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終わらせない番組作りって難しい【キョコロヒー】

※偉そうに番組の分析をしたいわけじゃないですが、結果的に偉そうだなと思わせてしまったらすみません。ただの一ファンのリスペクト感想文だと思って読んでいただけると嬉しいです。


はじめに

『キョコロヒー』おもしろいですよね。この記事を見ている方なら詳しい説明はいらないと思います。とは言いつつ、簡単に説明すると、『キョコロヒー』は日向坂46の齊藤京子さんとお笑い芸人のヒコロヒーさんの2人がMCを務めるトーク番組です(この番組を見ているとMCとは?となります笑)。京子の”キョコ”とヒコロヒーの”コロヒー”で「キョコロヒー」というわけです。なんとシンプルなタイトル!(余談ですがタイトルの要素のほとんどが演者の名前で構成される番組は大抵おもしろいという持論があります。)

そんなキョコロヒーですが、視聴者の方はこんなことを思っているのではないでしょうか?「最近この番組雰囲気変わった?」と。私は番組が0時台に昇格してからガラッと毛色が変わったと思っています。具体的に言うと、2人のちぐはぐなトーク中心のスタイルから、魅力のトークは生かしつつ、別角度からのアプローチを試しているのではないかと。そんな仮説を立てました。ただ、スタイルが変わったとしても番組自体のクオリティは高く、とても楽しく観られていましたが、どうしても番組を観ていると番組の雰囲気が変わった理由が知りたくなり、もやもやしながら番組を観ていました。自分の中の仮説が確定しないことに対する憂鬱な気持ちがあったんです。

しかし、あることをきっかけに自分の中の仮説が確信に変わり、純粋に番組を楽しめるようになったんです。それが、先日行われた初の番組イベント、「生キョコロヒー」です。このイベントを観て、普段の番組作りでどんなことを意識しているのかが分かった気がしたんですよね。気がしただけかもしれないですが。
その内容を以下で長ったらしく書いていくので、読んでいただけたら幸いです。



それぞれの要素が減少した理由を考える

そもそも初期のキョコロヒーと最近のキョコロヒーで何が変わったのか、自分の中で2つ挙げてみます。

① ダンス企画がなくなった
② 2人のトークが減った

それぞれの2つについて以下で考えていきます。

① ダンス企画

今書いていてすごい違和感だったんですが、ダンス番組だったんですよね、この番組。この前テレビを何気なくみていたら、番組によく出演していたsuzuyakaさんがハロプロの子とダンス番組やってました。ちゃんとすごい人でびっくりしました(失礼)。
0時台に昇格して以降、ダンスコーナーはめちゃイケにおける三中さんくらい分かりやすくいなくなったんですよね。私としては「なくなったんだ」くらいでそれほど驚きはありませんでしたし、むしろダンスがない方が企画の幅が広がるのではないかと思い、ダンスを制約ぐらいに考えていました。制約があったからこそ生まれた名企画もあったんですけどね。
そもそも番組の演出家の舟橋さんはインタビューで

「バラバラ大作戦」の枠でダンス番組を1つやりたいとの募集があって、若手でもないので、遠慮しようかなと思ったんですけど、「ちょっと強引だけどこの枠でヒコロヒーさんの番組をつくるぞ」と (笑)。

WEBザテレビジョン:サトミツ×舟橋政宏が明かす「キョコロヒー」舞台裏…齊藤京子&ヒコロヒーの魅力とは【連載:佐藤満春って何者?】

と語っていて、そもそもダンス番組にこだわりがあるわけではないようです。制約とまでは思っていなくても、ダンス企画がなくなったことに対してそこまで引っかかっている人は少ないのではないでしょうか。多くの方が気にしているのは次の項目のはず。


② 2人のトーク

私個人的には2人がはちゃめちゃでかみ合わないトーク(というより冷戦&熱戦)を繰り広げているのが好きだったので、VTRも独特でめちゃくちゃおもしろいのは大前提としてやはり少し寂しさを感じます。この文章を書くにあたって、初期の企画を振り返ってみました。

  1. 2人の共通点を探そう

  2. 好きなものを教え合う

  3. 恋愛トーク

  4. 互いに友達を紹介しよう

  5. 2人の絆を深めよう

見てください。今にも恋愛リアリティーショーが始まりそうな企画ばかりです。今にもYOUさんがVTRの恋愛模様を見て吠えている画が浮かんできます。実際は真逆の内容だったんですが、、、。

ではなぜこのようなトーク企画が減っていったのでしょうか。2人がある程度お互いを知り、「互いを知ろう」というテイストの企画がしづらくなったのはあると思いますが、そうでなくても別の話題でトークなどはできるはずです。そこで私が出した結論は、番組のベクトルが内に向きすぎてしまうから です。つまり、ファン向けになりすぎてしまい、一般層に刺さるとっかかりの部分が極端に減ってしまう、ということです。

