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【マッチレビュー】期待の低いシーズン,最高の滑り出し vs シティ戦 2021/08/15

個人的な試合の雑感を時々まとめて,後々振り返るときに役立ったらな〜という趣旨で始めていきます.


試合スタッツ

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ポゼッションやシュート数などは上の図の通り(whoscored.comより)

whoscored.comのレートは何となく7.0以上あれば上々という印象.スタメン組はソンロリスルーカスが突出しているが他も7.0前後と全体としてハイパフォーマンス.総力で掴み取った勝利ということがこうしたレーティングにも現れていて嬉しい.

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ちなみに,SofaScoreのレーティング.

デレのレートの低さが目立つ気がするが,whoscored.comとおおよそ同じような評価だろうか.

デレに関しては後ほど触れるが,スタッツに残らない活躍が大きかった印象で,試合を見ていたサポーターからの評価はこれより高そうだ.


タンガンガの躍動

最も印象的なパフォーマンスをし.ファン投票のMoMにも選ばれた.

なんといっても,スターリンググリーリッシュというプレミア屈指のドリブラーの突破を何度も阻んだ,その対人戦の強さ,あっぱれ.

一部ファウルを与えすぎという指摘もあったが,そもそもグリーリッシュはここ2年で最もファウルをもらってる,ファウル貰い職人.

というか貰いすぎでは?というくらいもらってる.

なので,グリーリッシュの場合は,ファウルをいくつ与えたかよりも,どこで与えたかに注目した方が良いかもしれない.結論,この試合でタンガンガはゴールに近い位置でのファウルは与えていなかったはずで,グリーリッシュに運ばれる前に潰すというのが仕事だとしたら,十分完遂したと言えるのではないか.

上は,現在および以前の最も高価な移籍金の英国人選手をスパーズアカデミーの選手が止めたという何とも誇らしいツイート.


犬と猫に分かれたBack 4

これまで,CBの質がスパーズの課題であったが,この試合のサンチェスダイアーの2人は,補強が必要ということを感じさせない集中力の高いプレーでシティの攻撃をシャットアウトした.

この試合のDefenceおよびDuelスタッツを見ると,先日Kevinさんが公開した,犬型CB,猫型CBの話がピッタリ当てはまっている事がよく分かる.

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サンチェスは“犬型CB”として,アグレッシブにチャレンジしている様子が,タックル数デュエル数から読み取れる.そしてダイアーはそれらのスタッツはほとんどないが,2回のインターセプトなど,冷静に相手を待った確実なプレーをする“猫型CB”らしいプレーをしていたのではないか.

そして,もう一つ気づいた点としては,右SBのタンガンガもCBではないが犬型らしいスタッツ.そして,左SBのレギロンはタックル数=0,地上デュエル=1であるが,インターセプト=4とこちらは猫型らしいスタッツとなっている.SBを含めて議論することが正しいかはわからないが,この試合ではタンガンガ&サンチェスの右サイドが犬型に振る舞い,ダイアー&レギロンの左サイドが猫型に振る舞うなど,4バック全体として明確な役割分担があったようにも感じる.

そして,その役割は,さらに前のデレアリホイヴィアといった中盤のプレーヤーの“動きの違い”,“長所の違い”と結びつけてアレンジしていたのかもしれない,という想像も膨らむ.

Kevinさんの素晴らしいnoteはこちらから↑


スキップ加入の効果

試合翌日の早朝,私のもとに現在研修医をしている友人から一通のLINEのメッセージが届いた.

「スキップって何者」

彼はシティズンでもなく,マドリディスタだが,この試合を試聴してスパーズの中盤の若き番人に驚かされたらしい.また彼はこういった感想もくれた.

「結構そつなくこなしていたな」

彼の言葉は非常に客観的で素っ気ないものだったが,この一言で,かつてポチェッティーノがスキップに対して言った「まるで30歳のプレーを見ているかのような落ち着き」という言葉を思い出した.ローン先のノリッジで成長し,ローンバック後にはすぐにトップチームのスタメンに溶け込んだ.何とも末恐ろしい選手だと改めて感じた.

また,スキップが中盤の低い位置にいることで,ホイヴィアがより前に出てプレーする機会が増えたように感じる.

アニメーションで分かりやすく解説してくれた上記のツイートでは,ホイヴィアのボール奪取が効果的にカウンターにつながっていた事が視覚化されている.

サウサンプトン時代は敵陣でのインターセプト数など,前線でのプレーにも定評があったホイヴィア.昨季は低い位置での統率で十分活躍してくれたが,スキップが馴染んだことで,ホイヴィアに元来備わっている攻撃的な性能を,今後はもっと多く見られるようになるのではないか.

