推しの裁判オフ会のため、レンタル女子大生とヒッチハイクをした話➁

前回の記事:推しの裁判オフ会のため、レンタル女子大生とヒッチハイクをした話

いざ裁判へ

京都でヒッチハイクを終え、レンタルした彼女と解散し、翌日。
念願の裁判オフ会に参加すべく、大阪へと向かった。

中の島公園の高架下でピクニックをしているとのことだったので、自分たちの分の昼食を買ってドキドキしながら向かう。

高架下に行くと……スピーカーで音楽を流しながら、ブルーシートの上でピクニックをしている人たちが見える。
下は20代から上は初老の人まで、国籍問わず20人程度の男女が輪になり、和気藹々と語らっていた。

「こんにちは~」
「どうもどうも、座ってください!色々お菓子とか買ってきたんで、自由に食べてね~」
声をかけると、被告人自らとても気さくに輪に招き入れてくださった。

集まった面々も豪華で、弁護士、大学教授、文化人類学の研究者、シャーマン……などなど、普段は出会えないような人達が勢揃いしていた。
(非常に面白い話を沢山聞くことができたが、ここでは書けないことばかりなので割愛)

「次の裁判は大道芸人とか呼んでちゃんとしたフェスをやりたいなぁ。裁判フェスを楽しんでってね!」
持参したスピーカーで音楽を流し、踊り始める被告人。

「この草、●●っていう草でDMTが含まれてるんだよね。さっき公園で拾ってきた」
幻覚成分含有の草を拾ってきて楽しそうに自慢する被告人。


刑事事件の被告って、春のうららかな公園でブルーシート敷いて踊ってるものだっけ??

ていうか裁判フェスってなに??


色々と規格外の事態に、脳がバグり始める。

和やかにピクニックを楽しんだ後、被告人に引率され裁判所へ。
20人ほどの男女がぞろぞろと連れ立って公園を練り歩く様は、まるで遠足である。


弁護士と合流し、法廷に入室。ついに裁判が始まる。
せっかくなので最前列を確保。

被告と目が合うと、笑顔で手を振ってくれる。
ダブルピースのファンサ付き。

人気アイドルのライブはこんな近くで見られないのに、裁判オフ会なら、至近距離で推しにファンサを貰えるのである。
しかも参加費は無料。

あまりにもコスパが良い。

アヤワスカ裁判二審、初公判

弁護士と裁判官が揃い、公判が始まる。

裁判の争点は三つ。

・明確性の原則
・幻覚成分が含まれるお茶は麻薬なのか
・被告人の行いは紳士な宗教行為であるという点


明確性の原則

明確性の原則とは、「ある行為が犯罪かそうでないかが明確に定義されなければいけない」ということ。

被告人が起訴されるきっかけになった「アヤワスカ茶」は、DMTと呼ばれる幻覚成分を含む植物の樹皮を煮出して作られる。
ここで重要になってくるのが、

DMTそのもの→麻薬
DMTを含む植物→麻薬ではない

ということ。

DMTという物質は自然界にありふれたものであり、オレンジやアカシアの木、人間の尿、哺乳類の体にも含まれている。
前回の京都地裁の判決をめちゃくちゃ簡単に言うと、

「DMTを少しでも含んでいるものは、植物以外全部麻薬!危険だったら違法!」

つまり、

オレンジジュースも人間の尿も、果ては人間そのものが麻薬である

というとんでもない結論を出したのである。

尿をトイレに流したら、麻薬を廃棄したことになり、逮捕されるかもしれない。
オレンジジュースを毎日飲む人は、麻薬中毒ということになる。

曖昧な法律を作ることで委縮効果を与え、排泄をする、オレンジジュースを飲むといった日常的な行為を制限するのは、人権の侵害であると弁護側は主張する。

被告人の行いは宗教行為であるという点

被告人は、アヤワスカ茶を精神疾患の治療のために用いたと主張した。

アヤワスカは、精神病や薬物依存の治療に使われており、鬱病への治療効果が科学的に認められている。
ペルーでは国家文化遺産にも指定されており、副作用もないことから、海外では脳疾患の治療薬として研究が進んでいる。

被告人はアヤワスカ茶を娯楽目的で使用したのではなく、苦しんでいる人を救うために使用した点から、被告人の行為は真摯な宗教行為であり、これを取り締まることは信教の自由に反する、と弁護側は主張した。

お茶は麻薬なのか

アヤワスカ裁判の最大の争点が、「幻覚成分を含む植物を熱湯で煮出すことは麻薬製造にあたるのかどうか」という点。

『大コンメンタールⅠ 薬物五法』は、麻薬製造の定義として「科学的合成によって麻薬以外のものから麻薬を作り出すこと」「麻薬に化学的変化を加えて別の麻薬にする」を挙げている。

弁護側は、

「DMTを含む植物をお湯で煮出すという行為は、科学的変化を伴わないため麻薬製造には当たらない」

と主張する。

また、DMTが植物の細胞内で水に溶けた形で存在していることは否定できず、その水が細胞外に出たところで、植物の分子の一部であるからそれは植物と言えることから、「幻覚成分をお茶として煮出す行為は違法には当たらない」と主張した。


そう、裁判とは、法律という枠組みを駆使した高度な解釈バトルなのである。


検察側からの反論はなく、30分程度で閉廷し、判決は未定。
また次回、公判が開かれることになった。


そんなこんなで裁判を傍聴した後、鳥貴族で打ち上げをし、無事解散。
ヒッチハイクからの裁判オフ会、冒険心と知的好奇心が満たされる、非常に楽しい時間だった。


これを見てヒッチハイクや裁判傍聴に興味を持った方は、ぜひ私と一緒にヒッチハイクや裁判オフ会に行きましょう!!

みなさんもぜひ、楽しい裁判ライフを!


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