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読書記録

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#エッセイ

山崩れを見る文学者の眼 『崩れ』

荒川洋治さんの新しい読書の世界というラジオ番組で耳にして気になった幸田文さん。ブックオフに行ってみると、一冊だけ筆者の本が見つかりました。やった! しかし『崩れ』というタイトルからは内容が想像できません。なんとなく官能小説っぽいタイトルだなあ、それに装丁にも惹かれない。でもあの荒川洋治さんが絶賛していたし、と思ってえいやと購入しました。 人は見かけが8割と言うように、本も装丁でピン!とくる本は読んでみるとやっぱり面白いことが多いです。でも人は見かけで判断できないとも言うよ

荒川洋治・新しい読書の世界 エッセイの空間

最近noteを書くのが楽しくて、書くほどに新たに書きたいことが出てくるのですが、ふとこんなこと書いてなにになるのかなあ、自分は一体なにを目指してなんのために書いているんだろう、と思う時があります。 自分が楽しいから書けばいいのだけれど、書いているとだんだんもっと上手に書きたいとか、もっと分かりやすく伝わるように書きたいとか、自分の頭の中にぼんやりあるものをより明確かつ自分の気持ちにぴったりな形で書けないかなとか、欲が出てきます。 そもそも日記やエッセイ、個人的な考えの記録

人生を変えた本と言えば、岡本太郎さん

18歳。その年大学受験に失敗するまで、生まれてから毎日上り調子の人生でした。毎日が楽しくて仕方がない。昨日よりも今日が面白く、明日が来るのが楽しみで。学校に行くのが好きで勉強が好きだったことは、今思えばとても恵まれていたんだなと思います。 進路選択で揺らいだのが始まりだったのかも知れません。当時の目標は研究者になること。勉強が好きだったのでその道で生きていきたかったのと、どうしてか小学生の時から社会に出たくない、会社員にはなりたくないと思っていたのでした。今思えば研究者だっ

忘れられない『忘れられる過去』

noteやブログを読むのが最近の楽しみ。おもしろいお話がたくさん。気軽に読めるので読みだすと止まらない。本屋に行けなくとも、図書館に行けなくとも、お家にいるだけで新しいものがどんどんやってきて、文章に焦がれる空腹感を、どんどん満してくれます。 しかし”気軽に読める”というのは危険をはらんだ言葉です。ブログを読みすぎると自分がなにかを書くとき、"ブログらしい"文章に引っ張られ過ぎてしまいます。ウケを狙いたくなるというのでしょうか。 そんなときそっと手にとるのが荒川洋治さんの