スキップ加入の効果はホイヴィアの良さをさらに引き出すことに繋がっている,と感じる.


縁の下の力持ちデレアリ

派手なスプリントは多く見せないが,この男は常に走り続けていた.

この試合で最も長い距離を走行し,平均速度もトップだった.

守備時は中盤の一角として適確な動きで相手のビルドアップを妨げ,カウンター時は最前線まで走り,フィニッシャーにもなろうとする,ボールを持ってないところでのプレーが光っていた.

元々,ポチェッティーノ時代のトップ下では,アンカー封じなど上手かった選手.さらにエリクセンと並んで走行距離も毎試合長かったと記憶している.

派手な足元のスキルやゴールに絡むプレーが目を引く選手だが,動きの上手さ非凡なスタミナも彼の長所だと感じている.

戦術的なことは確かではないが,シティがビルドアップで左サイド(スパーズの右サイド)の割合が高くなったのは,デレアリの動きの上手さも一因しているのではないか?

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そしてホイヴィア,タンガンガ,サンチェスの対人戦の強い選手らで封じ,カウンターに繋げる.

4バックの話の最後にも触れたが,デレアリの動きの上手さ・走力は最終ラインがそれぞれ犬型・猫型らしい振る舞いになったことに大きく関係していると感じる.

もしかしたらヌーノは最初から相手を右サイドに誘導し,奪ってカウンターという戦い方をデザインしていたのではないか,そうした戦術にデレアリは重要なピースだったのではないか,と想像も膨らむ.ボランチでよく試合に出ていたロチェルソがそのままFWの位置に入り,デレアリはそのまま中盤でプレーを続けたことも,彼の役割の重要性を物語っているように感じる.


アタッカーに求めるもの

「夏ルーカス」という言葉がある(無い).

5月〜8月くらいの彼はすこぶる良いプレーをする印象を勝手に持っている.この試合でもやはり彼は輝いていた.

得点シーンも鮮やかなバイシクル気味のフリックが起点となっており,あのようなスキルや,スルスルと抜けていく小気味良いドリブルを1年を通して見てみたいと思う.

ソニーはエースとして文句ない仕事をした.左ウイングが主戦場の選手が,右サイドから左足であんなカットインシュートを打てるのだから,戸田さんが「真のワールドクラス」と呼ぶのも納得である.

ただし,やはりソニーはトップの位置ではなく,この試合でいえばルーカスやベルフワインの位置で使えた方が,もっと輝けるように思えてしまうのは,先ほどお見せしたデュエルスタッツが原因かもしれない.

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試合を見ていた印象通り,ソニーは両チーム最多の9回の空中戦を行っていた(余談だがルーカスの空中戦勝利数,勝率は目を見張る).この背景には,最終ラインから難しく繋ごうとするのではなく,前線にロングボールを蹴り,そのこぼれ球を距離感の近い3人で拾おうとする作戦があったのかもしれない.下に示すように,この試合ではロリスが21本サンチェス&ダイアーがそれぞれ9本のロングボールを放っている.ロリスはほとんどロングボールを蹴っていたことも,全体のパス数と比べると見てとれる.

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シティ戦専用の作戦だったのかもしれないが,恐らく他のビッグ6などと当たるときにも,同じような戦い方をするのではないかと思う.

そうした中で,ソニーにかかった9回の空中戦の負担を,より空中戦に強い選手が担えたらと考えるのは,当たり前の発想かもしれない.

よって,仮にケインが移籍してしまい,別のCFを準備する必要がある場合には,1つ空中戦の勝利数,勝率といった観点に注目するのもいいかもしれない.

個人的な印象であるが,空中戦に強いや対人戦に強い,といった特徴は試合をずっと見ていても正確にはわからないと思う.そもそもケインが空中戦に強いのかどうか,私ははっきり答える事ができない.

だからこそ,1つそうしたスタッツに目を向けてみる事は,新たな獲得選手と考える上で大事なことだと考えている.


恐らく過小評価されている今シーズン

スパーズサポは期待が大きい開幕だったと思うが,実際のところ他サポやサッカー通のような立場の人にとっては,今年のスパーズを強いと思ってる人はほとんどいないように感じる.それはメディアや通の順位予想であったり,開幕予想などを見て感じていたことである.

なぜ今年のスパーズは期待されないのか?

とりあえずそういうものと仮定して,なぜそう思われるかについて考えてみた.

