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#ラテンアメリカ文学

”現実”とは一体なんなのか 『モレルの発明』

アルゼンチンの作家ビオイ・カサーレスの『モレルの発明』は、町山智浩さんが『去年マリエンバードで』の映画解説で紹介していて知った小説です。 『去年マリエンバードで』は我が人生でその美しさに最も感銘を受けた作品であり、しかも世界で1番難解な映画のひとつとも謳われています。そんな作品に影響を与えた小説が『モレルの発明』なのだとか。これは読まないわけには行きません。 一読目では、どうしてこの小説が『去年マリエンバードで』に繋がるのかが分かりませんでした。どちらかというと映画『イン

ときにはわからない本を読む愉しみ『ペドロ・パラモ』

『ペドロ・パラモ』この薄い本を読むのに1ヶ月以上かかりました。今まで読んできたどの小説にも似てなくて、難解で、途中でもうやめようかな…と思ったのも事実。 まず登場人物が多く、名前が覚えられない。名字で呼んだり名前で呼んだり時々変わるのにも混乱。 そして何より前ぶれなく次々に語り手が代わっていく大胆さ。"○○は言った"みたいな分かりやすい地の文もないので、読み進めないと語り手が誰に取って代わったのかわからない。 語り手が代わると同時に時代も前後します。現代と過去、そして過

映画好きこそ読んでほしい!『蜘蛛女のキス』

マニュエル・プイグ著『蜘蛛女のキス』を初めて読んだのは、大阪の本屋さんで働いていたときのこと。海外文学専門の先輩書店員さんがオススメしてくれたことがきっかけです。彼女は映画や文学への造詣が深く、いつも知らない世界を教えてくれました。確かレイナルド・アレナスの『夜になるまえに』に感銘を受け、「原文で読んでみたい!」との想いでスペイン語を習得し、今ではスペイン語、フランス語、英語で原書を読み、書店の海外文学および洋書コーナーの選書をされています。 ラテンアメリカ文学をほとんど読