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「あたらしい歌集選考会」選考結果

「あたらしい歌集選考会」のご報告をいたします。

先ず何よりも、事前登録をしてくださったみなさま、作品をご応募いただいたみなさま、ありがとうございました。私どもの取り組みにご賛同いただけたことにも、深く感謝を申し上げます。
「あたらしい歌集選考会」は、ナナロク社から第一歌集を刊行いただく歌人を選考する会を、公開応募として開催したものです。応募の詳細はこちらをご覧ください。
https://note.com/nanarokusha/n/n1608c70ca45b


1:選考結果発表

本日は、応募概要に記した予定どおり選考結果を発表いたします。

岡野大嗣選  森口ぽるぽ
木下龍也選  島楓果(しまふうか)

選考者の岡野大嗣さんと木下龍也さんの両歌人から、それぞれ推薦いただきました。森口ぽるぽさん、島楓果さんの作品を拝見し、ナナロク社から第一歌集を刊行させてほしいと強く思いました。歌集刊行のご意向もあらためて確認することができました。
この発表をもって、歌集刊行の準備にはいります。刊行まで1年ほどの準備期間を予定しています。


2:作品紹介と短評

選出された作品からそれぞれ10首の紹介と、選考者による短評を掲載いたします。なお応募作品の100首すべてと、木下さんと岡野さんによる評の全文・対談は『選考会の記録(仮)』に掲載します。

<森口ぽるぽさんの作品から10首>
Kちゃんは気配のようなKちゃんは観たあとだからだろうくらいに
Sちゃんの肩を親しげにSちゃんが避けたつもりの枝が揺れてた
iちゃんはもう海なんかiちゃんに家族は波の余韻だと言う
【N】ちゃんはほかに手立てが【N】ちゃんを記憶はポータブルに揺さぶる
姿には予定が写りにくいからあなたも突然わたしを殴れる
青空をさえぎるものが瞼ではないとき距離に手が差し込める
川底にとどく重さの石をしずかに手放すとゆっくりしずむ
アメ玉の芯と見立てていた場所をとっくに通り過ぎたちいささ
眠気にはあらためて負け越していて湯船でノーモーションで来るかも
ぬれた手を紙にあてると伝わってうまれるシミが手よりもひろい

<岡野大嗣 短評>
この百首を、自分だけが知っているものにできるのならどれだけ贅沢だろう。けれどそれは叶わなかった。どうしても世に知らしめたいと思う一首に出会ってしまったから。「私」を感じさせられることのほぼ無い、目と耳と舌と鼻と手だけのある生きものが作ったような歌。使われる言葉はどれも素朴で淡く、読み終えて浮かぶ光景は低解像度なのに鮮やか。生音よりもどこか懐かしい、一筆書きの電子音楽を聴いているような気分になる。


<島楓果さんの作品から10首>
トースター開けたら昨日のトーストが入ったままでゆっくり閉じる
ドライヤーかけたら汗が出て汗を乾かそうとして汗が出る
頭から食べるかしっぽから食べるか見ていたら腹から食べだした
髪の毛が顔にかかってかゆいので鏡を見たらなにもなかった
アナウンサーが左にすこし傾いているからわたしも傾いて観る
温かい緑茶と一緒に大福を食べれば口はくず湯を作る
リサイクルショップで買ってきた椅子の破れたところに刺さっている毛
ある程度あくびの存在感を消す代償にふくらむ鼻の穴
真昼間の光を吸いこんだフローリングは足で暗闇を知る
抱いてやる アニエス・ベーのTシャツのベーのあたりに耳がつくよう

<木下龍也 短評>
本作を選んだ理由をひとことで言えば百発百中だったからです。百首すべてが淡々と上手い。今回の依頼を受けたとき僕は自分に似ていない、自分とはまったく違う作品を選ぼうと心に決めていましたが、社会に対するシニカルな視点も余計なエモさもいらない、観察眼だけでどこまでも行くという気概、その実直さに撃たれてしまって、もうどうしようもなくて、決心は折られてしまいました。


3:『選考会の記録(仮)』(2月末ごろお届け)

森口ぽるぽさん、島楓果さんの応募作品全100首と、木下龍也さん岡野大嗣さんによる評全文・対談を『選考会の記録(仮)』として一冊にまとめます。作品ご応募の有無に関わらず、事前登録されたすべての方に2月末ごろお届けします。ご住所のご変更がある方は、小社までご連絡ください。
問合せ先:shop@nanarokusha.com
また限定冊数となりますが一般発売もいたします。3月以降の予定です。販売先、入手方法などはあらためてご案内をいたします。


以上で、「あたらしい歌集選考会」の選考結果のご報告を終えます。

権威があるわけではない、一出版社の一般公募による選考会に、ご応募いただいたみなさまへの感謝の思いは何度も伝えさせていただきます。
ありがとうございました。

2021年1月23日
ナナロク社 村井光男

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