① 監督人事に失敗しまくったと解釈されているから

知っての通りモウリーニョを解任してから,ヌーノに決まるまで相当な時間を要した.その間,様々な監督の噂が飛び交い,断られたり,折り合いつかなかったりなんだり(と報道され),最終的にヌーノに落ち着いた.選択肢がどんどん削られ,望まずヌーノになってしまった.恐らく少しサッカーに詳しい人(スパーズに関心が高く無い人)はそう感じている気がする.

果たして,ヌーノを選んだことは監督人事として失敗だったのか? 上に述べたようにヌーノで妥協したみたいなことが真実であれば,失敗としてもいいのかもしれない.

しかし,メディアが報じているのは氷山の一角に過ぎず,その裏でどういうことが起こっているのか,私たちはほとんどを知ることができない.だからこそ,ヌーノを選んだ過程を失敗だったと決めつけることはできない.

スパサポ以外に話題にされている印象があまりないが,ファビオ・パラティチを招聘できた段階で,この監督人事はむしろ8割型成功だったのでは無いかとさえ思っている.どの段階でSDを招聘することを決めたのかにもよるが,パラティチのような実績のある人物を呼ぶことができたのは,SD人事としてまず成功と言えるだろう.

そしてレヴィは新監督を選ぶにあたり,そのパラティチを中心に添えていた.レヴィやヒッチェンが選ぶのではなく,招聘したばかりのパラティチである.この背景には,新SDであるパラティチと強く連携してチーム作りを行えるような監督を求めていたものと思われる.ポチェッティーノモウリーニョのような監督として強い立場(移籍市場における権限など)を求めるタイプではなく,より協調性のある監督が理想だったのかもしれない.

そうした観点で見てみると,前任のモウリーニョに比べてヌーノ政権になってからは,パラティチ色前回の補強の噂が沢山出ている.モウリーニョの時は「モウリーニョが彼を強く求めている」など彼が欲しいとされる選手の噂が多くあった.

移籍市場における強い立場は求めず,パラティチと良い関係を築き,現有戦力のチーム作りに集中する.以前,スパーズ上層部がヌーノがチームに与える「calming effect(心を落ち着かせる効果・穏やかな効果)」に感心している.といった報道もあり,

レヴィが「新SDを任命すると決めたときに理想とした環境」になっているのではないかと感じる.


さらに言えば,ここ3シーズンのプレミアリーグを戦い抜いた監督であるのも大きいかもしれない.今シーズンのプレミアリーグの特に上位陣は監督の変更がスパーズを除いてなかった.とりわけシティ,リヴァプールは長くその政権が続いている.こうした上位陣と戦う際に,相手監督との対戦経験を多く持っていることは大きなアドバンテージかもしれない.

報道によっては振られ続けた監督人事にも見えるかもしれないが,時間がかかった分だけ理想的な監督を選ぶ事ができたのではないか,と私は感じている.


② ケインの報道

今季のスパーズが期待されない理由について,2つ目はこちらの話題があると感じている.

ケインという大エースがいなければスパーズに戦力は大きく落ちるだろう.とりわけ,得点王,アシスト王のW受賞という偉業を成し遂げた直後だけに,そのロスの影響が大きくマイナスに働いて,単純な戦力的な意味で弱くなるだろうと感じられているのかもしれない.

さらには,「シティに移籍したがっている」「タイトルがとれるクラブに移籍したがっている」という報道も,「マンチェスターシティ>>>>>>>スパーズ」という関係性を強く植え付けることにつながっていると感じる.事実として,シティの強さは否定できないが,必要以上にスパーズが弱く見られることになってしまっているのではないか?と分析する.


③ 補強した選手たち

これまで,ゴッリーニ,ブライアンヒル,ロメロの3人を獲得したが,プレミア以外のクラブからということで,「よく知らない選手が来ている」みたいな印象もあるのだと思う.特にロメロは高い移籍金もかかっているが,お隣が補強したベンホワイトや,ユナイテッドが補強したヴァランに比べると,よく知られていないのかもしれない.

スパサポ的には補強もある程度順調に進んでいるように感じるが,プレミア通やプレミアの他サポがよく知っている選手がいないために,パラティチが来たとはいえ印象深い補強がないと感じられるのかもしれない


ここまで,周りから期待されない理由の考察という正直どうでもいいことについて語ってきたが,こうした背景を考えてみると,他サポや通が驚くような結果を期待したくなってしまうものである.

まだ1試合だけであるが,シティ戦の勝利はその意味もあってとても心地よいものであった.


終わりに

ダラダラとシティ戦のことから,プレシーズンの感想などを語ってしまったが,その時のツイートやデータを振り返るのは割と大変なので,1本の記事にまとめることは後々役に立つと思う.毎試合これができれば理想だが,気が向いたときにまた続けていきたいと考えている.

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