今更始める刀ステ履修 第一弾:虚伝(感想レポ)

今更始める刀ステ履修 第一弾:虚伝
非常に見応えがありました!
・演劇好きだけど2.5次元は自主的に見ない
・ゲームは包丁藤四郎実装あたりまで
な人間の感想です。

友人にオススメされての視聴でした。
ストーリーや演出の面白さもさることながら、役者さん達の動きやセリフにも細部までこだわりとリスペクトが感じられて楽しく気分よく鑑賞できました。
以下要素ごとの感想↓

【脚本】
長い長い時間 歴史と共に在った刀達、そして武士、武器としての刀が廃れた現在、多くの刀剣男士達の中に「なかったことにしたい敗北」や「欲しかった未来」があるのは至って自然な事。けれども時にその感情を圧して歴史の形を守らなくてはいけない。ゲームではソフトに触れていたその現実と葛藤が、織田信長という多角的な評価を持つ人物に焦点を当てることで深みと重厚感を増して目の前に据えられる。そんなシナリオでした。
信長は自分の意思と力で全てを選んで進み切った道の上に負けた。それ故に人それぞれの見え方は大きく違いつつも皆鮮烈で、そんな信長を題材にしたからこそ刀達が歴史を守る意義についてそれぞれ感じ入ることが出来た。
信長ゆかりの刀達がそれぞれ持つ信長像、そこからくる本能寺の変への想いと関わり方が一つの舞台に集められることで信長という人物の影が組み上がり、「何故歴史を守らなくてはいけないのか」という命題への答えが目の端にひらめく。答えの出し方は提案されていても答えそのものは観客に委ねられていると感じました。

【刀剣男士】
台詞やポーズがゲームを忠実になぞっているだけでなく、ゲーム中で表現されていない殺陣などの動き方にもキャラクターらしさがあって、役者/製作者全員がしっかりゲームの内容を把握、研究しているんだなと確信出来る作り込みでした。
刀派や以前の持ち主ごとだけでなく、見た目年齢に寄った関係性なども所々で見受けられて、彼らが本丸で”生きて”いると感じられます。
第一作ということで一部殺陣の動きが重たく見える部分もありましたが、今後どんどんブラッシュアップされると友人から聞いているので次回作以降を観るのが今から楽しみです。

【三日月宗近】
驚きの完成度でした。三日月がそこにいる…
優雅さと余裕をしっかりと感じさせつつもスピード感のある動きは頭一つ飛びぬけた美しさです。布量が多い衣装なので袖を綺麗にはためかせて動くのは相当大変だと聞いたことがあるのですが、それを全く感じさせない軽やかな動きはゲーム中でも別格の力量を持つ三日月を演じるに不足無しでした。
またゲームの声優さんの声の出し方、しゃべり方のクセまでしっかりモノにされていて、若々しさと老獪さもしっかり同居している。本当にすごいの一言に尽きます。

【山姥切国広】
写しということでちょっと拗ねた性格をしているせいもあってか、クセがなくすっきりとした動きに見えました。
他のキャラクター達の動きが特徴的な中で浮かないスタンダードさは一つ一つの動きがしっかりしてこそなのかなと。

【宗三左文字】
以前「立てば人妻 座れば未亡人 抜いた姿はマジゴリラ」の迷言に添えられていた動画、うろ覚えだけど虚伝のだったみたいだな…というのが最初の感想です。
常にもの悲しさを感じるしっとりとした雰囲気はまさに宗三でした。そして殺陣での華麗な上半身の動きに対して豪快な足捌き、なるほどゴリラ…となる手練れの動きでした。お飾りだなんてご謙遜を…と言いたいです。
刀身に刻印が刻まれているからなのか、一番信長に「惑わされている」という空気を出していたのが印象的で、そこから腹を括った後の覚悟の強さが際立っていました。

【薬研藤四郎】
シルエットは間違いなく薬研でしたが、お顔がやはり精悍な成人男性だったのでちょっと戸惑いました。でも押しつけがましくない、突き放すでもない大人びた抑揚や表情作りが「あぁ、薬研だ…」とストンと落ちてくるような、そんな素敵な演技でした。織田勢の中で一番幼い見た目なのに一番大人なのがさすがだなぁと思わせる位置づけです。

【圧し切り長谷部】
審神者への忠誠心は信長への反発心、織田勢の中で一番信長に対して否定的なのにがんじがらめに囚われている。審神者へ忠誠心をギャグ要素として扱われることも多い中で、信長への反発心が前面に押し出されているのが印象的でした。
カッチリとした姿勢の良い殺陣がとても長谷部らしいのですが、以前見た活劇刀剣乱舞の実写映画よりまだ型が定まり切ってないようにも見られたので今後の変化が楽しみです。

【不動行光】
顕現したてなせいか、自分の感情に振り回されがちというか赤ちゃんみたいな行動が多かったので少しヒヤヒヤしていました。ゲームにはありませんが懲罰房行とか、解刀処分になっても何らおかしくない不始末の数々でしたが大丈夫だったのでしょうかね。
こちらも殺陣は実写映画の習熟度までまだ少し余白があるようだったので、よく比較してみたいです。
酔ってたと思ったら流暢にしゃべり出すのは少し面白かった。

【燭台切光忠】
身長がキャラクターと一緒で声も似ているとの触れ込みでしたが、本当に光忠でした。
茶目っ気と紳士さを兼ね備えた、光忠ならではの魅力が存分に表現されていたと思います。
殺陣は少し重たそうにも見えた気がしますが、社交ダンスを思わせる、他の男士達とは雰囲気の違う優雅さ、軽やかさがありました。

【江雪左文字】
ゲームでは悠然としていつつも高火力なキャラクターでしたが、ゆったりとした動きで敵を一方的に切り捨てていく殺陣はそんな江雪にぴったりでした。
私がゲームでプレイした部分では戦いを嘆く江雪しか見られなかったのですが、自分のために傷ついた小夜をきっかけに「守るためなら戦うことを受けいれる」という嘆きの”先”が見えたことがとても感慨深かったです。

【一期一振】
「各個撃破としゃれこみますか」のアップで手の動きが以前動画で話題になっていたのを思い出して、「カメラさんもう少し引いて!!」思わず思ってしまいました。
傘もそうでしたが長物の捌き方がとてもきれいですね。
殺陣は一期も姿勢よく上品な型でしたが、光忠よりはカッチリと、しかし長谷部よりは柔らかく優雅に、といった印象で、差別化がすごいな…と見入っていました。

【小夜左文字】
ゲームの立ち絵を比較するとどうしても体格はいいのですが、セリフの言い方に冷たく無関心な殺意が滲んでいて「あ、小夜だ」自然に思わせる演技でした。
短刀なので足技も多いのが新鮮でしたね。

【鯰尾藤四郎】
溌溂とした、けれどうるさすぎないセリフ回しはまさに鯰尾でした。本丸での見た目年齢相応な立ち居振る舞いが可愛らしかったです。

【鶴丸国永】
飄々として場の空気を緩めつつしっかりと周囲を見ている、そんな抜け目のなさまでしっかりと表現されていました。多分全キャラ中一番アドリブが利くので終始楽しそうだったなと。

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