見出し画像

指示と確認

教師には日常的に「指示」という行動が伴います。学校が学ぶ場であり、教師が教える手助けをする者であること。「伝える」という行為が行われる以上は、「指示」は必須になってくるものでしょう。

「このプリント配って」
という指示から、
「音読します」
という指示まで。
果ては、
「お昼休みに鬼ごっこするからやりたい人来てね」
という声かけすら指示です。

この日常的に行われる指示が不明瞭で正確に相手に伝わるものでなければ、コミュニケーションがうまくいかなくなるであろうことは容易に想像できます。

教師から意図的に発せられる子どもを動かす声かけ、つまり指示は、具体的に伝わりやすいものでなければなりません。

さて、そこで今回参考にしたいのは、教育界の名著「授業の腕を上げる法則」(向山洋一著)です。1985年の本ですが、現代まで長く読み継がれてきているのは、そこに確かな情報があるからです。内容を一部取り扱いながら、指示と確認について整理していこうと思います。(私自身がTOSSに所属する者ではないことをご了承ください)

教室をきれいにしたい時あなたなら何と言いますか?

具体的にイメージできてこそ、私の言いたいことも伝わると思います。
ぜひ、頭にイメージ、もしくは実際に言葉にしてみてください。
ここで具体的にイメージできた方はおそらく十分な経験がある方ではないかと思います。イメージや言語化は自身の経験値に既定されます。子ども達の反応までイメージできた方は相当な経験値を積まれているのではないでしょうか。

例を一つ挙げてみます。

「今から掃除をします。隅々まで一生懸命やろうね。しゃべらず黙ってやりましょう。ごみはごみ箱に捨ててね。」

言いたいことがたくさんある教師の姿。こうした指示は熱心な頑張ろうとする先生に実は多いのかもしれません。
ただ、長い!

だらだら言わずとも、最初の一言の「今から掃除をします」だけでも十分伝わります。

「授業の腕を上げる法則」では次のように書かれています。

プロの腕に少しでも近づきたいものです。
赤字のところは私が書いたものですが、少し説明します。

まず、指示は短くあらねばならないということです。
簡潔に短く。そうでなければ、話を聞いているそばから、聞いたことが抜け落ちていってしまいます。

もう一つは趣意。
ちゃんと意味や目的を放しましょうということです。
なぜそれをやるのか、なぜそれをやってはいけないのか。
意外と教師も趣意をわかっていないときがあったりします。
趣意の分からない行動を強制されることほど頑張れないものです。

そして、最後に任せようということ。
極端な話、教師がすべて指示してしまうのが楽です。しかし、それでは子ども達も育っていきません。


「授業の腕を上げる法則」では、授業をするにあたっての原則を示しています。
その中でも指示に関するものは以下の4つです。
①趣意説明
②一時一事
③簡明
④全員

今回は、①②③について取り上げます。
先ほどの事例にあったのは、①趣意説明と③簡明です。

指示に対して教師がちゃんと説明できれば、多くの指示は通ります。趣意説明によって子ども達に納得感を与え、指示に対して動きやすくする、そうした工夫が趣意説明なのだと私は考えています。
そして、短く簡潔に話す。

教師は、人に教える仕事ですが、だからこそ、「教え好き」な人が多いです。あれもこれもと教えたくなってしまう。その結果、指示が膨れ上がって、子ども達は理解ができなくなる。
まずは言葉を短く研ぎあげることが重要です。

次に、②一時一事
一時に一つの事をしましょうということです。

例えば次のような事例が「授業の腕を上げる法則」では紹介されています。

ノートに漢字の練習をしてね。終わったら先生の机の上に出して、本を読んでいるのよ。その前にロッカーを整とんしてね。

授業の腕を上げる法則

当然、悪い指示としての例示です。
ここには、
・ノートに漢字練習
・終わったら机の上に出して、本を読む
・その前にロッカー整理
という3つの指示が混ざっている状態です。
これで子どもが間違えても、それはそうだよねとなってしまいます。

