ礁が広がっています。当初、審判用のタワーの建設には「サンゴ礁に傷がつく」として反発があったようです。結局当初の規模から縮小されてタワーは建設されましたが、それでもサンゴ礁には穴が開けられた形になりました。陸の豊かさも守ろう
海以上に大雑把で分かりにくいですが、どうにも生態系の保全と回復、あと砂漠は食い止めようねとかそういう話だそうです。
選手村の食事は野菜が半分みたいな話がありましたが、その野菜の量産には結局農地を開拓しなければならないという課題があります。アマゾン流域での焼畑でジャングルが消えていっているのは有名な話。
まあ、肉だって飼料用の野菜がいるんですけどね。とはいえ『野菜はSDGs!』というシンプルな理屈は成り立たないでしょう。
いつか肉は培養に、野菜はタワーマンション内のプランテーション生産に、みたいな世の中が来るんでしょうかね。まあ、パリ五輪はちっとも関係ない方向性で対処してるように思えますが。平和と公正をすべての人に
数々の審判に対して誤審、意図的な贔屓の疑惑が噴出しました。公正とは?
あと、開会式の演出について批判が続出。いくつかのキリスト教系団体、そして何よりローマ法王すらもこれに懸念、遺憾を表明してしまいました。平和とは?
あと、この項目に『差別のない法律、政策をすすめる』というのがありますが、審判の判定が差別に基づいているだとか、台湾を応援するグッズが没収されただとかいう話が出ています。日本ではサッカー、柔道、競輪、ボルダリングなどの競技で差別や贔屓を指摘する声が出ていました。
個人的に一番ヤバいのが台湾のグッズ押収ですかね。IOC側の言い分を鑑みるに、台湾はチャイニーズ・タイペイとして出場しており、それ以外の国名で応援するのは政治的主張だと言いたいんでしょう。しかし、国家では無いものの『自治領』として参加した国はほかにもあります。サモアやヴァージン諸島などがそうですが、それらの地域はそれぞれ独自の地域の旗を使用しています。一方、台湾は独自の旗である台湾旗ではなくチャイニーズ・タイペイとしての旗を掲げる規約となっています。
しかし、取り上げられたのはこの台湾旗ですらない、台湾を応援するためだけのタオルやバナーでした。恐らく『台湾』と書かれていたことが規約に触れたのでしょうが、そんな規約がある事自体おかしいのでは?じゃあもうチャイニーズ・タイペイなんて枠をなくして中華人民共和国の枠に統合すればいいのでは?
ちなみにフランスは、つい最近あったサッカー大会コパ・アメリカに出場したアルゼンチン代表のある行為が『差別的だ』として、サッカー協会などが抗議をしています。この差別的だとされた行為が『フランス代表の選手はアフリカ人ばかり』というもの。これを差別的だとして、人種の揶揄がアウトなら、国家のアイデンティティの否定や強制的な編入、統合はもっとアウトなのでは?
ある国の紛争問題に首を突っ込むにしたって、もっと利口なやり方があるだろうに、台湾という地域に対する敬意がかけらも感じられない。パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsにも金がかかるので、金持ち国家は金だして途上国を支援してねを良いように言ったもの。本当にパリ五輪とは関係しないところ。こじつけるならオリンピックという国際的なイベントは、各国の協力(パートナーシップ)でできているので、各国がオリンピックを、オリンピック側が各国を尊重し平等に扱うような運営を心がけるべきでしょう。
途上国から参加した選手団の部屋に、エアコンはありましたか?
■ まとめ
この内容でSDGsに配慮しました、と本当にパリ委員は言えるのか?
こういう『環境への配慮』と『人への配慮』の両立が難しいのは重々承知ですが、人に一切配慮しなけりゃそりゃ環境への配慮なんていくらでもできますよ。
あと、上でちょっと触れましたが、そもそもスポーツ、そしてオリンピックとSDGsってめちゃくちゃ相性悪いと思いますよ。世界中から飛行機使って選手集めて、その選手が入る選手村をいちいち作って、大量に消費される食料を供給して、と。どこにもSDGsな要素が無いですからね。
まあ、できる範囲で準拠しますっていう程度ならSDGsそのものは悪くないと思いますが、それは運営の不手際の盾には残念ながらなりませんでしたね。
ここまで長々と書きましたが、今回一番の収穫はSDGsの具体的な中身を知ることができたことですね。心に刻まれました。きっと忘れることはないでしょう。盆休みが終わるまでは。
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