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想像力と23,780円

どうしてこんなことに?という場面に遭遇したとき、想像力が試されていると感じます。怒ったり、けなしたりする前に、ハハーンこういうことね。と分かれば、激しく動揺しなくて済むんだから。そうとはわかっていても、ちょっとキレそうになったことがありました。

とてもお気に入りの靴があります。4年くらい前にY’sで買った黒いオックスフォードシューズ。かっちりした服にも、ゆるゆるのワンピースにも合わせやすくて、オンオフ問わず毎日履いていた靴です。薄くやわらかな牛革が足によく馴染むところと、靴のフチ?のくるぶし下あたりが深めにえぐれているところが特に気に入っていました。ただでさえ毎日履いていて傷んでいたし、運悪く大雨に遭ったりしたもので、靴底に大穴があいてしまったんです。そこで靴の修理に出したわけです。店舗レベルだと、似た素材のソールがあるか、修理にいくらかかるかわからないから一週間ほど預からせてくれと言われ、確認した末、似た素材アリ修理可能。23,780円かかります。といことでした。高!!でもお気に入りだし、しょうがない…ということでお願いした日から2ヶ月。修理が終わったとの連絡を受け、お店までウキウキで行ったんです。また履けることがうれしくて仕方なかった。ところが「こちらです」と出てきた靴は、わたしの大好きなあの姿から遠く離れたものになっていました。えっどうしてこうなった?ソールを見ると、驚くほど分厚い皮がべったりと貼られています。がっしりと硬く光沢があることから、これはコードバンでしょうか?そこまでレザーにくわしくないのでわかりませんが、もともと貼られていた牛革とはまるで別ものの素材なのは、素人のわたしから見ても明らか。厚みも素材もまったく別物なので靴のシルエットが変わってしまっています。ソールを縫い付けるステッチも大きく荒いザクザクとしたもので、なんだか作業靴みたいになってしまいました。涙出てくるよ。

靴修理のプロ集団が何をどう考えこういう仕上がりになったのか、想像を超えた対応に少し動揺しました。この素材を選んだ理由とか、異なる素材を使うことをお客であるわたしに確認しようと思わなかったのとか、たくさん突っ込みどころがある。靴のプロが、どうしてこんな失敗をしたのでしょう?

職人さんは、靴底の穴が塞がればいいと考えて修理をしたのかもしれません。二度と穴があかないように、親切心で分厚い皮にしてくれたのかもね。でも、そうじゃないの。23,780円あれば、似たような新しい靴は普通に買えます。だけどそこまでしてまた履きたいと思うのには、必ず理由があるのです。わたしは、元どおりにしてまた靴を愛でたかった。だから修理に出したんです。伝わってなかったかぁ〜、伝わってると思ってたなぁ〜!もっとちゃんと言っときゃよかった。店員さんには言ったんだけどさ、伝言ゲームってむずかしいね!

相手の想像力不足に腹をたてることが多々あるけれど、あらゆるケースで同じように、向こう方も気持ちを害しているのでしょう。伝えるって本当に難しいし、人生を左右するくらい大切な営みですね。

想像力が及ばず、大きく動揺した場合の緊急処置が、目の前の相手を思いやり尊重することだということも改めて学びました。店員さんはちっとも悪くないから、サンドバッグになんてしないよ。

また明日。

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