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現代の人材育成における課題とその解決のポイント
こんにちは。
codeFaberという会社でメンター・コーチをやりながらYouTuberをやっているナナシロです。チピチピチャパチャパ。
今回は、前回の記事で触れた「資質・能力の三本柱」をもとに、日本の企業の人材育成の課題とその解決方法についてお話ししようと思います。
前回解説した「主体性」「人間性」「専門性」といったワードが何の説明もなく出てきますので、まだ前の記事を読んでいない方は先に読んでください。
現代の人材育成における課題
これから話す内容は、特定の組織の話とかではなく日本社会全体の風潮の話になります。
ケーススタディーではなく、もうちょっと抽象度の高い内容なのでご了承ください。
経営者、管理職が抱えている悩み
「及第点はクリアしているけど、もっと主体的に動いてほしい」
「学歴も能力もあると思うけど、責任ある立場を任せるのは不安」
「ライフワークバランスばかり優先し、仕事が二の次になっている」
経営者や管理職の方に従業員や部下の話をうかがうと、こういう感想がよく出ます。
また、
「キャリアアップに貪欲ではあるものの、待遇や環境に不満が生じたらあっさり転職してしまうのではないか」
という恐れを抱いてる話もよく聞きますし、実際にそれが現実になって
「せっかく育てたのに……」
と唇を噛み締めている方もよく見かけます。
社内の立ち位置(勤続年数etc)ごとにフォーカスして、もう少しこういった従業員の課題の解像度を上げてみましょうか。
1.主体性の乏しい中堅社員が多い
人材育成上の課題は大きく二つに分けられるのですが、そのうちの一つが、
主体性の乏しい中堅社員が多いこと
です。
先ほど例として挙げた、
「学歴も能力もあると思うけど、責任ある立場を任せるのは不安」
というのは、まさに中堅社員に対して思うものなのではないでしょうか。
もう数年〜10年程度勤続しているわけだし、そろそろ会社の中枢を担わせていきたい。
ベンチャー企業だと1〜2年目の従業員に対してもそう感じることでしょう。
規律を守り協調して仕事をする人間性もあり、若手の手本になる程度の専門性もあるのに、なぜか自分事として考えて行動する主体性だけが無い。
これまで上手くできていたのに、マネージャーポジションに抜擢した瞬間に悩み始めてパフォーマンスが落ちる。
そういう中堅社員、いませんか?
2.人間性の乏しい若手社員が多い
そしてもう一つが、
人間性の乏しい若手社員が多いこと
です。
これは「資質・能力の三本柱」における人間性のことなので、性格が悪いとかそういう話ではありません。
ざっくり言うと、
挨拶や返事に覇気がない
時間に対してルーズ
話をしてもメモ一つ取ろうとしない
会社の飲み会に「残業代出ますか?」と聞く
仕事を抱えて人に相談しない
権利ばかり主張して義務を果たさない
といった、数十年前だったら「常識だろ?」と言われるようなことが出来ていない状態です。
きっと、
「いつまで学生気分なんだ」
と思っていることでしょう。
ひどい場合だと、退職代行を利用して突然辞めたりバックレたり……ということもあるでしょう。
せっかくの採用・育成計画が水の泡になったショックは心中お察しします。
さらに言うと、コミュニケーションも取れずに辞められたばかりに、採用・育成計画の改善方針すら見繕えず、お手上げ状態になっている企業もあるかもしれません。
最後の例ほどひどくはないにしても、最近こういう若手社員が多いという現状については頷く方も多いのではないでしょうか。
今の日本人は「専門性偏重」状態
資質・能力の三本柱のうちの主体性と人間性が欠けている人材が多い一方で、専門性が欠けている人はとても珍しいです。
というのも、日本社会では学歴が一定の評価対象になるため、仕事内容を覚えたりマニュアルを理解したりといったことは出来る人が多いんですね。
そして昨今は「キャリア」ブームということもあり、休みの日も惜しんで資格の勉強をしたり、スクールに通ったりしている人は以前と比べると段違いで多くなっています。
そういう風潮になった背景には、スキルさえあれば独立して最低限の稼ぎを作れる時代になったことや、それに伴って個人のキャリアが重視されるようになったことなどがあります。
(この辺の社会の構造についてはまた別途記事にしようと思います。)
なので、主体性や人間性を磨くことなく専門性ばかりを身につけている「専門性偏重」の人材が多くなっているのが、現在の日本の人材育成の問題なんですね。
課題解決のポイント
それでは、この主体性・人間性が乏しい人材を会社の戦力として育てるために何をしたら良いのか、課題解決のポイントを紹介します。
①背景への理解を深める
「若手社員は理解できないし、中堅社員は情けない」
そう言ってしまったら、もうそこでおしまいです。
大切なことは、投げ出さずに彼らのような人材が増えた背景を理解すること。
まず彼らが生まれた年代が、バブルが弾けた後であることは大きいです。
要するに、日本が調子いいときのことを全然知らないんですね。
