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シリーズ 昭和百景 「国有地という“昭和遺産”」

 戦後の昭和史は、経済成長の歴史でもある。高度経済成長期を経て、東京都内の地価上昇とともに、額面上の資産価値が上昇したことで、庶民の資産に、ひとつの波が押し寄せた。国有財産、いわゆる「国有地」が激増する。地価が上昇したことで課税額も増加。数字上の含み資産ばかりが増加したため、土地屋敷を維持するだけの相続税の支払いに対応しきれなくなった所有権者らは、戦前からの土地を手放さざるをえなくなった。

それは同時に、「物納増加」という現象を生み出した。民から官へという、見えざる流れを生み出したのだ。国有地増加の結果、最大の恩恵を受けたのが「官舎群」であった。その資産価値は、十二兆円に達するとも言われる。

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