番組開始当初の視聴者層はおそらく、齊藤京子さんのファンorヒコロヒーさんのファンorコアなお笑いジャンキー(テレビジャンキー)の3つで構成されていたでしょう。すごく良くない言い方になりますが、深夜2時台ともなれば日向坂46のファンにさえ観てもらい、ある程度のクオリティーを保っていれば、継続もしくは昇格は安泰なんですよね(『キョコロヒー』は「ある程度」にとどまらず、かなり高いクオリティーをたたき出していたと思いますが)。
しかし、0時台はおそらく違うのでしょう。私はテレビ業界に携わったこともないただの一般人ですが、スタッフさんは業界のプロです。おそらくバラバラ時代の番組構成では打ち切りの危険性があると判断したのでしょう。徐々に今の構成にシフトしていったのではなく、0時台に昇格した時点ですでに今の形に近い構成だったので最初から決めていたのだろうと感じます。

以上から、『キョコロヒー』は番組を継続または昇格させるため、番組ファンが楽しめつつ、視聴者層を拡大していくための多大な努力と計算がされている番組だと感じるんです。
「そんなのほとんどの番組がそうだろ!」と言われてしまうと確かにそうなんですが、この番組は特にそう感じるんです。

以下では『キョコロヒー』と同チームが制作していた過去番組『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!(以下『シンパイ賞』)』の歴史を振り返りながら、『キョコロヒー』のチームがどのような意識で番組を作っているのか探っていきたいと思います。



『シンパイ賞』から番組作りにおける意識を考える

テレビ朝日 爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞‼

シンパイ賞の歴史

この番組は『キョコロヒー』と同チームが担当するバラエティ番組で、コピーとして”爆笑問題と霜降り明星を中心に、ベテランから若手まで入り混じった芸人たちが「シンパイを笑い飛ばそう。」を基本テーマにテレビの中で大奮闘する世代間ギャップお笑いバラエティ!”(テレビ朝日ホームページより引用)を掲げており、「芸人シンパイニュース」などの名物コーナーを中心にお笑い好きに愛されていた超お笑い特化番組でした。残念ながら打ち切りになってしまいましたが、放送を終えた今でも復活を熱望される人気番組で、その復活を望む声の多さからか、2022年1月に『芸人シンパイニュース』とタイトルを変え復活特番が放送されるほどです。ちなみにヒコロヒーさんもかなり早い段階で「自分はまだマシ! 安心クリニック」という企画に出演し、太田さんとのやり取りでバンバン笑いをとっていました。
これまた余談ですが自分もこの番組の大ファンで、復活のニュースを知った時は家でひとりガッツポーズしてました。これだけ「帰ってきた」という言葉がしっくりくるのはヒトラー、ウルトラマン、シンパイ賞くらいです。

番組全盛期にメインで行っていた企画は「芸人シンパイニュース」。この企画はお笑い芸人のシンパイな話題をテレビ朝日の野村アナウンサーが本物の報道さながらに読み上げ、面白エピソードを紹介していくコーナーでした。
内容の通り、お笑い芸人のパーソナルな話題を取り扱うコーナーだったため、「芸人好き以外の一般層に受けるか」と問われると素直に頷けない内容だったんですよね。バラエティ番組なのだからお笑い好きにウケればいいじゃないか、という話になりますが、確かにそう思います。しかし、番組が終わってしまった結果から考えると、

・テレビが下降気味の今の時代、一部のお笑い好きに刺さるだけでは生き残れない可能性
・そもそもお笑い好きのなかの芸人好きというさらに狭いコミュニティに限定しすぎてしまっていた可能性

その他にも様々な要因が考えられますが、想定より視聴者が獲得できなかったことは確かです。

そこで、視聴者の目にも明らかなほどのテコ入れがされます。その企画が「シンパイな〇〇図鑑」。ものすごく簡単に言うと、芸人さんが設定されたシチュエーションに合わせたネタを披露するコーナーです。リアルタイムで観ていた自分の感想としても、ネットの実況ツイート等で見られた他人の感想としても、「これじゃない」でした。もちろん芸人さんが考えたネタなので内容はしっかりおもしろいのだけれど、この番組で観たいものではありませんでした。
これは予想でしかないのですが、おそらくそれまでの放送の視聴率等諸々の数字が振るわず、自主的にテコ入れを決定したか、上層部にテコ入れを指示され考えた企画だったのでしょう。確かにネタを見せる企画にすれば、芸人さんのニッチなエピソードを紹介するより見やすさは上がる気はします。
しかし、結果的にテコ入れは失敗し、番組を盛り返すことができずにそのまま放送終了してしまいました。この「シンパイな〇〇図鑑」が苦肉の策であり、スタッフとしても不本意だったのでしょう。おそらく番組の終了が決まってから収録したであろうラスト6回の放送は、シンパイな〇〇図鑑ではなく芸人シンパイニュースやその他芸人を深堀る企画が行われました。