それゆえに、組織に対する不信感が強いです。
「ちょっとでも会社に不安を感じたら、自分だけでも逃げて生き延びよう」
というのが根底にあるから、みな自身のキャリアやスキルアップに熱を上げているんです。
さらに、そこに海外から輸入した個人主義的なキャリア観、情報革命の成熟期(2010年代)におけるコミュニケーションの変化なども、現代を生きる我々の価値観醸成に関係してきます。
……と、すべてを説明すると長くなるので割愛しますが、ざっくりと総括すると、
生まれが数年ずれるだけで、仕事観、お金観、対人関係観が別の惑星の人くらい違う
= かつての当たり前がほとんど通じない
ということ。
こういった背景に目を向けることで、
「最近は使えない人間が多い」
という安易な結論から離れることができ、
「じゃあ、別の惑星の人くらい違う従業員たちをどう育てていこうか」
と、人材育成の課題に前向きに取り組めるようになります。
②信頼関係を作る
背景について理解が深まると、全体に向けて啓蒙活動をしてもなかなか上手くいかないことが想像できるかと思います。
いきなり青写真を見せて「ここを目指して頑張ろう!」と言ったところで、すごく冷めた目をされてしまうんですね。
なので、まずは従業員一人一人と会社が信頼関係を作る必要があります。
休憩中の雑談や飲みニケーションが難しいのであれば、1on1などをやるのもいいでしょう。
社長や役員の方が出張る必要はありません。
まずは現場の上長と部下が信頼関係を作るべきです。
そのとき重要になるのが「傾聴」です。
上長は必ず聞き手に回り、話を促す役割に徹すること。
説教をしたりアドバイスをしたりはもちろんのこと、せっついたり圧力をかけたりするのもご法度です。
(この辺の信頼関係を深める1on1のやり方についてはいろいろとテクニックがありますが、また別途記事にしようと思います。)
③組織の文脈や背景を共有する
信頼関係が築けてくると、部下に
挨拶や返事が明るくなる
報連相が活発になる
萎縮せずに意見を言う
パフォーマンスが上がる
談笑中などに素が見える
といった変化が見られるようになると思います。
(人によってペースが違うのでくれぐれも焦らないこと。)
この時点で、すでに人間性が育まれてきたのを感じられると思います。
ここまで来たら次のフェーズ、文脈や背景の共有です。
「会社はどこへ向かっているのか」
「会社が君に何を期待しているのか」
「そのために君は何をすべきなのか」
「今何が出来ていて、何が出来ていないのか」
といった話を、部下の目線に合わせて話していきます。
このとき大切になるのは、
上長自身がこの組織に存在する意義を感じていること
です。
上長が目の前の仕事に振り回され、仕方なく働いている状態では、
「忙しくしてると金が降ってくるだけの価値のない会社なんだな」
と部下は理解します。
なので、上長自身が
「業務命令だからやっている」
という受け身の姿勢なのであれば、そのさらに上の立場の人と①②をやる必要があります。
ちなみに、1on1やメンター制度を導入しても効果を感じられないのは、上長やメンター側の仕事や会社組織への解像度が低いからという可能性が高いです。
ベンチャーや中小企業では、経営者本人の解像度が低い or 仕事に追われて企業理念が浸透していない場合もあります。
その場合は、人材育成より前の部分の見直しが必要かもしれません。
④目標管理や評価をおこなう
まず背景を理解して受け入れ、傾聴して信頼関係を築き、業務の文脈や組織の背景を共有できたら、ようやく一般的にマネジメントと言われる領域に入ってきます。
人材育成に取り組むとき、すぐにこのフェーズに飛びついて失敗するパターンがよくあります。
不信感のある会社の信頼できない上長から、
「これは仕事だから」
と一方的に言われて目標設定を促されたとき、人は、
(1)仕方なく我慢する or 適当に受け入れる
(2)反発して離脱する
のどちらかに分岐します。
1が多くなった結果が、主体性の低い人材だらけになってしまう理由です。
なので④に関しては、人間性と主体性が専門性に見合うほど育まれたタイミングで本腰を入れてやるべきです。
もっとも大切なのは「理解」と「信頼」
さて、ここまで人材育成の課題解決のポイントについて話してきましたが、もっとも大切なのは
①背景への理解を深める
②信頼関係を作る
の二つです。
せっかく雇った従業員がすぐ辞める
部下が何を考えているか分からない
社員の出来が悪すぎてイライラする
といった問題を感じている方は、とにかく時間をかけて①と②をやっていってほしいです。
信頼関係の形成は、テクニックや仕組みで効率化できないものです。
ワークショップや研修をやっただけで効果が出るのは、すでに高い水準で資質・能力の三本柱を育めている人が多い組織だけ。
組織の最小単位は二人です。
まずは二人から関係構築をしていきましょう。
初対面の人が知り合いになり、友人になり、恋人になり、家族になっていくように、じっくりと丁寧に向き合っていきましょう。
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