この場合は、指示を細分化すること、そして確認をすることが重要です。
一時に一事の指示として考え直してみます。

・ロッカーを1分で整理します。(確認)
・漢字ノートと漢字ドリルを机に出します。(確認)
・今日やるページを開きます。(確認)
・終わったら先生の机の上に出して読書します。(確認)

このくらいは細分化したいです。
そして、細分化するだけでなく、ちゃんと一時に一事できているかを確認することが重要です。
この確認の細かさが、アマチュアとプロの決定的な境目だと、私は初任の頃に教えてもらいました。

確認には、いくつかの種類があります。具体的には以下の3つです。

一番、一般的というか、多くなされるのが目での確認でしょう。
目でできているかチェックする。
・書いているか書いていないか。
・終わっているか終わってないか。
・悩んでいるか悩んでいないか。

目というと、「そりゃ目で確認くらいするでしょ」と思われる方もいるかもしれませんが、これは実は一番難しい確認だと思います。
数人なら簡単ですが、教室は30人近くいる場だからです。相当な技術がないと数秒で全員を確実に確認するということは難しいでしょう。だからこそ、目だけに頼らない確認が重要です。

動きと声、というのは、子ども達を動かすことや声を出させることでこちらの確認を行いやすくする、というものです。例えば以下のようなパターンが考えられます。

動き
・「終わったらえんぴつを置きます」
・「①に指を置きます」
・「書けたら立ちます」
・「3回読んだら座ります」


・タグラグビー「タグ!」
・「書けたら『書けました』」
・空書き
・アルゴリズム

何かしらのアクションを起こすことで確認を簡単にすることができます。
例えば、タグラグビーで「タグ!」といって取らなければならないシステムも確認するためです。相手にタグをとられたことを意識しやすくするためのシステムです。
他にも、教室でよく行われる「空書き」も、総画数があっているかの確認、全員手を挙げて文字を書けているかの確認であったりもします。
アルゴリズムはイメージしにくいかと思いますが、例えば、計算順序を声に出す、ということです。

こうした問題だとすれば、
「274+161。一の位。4+1は5。十の位。7+6は13。1ひっかけて、百の位。2+1は3。3+1は4。答え435。」
というように、計算の過程を声に出すことで、確認できます。また、この方法は子ども達にとっても、脳内で考える部分を減らすことができ、習熟にもおすすめです。

少し話がずれました。
いずれにせよ、指示に対して、確認をいれることで、その到達度をチェックできます。到達度のチェックがあるからこそ、全員を漏れなく指導することができます。

この確認は、教師側のチェックであるとともに、子ども達へのフィードバックでもあります。
できているところを確認し、教室で認めてもらえるポイントということです。ですから、確認は努めて、「できない子を底上げする意識」よりも「できている子を認める意識」を持っておきたいです。

先ほどの指示の事例。私ならば以下のように指示し、確認します。

・ロッカーを1分で整理します。
(確認)時間を測る。「できたらお隣のロッカーの人にチェックしてもらいましょう」→「できた人、手を挙げます」。
・漢字ノートと漢字ドリルを机に出します。
(確認)目視。出せたら「出せました」→「今もう出せてるよっていう人?(挙手)」。
・今日やるページを開きます。
(確認)目視。「隣同士で漢字ドリルを持って、開いたページを見せなさい」
・終わったら先生の机の上に出して読書します。
(確認)目視。持ってこさせる。

指示と確認はセットです。確認がないと指示はこぼれ落ちて行ってしまいます。それは低学年でも高学年でも中高生でも同じです。
どのくらい細かく確認するかは子どもの実態にもよりますが、4月ほど、入念に確認をしていきたいです。

また、確認はフィードバックでもあると書きました。
つまり、ほめることにつなげていくということです。
ここでは、「ほめる」について詳しく書いていませんが、確認の後にはこの「ほめる」も含めてワンセットにしたいところです。

今回は、「授業の腕を上げる法則」の中でも指示と確認について、書きました。
名著ですので、ぜひ一度読んでみてください。
私も何度も読み返しています。

長文お付き合いいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?