番組ファンにウケていた企画では数字が取れず、視聴者を増やすための改革をしたがそれも失敗に終わり番組が終了したということです。


シンパイ賞のシフトの仕方とキョコロヒーのシフトの仕方を比較する

話を『キョコロヒー』に戻します。ここまで読んでくださった方はこう思ってるかもしれません。「いやキョコロヒーも同じ道辿ってねーか!?」と。
確かに内向き⇒外向きシフトというざっくりとした見方をすれば同じかもしれません。が、『シンパイ賞』が昇格→数字下降→企画シフトであったのに対し、『キョコロヒー』は昇格→企画シフトなんですよね。
この2つの何が違うかを考えると、前者より後者の方が企画の方向性を決めるための時間と労力をかけられることに加え、同じシフトでも「こっちで行くぞ」という覚悟を感じたんですよね。それに伴って視聴者側もある程度「こっちでいくのね、了解。」といった感じで受け入れ態勢ができる気がするんです。

ファンに楽しまれている昔ながらのトーク企画も大切にしつつ、視聴者層を拡張するための企画を明らかに意図的に作っているのを感じました。

以下では、その拡張企画を中心に番組の構成等について思うことを述べていきたいと思います。



番組から感じる拡張意識

バランス感抜群の番組構成

『キョコロヒー』(昇格以降)には3種類の企画があると認識しています。

⑴キョコロヒーを普段観ている人の方がより楽しみやすい、内向きな企画
⑵2人がプレイヤーとなって様々なことを実践する、ファンも一般層も楽しみやすい企画
⑶普遍性のある話題もしくはターゲット層を絞って作られたVTRを提供する外向きな企画

基本的に内向きなものはトーク、外向きなものはVTR、両方に向けたものはスタジオで実践という傾向があるように感じます。この文章を書いている時点で直近の4回の放送を見てみましょう。

①5/12 ②5/19 ③6/9 ④6/16 放送回
(6/2は生キョコ裏側レポート回でイレギュラーだったため除外)

基本的には約30分の放送尺でコーナー3,4個が相場みたいです。
①の構成は⑴、⑵、⑴です。イベントのグッズ紹介があったからか、この回は内向きの企画多めでした。唯一のVTRもヒコロヒーさんの美容仕事をいじり倒すといったような内容で、とても楽しい放送でした。
②の構成は⑶、⑵、⑴ですね。VTRが⑶、スタジオでのプレイングが⑵、番組イベントのグッズをスタジオでいじるという内向きな企画が⑴という、前述したパターンとほぼそのままのかなりオーソドックスな回です。
③の構成は⑴、⑶、⑵、⑶です。比較的外向きな企画が多かったイメージです。ダンス解説は取り上げたグループのファンも視聴するので間口を広げることができますし、何よりこの企画一本である程度の数字は確保できるのでその他で遊ぶことができます。この回はTverのランキングがほかの回と比べても好調でした。キョコロクイズッスはクイズと銘打っていますが実際はVTRを見る企画ですので⑶としました。
④の構成は⑶、⑵、⑴です。いつも通りVTRでグルメという普遍性の高い話題を扱い、芸能人の趣味番組を紹介しながら2人でトークをし、一人称企画やそれをインタビューで使っていたことを認知していなければフルで楽しむことができない内向き企画で締めていました。

確認してみて改めて感じたのは、やはり企画のバランスがいいです。一回の放送回をとってもそうですし、範囲を広げてみてもばらつきがありません。視聴者層の拡張意識を強く感じました。

このような拡張意識は構成だけでなく、企画一つ一つの内容にも強く感じます。以下では外向けに作られた企画の内容について考えていきます。


経験と知識を詰め込んだ外向き企画

外向けに作られた企画は基本的にVTRです。これはもうバラエティの定石みたいな雰囲気出てますよね。『オモウマい店』や『相席食堂』、『かりそめ天国』など、VTRに対してさらにスタジオのMCがツッコむスタイルは主流になってきた気がします(このテーマでもう一記事書けそうなのでいつか書きます)。ただでさえ説明豊富なVTRにツッコんだりVTR明けにコメントを言ったりすることで、楽しみ方が分かりやすいのでVTRは外向け企画としては適切なわけです。

