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読書記録

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#読書の秋2022

コメントを書くのが苦手なひとへ 『三島由紀夫 レター教室』

紙とペンを取り出して手紙を書く機会の少なくなった今日この頃ですが、誰かのことを想い、言葉を届けるという意味で現代のお手紙に代わる存在が、noteのコメント欄ではないでしょうか。 note記事に対する的確な理解、小気味良い軽快な読み口、ユーモアある返答、そこはかとなく漂ってくる知識と経験、そして相手を思いやる自然な気持ちが伝わってくる、そんな素敵なコメントのやり取りがnoteには多いなと感じます。 記事の内容がさらに深まる新たな視点、鋭い問いかけ、エスプリ溢れる丁々発止のや

知的好奇心を揺さぶる 『マンガは哲学する』

マンガと哲学って絶対に面白い組み合わせ!とワクワクして手に取ると、裏表紙の説明文に惹かれ、序文を開いて既に大共感です。中途半端にまじめな話に嫌気がさすが気持ち、すごくわかります。期待を裏切られない大満足の一冊でした。 存在や自己、夢や人生、世界や時間についてのこんがらがる哲学的問題や問題提起の仕方を、噛み砕いた言葉と的確なマンガの引用で深めていきます。筆者流・物語の哲学的な読み方vs文学的な読み方の違いも面白く、知的好奇心が揺さぶられます。マンガの世界ってこんなに豊かだった

『東京セブンローズ』 人をつくるのは国家か言語か

面白い小説を読んでると、どんどん物語の世界にのめり込んでいってしまいます。 面白ければ面白いほどページを閉じても本の世界は止まらず、日常生活が侵食されて行きます。他のことをしつつも頭の中の半分はまだ小説の世界に取り残されていて、上の空。 何か思いつくことがあると、例えば読んでいる内容、その何が面白いのか、どこにどうして感銘を受けたのか、小説の中の状況に対して自分ならどうするか、以前に読んだ本との関連性や現実との対比などなど、誰かに話して聞かせずにはいられなくなります。読ん