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2023年度ESAT-J問題

はじめに

2023/11/26 、都立高校入試のスピーキングテスト(通称ESAT-J)が行われた。本試験は去年度から導入された試験であるが、様々な問題点や懸念事項があるにも拘わらず強行されている。

筆者のESAT-Jに対する意見については、過去に動画を投稿しているのでそちらを参考にしていただきたい。

試験の実施体制自体にも多くの問題点が指摘されてはいるが、本記事では実際に出題された問題についてのみ言及する。

本題

今年度の問題にも(去年度ほどではないにしろ)、多くの批判の意見が寄せられた。以下が実際に出題された試験のPDFだ。

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/files/esat-j/2023_script.pdf

その中でもX(旧Twitter)で話題になったのが以下の投稿。

実際の所本当に「英語で中学生が言えるわけない」かどうかは、教育関係者でもない筆者には判断しかねるが、それはさて置き、本試験で期待されている解答として想定される内容としては
①私は(体育で、体育祭で、競争で、校庭で)走った。
②帽子が脱げて(落として、風で飛ばされて)しまった。
③(近くで、隣で)走っていた生徒が(男子が、同級生が、友人が)拾って(取って)渡してくれた。
④私は彼と一緒に(同時に)ゴールした。

①I ran a race in the schoolyard(in PE class, in the sports event, on the track).
②I dropped my cap./My cap went off(came off, fell off, blown off by the wind).
③A boy(my classmate, a friend) (who is running by my side(beside me, side by side, abreast with me))picked it up and gave(handed, passed) it to me.
④We reached(finished) the goal together./He and I crossed the (finishing) line at the same time.

という感じだろうか。その他必要に応じて各種接続詞を追加するとより良いかもしれない。
以下、中学生3年生が本英文をするにあたっての懸念点を筆者なりに考えていくが、勿論専門家からするとこれ以外にも懸念事項は多く考えられる。
1. "race"などの語を使う場合、多くの場合自動詞であるrunを他動詞として(run a raceのように)使うのが難しそう
2. 「ゴールする」の表現reach the goal、cross the line等は難しそう
3. 「風で飛ばされる」の表現be blown off by the wind、come off等は難しそう
とはいえこれらも、所詮素人の筆者が想像したものに過ぎないため、専門家からはより多くの問題点が指摘されるかもしれない。

世間の反応

以下ネット上の意見を紹介する
批判意見

一方で、それほどの批判には値しないという擁護的な意見もあった。

見解

去年度と違い、may+haveのような中学英語範囲外の文法を含む英文の音読や、米英語、英英語で答え方が異なる問題などは(筆者の確認する限り)無かったため、本試験の質自体は間違いなく改善したと言えるだろう。
しかし、中学3年生に出題する問題にしては難易度が高く、絵だけではイマイチ要領を得ず、やや現実性に欠けた場面のため、実用性についても疑問が残る。問題としての質は決して良いとは言えない。具体的な難易度については、英検2級や準1級と同等の難易度ではないかとする意見さえ見受けられた。個人的には、採点基準や問われる能力が必ずしも一致するものではないと思われるため、一概に比較すること困難だが、何にせよ、本問題を準備時間(30秒)と回答時間(40秒)の合計70秒で答えさせる出題者は、中学英語の学習範囲を把握しているのかは気になる。この問題を出題することで中学生のスピーキング能力向上に繋がるのだろうか……。

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