「100日間生きたワニ」が思いのほか面白かったという話

 「100日間生きたワニ」はTwitterで話題になった「100日後に死んだワニ」をアニメ映画化した作品である。
 原作である100日後に死んだワニはマーケティングのことでなぜか炎上してたということしか知らず、Twitterのおすすめユーザーの所に出てきたので原作者であるきくちゆうきのことをブロックしてたりするが、「Twitter上ではボロくそ言われてるからかえって見たくなってきたぞ。監督はカメ止めの人だからクソ映画ってことはないだろう」と思ったのでモルカーのついでに見てみたというわけである。

 こういうわけなので期待値がかなり低かったという点は否めないが、普通に面白かった。
 監督の上田慎一郎は「カメラを止めるな!」で一躍有名となったわけだが、本作でも細かな伏線回収がなされいる。
 絵の方はきくちゆうきを忠実に再現してるというのがあって絵で圧倒されるみたいなのはないけれど、私などは細やかな絵は見続けると気疲れしてしまうので、そっちの方がかえってよかったりする。
とはいってみたものの、主人公の友人のモグラがなんの生き物かわからなかったが、それは私の理解力不足のせいということにしておこう。

 ストーリーをざっくり説明すると前半は主人公であるワニが死ぬまでの100日間が描かれており、後半は死んだ後の話になるという2部構成になっているのだが、開始早々ワニがヒヨコを車から庇って死んでしまうところからスタートし、そこから100日間前に遡るわけだが、今度は交通事故にあって負傷した友人であるネズミを見舞うところから始まるのである。
 「交通事故にあって助からなかったワニ」と「交通事故にあったが助かったネズミ」と対比させることで死にというものは決して遠い事ではなく生きているということ自体が奇跡であるということが伝わってくる。
 話はそこからワニの死に至るまで進む訳だが、その際に登場人物らはある約束事をする。約束といっても「この映画の最新作が公開されたら次も一緒に見ましょう」とか「GWになったらここに行きましょう」といった他愛もないことなのだが、他愛もないことだからこそワニの死がより悲壮感を帯びるわけである。
 
 ワニの死で一旦区切りをつけた後で「100日後」に話が進むのだが、ここで原作には登場しなかったカエルが出てくる。
 そのカエルを見た時は「なんだコイツウザイな」と思ったし、実際ネズミらもウザイなという感じの接し方をしていたのだが、その「ウザさ」が友人であったワニの死から立ち直るきっかけとなったわけである。
 ちなみに後半では殆どのシーンで雨が降っている。前半は晴れていたのでこれは登場人物が悲しみに沈んでいる様を表現しているのであろう。演出でいうとベタもベタであるが、登場人物らは悲しみを表に出すことがないため、これも心理描写として生きてくる。クライマックスでカエルとネズミが涙を流すのだが、この時から終わりまで晴れのシーンとなる。これもまたベタではあるが、ワニの死から立ち直った演出としてはこれ以上ないであろう。
 
 先にも監督の上田慎一郎に触れたが、話が2部構成になっているところも「カメラを止めるな!」を彷彿とさせるなと思ったりする。
 こういうところを見てみると「100日間生きたワニ」はかなり上田色が強い作品なのであろう。
 私はきくちゆうきのことをブロックしているので当然原作である「100日後に死ぬワニ」がどういう話なのかよく知らないが。

 「100日間生きたワニ」は直接的な死の描写を避けつつも大切な人を失った悲しみとその悲しみを乗り越える様を丁寧に描いた作品なのだが、どうにもマーケティングでケチがついた感じになってしまったのが残念でならない。原作者のきくちゆうきのことはブロックしてるけど。

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