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読書記録

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2021年11月の記事一覧

一番好きな小説を選ぶなら、谷崎潤一郎の『細雪』

初めて読んだのは10年以上前でしょうか。とてもとても大好きな本なのですが、文庫で三冊と大長編、今まで一から読み返すということがありませんでした。ところが久しぶりにページをめくってみると、一行目からもう関西弁のリズムが心地よく耳に懐かしく響きます。気がつくと最後まで一気に読めてしまっていました。 第二次世界大戦前という時局の割には劇的なことが起こるわけではなく、ただただ日常の細々した出来事や風土、そして蒔岡家の姉妹の心情が微に入り細に入り克明に描写されているだけ。ところが文豪