『キョコロヒー』でよく行われているVTR企画をざっと挙げてみました。

・怒られびと
・グルメ系企画
・THE FIRST BREAK

どれもとても面白く、新規にやさしい要素がたくさんあるのですが、今回取り上げたいのは「怒られびと」です。これはとんでもなく怒られた経験を持つ一般人や芸能人からその内容や怒られた経緯を聞くというものです。怒られるというのは一見ネガティブな出来事なのですが、そのエピソードを通じてその人のかわいらしい部分や魅力が見えてくる隠れたハートフル企画だと思っています。私はこの企画が始まった時、過去現在様々な番組の様々な企画が鮮明にフラッシュバックしたんです。その時ばかりは自分がジャマール・マリクになった気分でした。

まずは、『怒り新党』の「今週の怒られたさん」のコーナー。このコーナーは街頭でインタビューをして、一般の方から怒られたエピソードの聞き込みをするというものでした。どうでしょう?まさに「怒られびと」の源泉のような企画ですよね。(ちなみに舟橋さんは当番組でAD、Dを担当していたそうです)
次に、最初期の『シンパイ賞』と『激レアさん』。これは一癖も二癖もある人について調査し、生活の実態や偉業を達成するまでの経緯を明らかにすることでいつの間にかその人のことを大好きになってしまうという側面があり、この2番組のエッセンスを「怒られびと」に感じたのです。
つまり、今までの経験と知識を存分に発揮した「怒られびと」という企画は、キョコロヒーチームにとって十八番であり必殺技なのではないかということです。

結論、『キョコロヒー』は今まで蓄えてきた経験と知識を結集した一番の武器を携えて、ファンが継続して楽しみつつ新たな視聴者を獲得するという難題に今まさにチャレンジしている最中だということです。

そのため、未公開を投稿しているテレ朝公式YouTubeなどで「YouTubeの未公開のほうが好き」とか「もっと本放送でトーク流してほしい」というコメントを見かける度に胸が苦しくなるんですよね(これは激レアさんの未公開でも感じます)。本人に悪意はなく、むしろ番組愛が強いからこそというのが分かるから尚更に、、、。

スタッフさんの答えがない中での挑戦は温かい目で見守っていきたいです。



「生キョコロヒー」というイベント

この文章を書く一番のきっかけとなったイベントのことについて書きたいと思います。
「生キョコロヒー」は『キョコロヒー』としては初の番組イベントです。なんとシンプルなタイトル(2回目)!番組イベントということは、当たり前ですが普段番組を観ている人に向けたイベントということになります。その内容がこちらでした。

この気持ちのいいほどの身内ノリ。今思い出しても最高でしたね、、、。バラバラ大作戦時代からの文脈も踏まえ、名物企画を生で行い、トークも山盛りでした。とにかくファンが喜ぶ楽しいことを詰め合わせてくれた印象でした。ファンはまだ浅いながらも『キョコロヒー』という番組の歴史を噛みしめながら楽しんだわけです。私には聞こえていました、お客さんの歯と歯が擦れ合う音が。

このイベントに参加してみての気づきとして、「やろうと思えばここまでファンを楽しませることに振り切れるんだ」ということと、「通常放送は意図的に企画の種類をばらけさせているんだ」ということが得られました。

このイベント以降、通常放送ではバラエティに富んだ企画と少しの身内ノリを楽しみつつ思い出を蓄積して、いつか再び行われるであろう身内ノリ満載の番組イベントを楽しみに待とう、と思うようになりました。(何度も言いますが通常放送がそもそもめちゃくちゃおもしろいのは大前提です)



6月29日のスペシャルは

では、6月29日(水)に放送される1時間スペシャルはどのような内容になるでしょうか?
おそらく、予告を見た感じ、お笑いファンもYOASOBIのファンも白石麻衣さんのファンも、そしてなんなら「どうやら豪華な特番をやるらしい」と知った特に誰のファンでもない人も、もちろんキョコロヒーのファンもできるだけ多くの人を巻き込む気合で番組を作っていることでしょう。朝やゴールデンのテレビレギュラーを持ち、かつてはお昼の生放送でもMCで大活躍、なおかつ深夜のバラエティやラジオも支える山里さんを回しに起用しているということはそういうことなんだろうと解釈しています。

そうして継続や昇格、次回のスペシャル、もっと広い箱での番組イベントなど『キョコロヒー』としての歴史を刻み続け、将来、より多くのファンが増え、『キョコロヒー』が今以上の大人気番組にまで成長していたら、ファンとしてこれ以上嬉しいことはないです。




最後に

つまり、何が言いたかったかというと、『キョコロヒー』は本当に素晴らしい番組だということです(強引)!!


ということで、ただの一視聴者の長ったらしい感想文は終わりにして、ちょっとTver回しに行ってきまーーーーす。



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