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「嫌われ者のトン太くん」


ある所に、おもちゃ達だけが住んでいるブリッキア王国がありました。
その王国の中の、ぬいぐるみ達だけが住む小さな町、ミラールクレムに、子ぶたのトン太くんが住んでいました。
トン太くんは、町はずれの小高い丘の上にある、木で作られた小さな家に、一人きりで暮らしていました。
トン太くんはいつもボサボサ頭で、お気に入りの黄色いTシャツと、緑色のパンツを履いています。

トン太くんは、とてもわがままで乱暴でした。
自分の思い通りにいかないとすぐに物を壊すし、他のぬいぐるみ達にも、いつも暴力を振るっていました。

そんなトン太くんを町のみんなが嫌っていました。
ですがトン太くん自身は、なんとも思っていませんでした。

ある日のこと。トン太くんがいつものように町を歩いていると、脇道から突然出てきたネズミのチュータくんがぶつかってきました。
トン太くんにぶつかった小さいチュータくんは、レンガの道に尻もちをついてしまいました。
トン太くんは痛がって泣きじゃくるチュータくんのことを、「痛いな!何すんだよ!」と言って、思いっきり殴りました。
それを見ていた町のみんなは、「小さいネズミを殴るなんて、トン太はひどいやつだ!」と言って、泣きじゃくるチュータくんを連れて、その場を去って行きました。

この日を境に、乱暴なトン太くんは、さらに町の嫌われ者になり、誰からも声をかけられなくなりました。
彼が町を歩くだけで、みんなが静かに去っていきます。

ついに淋しくて耐えられなくなってしまったトン太くんは、「このままの僕を受け入れてくれる、好きになってくれる人が必ずどこかにいるはずだ!」と思い、旅に出ることにしました。


ミラールクレムを離れたトン太くんは、何日も歩き続け、ついに旅に出てから最初の町にたどり着きました。
早速その町のみんなに、自分のことを自慢げに話すトン太くん。
ですが、やはりみんなから嫌われてしまうのでした。
仕方なくまた旅を続けてみましたが、どこに行っても、誰に会っても、嫌われてしまいます。
「町を変え、人を変え、次は一体何を変えれば良いのだろう…」とトン太くんは悩み続けましたが、ある時、「そうだ!僕が変われば良いんだ!」とひらめきました。

それからトン太くんは、大変身を遂げました。
「まずは、服装からだ!」
トン太くんは、お気に入りだった黄色いTシャツと、緑色のパンツを脱ぎ捨てて、爽やかな水色のシャツと、きちんとした茶色のパンツに着替えました。
「次は、髪型!」
長い間ほったらかしにしていたボサボサの髪を、綺麗さっぱり整えました。

その上、爽やかな香りのする香水も付けてみましたし、乱暴だった言葉遣いもやめてみました。

ですが、何一つ変化は起こりません。
「こんなに変わったのに、誰からも好きになってもらえないなんて…」

あまりにも悲しくなり、歩き疲れて、心も体もヘトヘトになり、ついにずっと喋り続けていた声までも、枯れ果てて出なくなってしまいました。
疲れ果てたトン太くんは、ブリキのおもちゃ達の町、ポスタリカにたどり着くやいなや、その場に倒れこんでしまいました。
倒れてしまったトン太を心配して、駆け寄ってきてくれたブリキ達がいました。

ブリキ達が、「どうしたの?」と声をかけてくれてくれましたが、トン太くんの声は枯れていて、話したくても声を出すことが出来ません。
「やっと声をかけてもらったのに…」トン太くんは悲しくなりましたが、それでも、町のブリキ達は、何も言わないトン太くんを、優しく受け入れてくれたのでした。

その日からトン太くんは、声をかけてくれたブリキ達とともに、この町で暮らすようになりました。今までずっと一人だったトン太くんにも、この町で大切な仲間ができたのです。

「やっと僕を受け入れてくれる仲間に出会えたんだ!」

自分の居場所を見つけることが出来て、トン太くんは心から嬉しくなりました。仲間達のおかげで、今までずっと冷たかった心の奥が、どんどん温かくなっていくようでした。

「変えなければならなかったのは、自分の心だったんだ!」

大切なことに気づいたトン太くんは、なんだか胸がいっぱいになって、わんわん大声で泣いてしまいました。

はじめてこの町に辿り着いたあの日と同じように、みんなが駆け寄ってきてくれました。
ですが、今度は心配されているのではありません。

「声!声が出ているよ!」
「よかったね!よかったね!」

それからというもの、声が出るようになったトン太くんは、
毎日みんなにたくさんの「ありがとう」を伝え続けています。



おしまい。








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最後まで、貴重なお時間を割いて「嫌われ者のトン太くん」を読んでくださり、ありがとうございます。😊
この物語は、私のいつもお世話になっている大切な先生、middle-note先生のメルヒェン・テラピーで生まれた物語です。
メルヒェン・テラピーは、即興で物語を作る物語療法です。
今回で4作目となりましたが、いつも書きながら自然に涙が流れたり、癒されていく自分がいます。
この物語を読んで、何か感じたり、思ってくださる方がいらっしゃいましたら、幸いです。☺️

Nana

この度は最後まで記事を読んで下さりありがとうございます☺️💓 これからも素敵な日々があなた様に訪れますように^^ Have a wonderful day🙌💓✨✨