保護者参加型学級通信のすゝめ
学級通信はどのくらい発行されているでしょうか。そして、その通信はどれほど子どもの、そしてご家庭の心に届いているでしょうか。
私は年間200号以上出していましたが、あまり子どもの心に届いている感覚も、保護者に届いている感覚もありませんでした。
それが最近、ようやく(と言っていいのか)保護者の方から電話口で通信の話をされたり、同僚の先生から「いい通信だなぁ」と言っていただけることが増えてきました。
渡辺道治先生の心に火を灯す学級通信を知り、その在り方をマネする様になってからです。
その核ともなるのが、今回書く、「保護者参加型学級通信」です。渡辺道治先生は「双方向型学級通信」とも呼んでいます。
保護者参加型学級通信は、学級通信を通して、保護者にコメントを求めます。(詳しくは渡辺道治著「BBQ型学級経営」をご覧ください)
例えば、授業参観の後。
授業参観は多くの先生が力を入れて授業されているはずです。せっかくその姿を見てもらっても、保護者がフーンで終わってはもったいないです。
そこで、保護者の方に参観後このように連絡します。
「今日の参観授業、子どもたちはとても緊張しながらもお家の人にいいところを見せようと頑張ってくれました。そこで、子どもたちの頑張りをぜひコメントにして送っていただけないでしょうか?子どもたちにも紹介しようと思います。」
ついでに、子どもたちにはこの連絡をした日にメモ用紙を配ってしまいます。
「お家の人にここに今日の感想書いてもらってね。」
と。
Googleフォームなどを活用してデジタルで集めるのもオススメです。
次の日から次々とコメントが届きます。
このコメントに最大限の感謝をのせて学級通信に掲載します。
例えば音読に関して、
「あんなにいい声の音読、感動しました!」
というコメントがきたら、そこに
「いつもの授業でもとても頑張っています!お家の人の心を動かす音読になったのはひとえに彼らの頑張りです!」
のように、保護者の賞賛に感謝した上で、全て子どもの努力に紐づけます。
そのような形で保護者のコメント通信、「保護者通信」なるものを発行します。
私が考える保護者通信を発行する理由は3点あります。
①子どもの承認
②学級応援団の形成
③保護者の熟成
①は強烈です。家でほめられたことを学校の友達がたくさんいる場でもほめられるわけですから。
マズローの五段階欲求説の「承認欲求」が満たされます。
「承認欲求」は誰かに褒められたい、認められたいという気持ちです。
例えば、SNSで「いいね」をもらうと嬉しい、という気持ちのようなものです。度々、いいね欲しさに暴走する若者がニュースになりますが、人に認めてもらいたいという気持ちはそれほどに強い欲求になります。
保護者通信を発行することで子どもたちは「おうち」と「学校」の両方で2度承認欲求が満たされます。保護者のコメントにより、正しく子どもたちの欲求が複数回にわたって満たされることになります。
②は体系的な問題です。こちらも時折、ニュースにもなるように、学校と保護者は対立してしまうこともあります。その状態で一番不幸なのは子どもたちです。逆に言えば、学校と保護者が同一方向に進んでいる時が最も教育効果が高い時と言えます。
アメリカではこのような学校と家庭が手を取り合う教育のことを「Family engagement」※1と呼んでいます。アメリカの教育政策や研究では、学校と家庭が連携して、またはパートナーとなって子どもたちの教育をサポートするという意味で使われます。学級応援団とはまさにこの「Family engagement」なわけです。
※1, 山本洋子(ブラウン大学教育学部特任助教授 )学校と家庭の関係:アメリカの学校教育への保護者のかかわり より
③は、保護者には話しませんが、この通信を通して、保護者の教育参加を促し、保護者の熟成をはかるところにあります。
日本福祉大学の橋本洋治氏の研究※2によると、保護者の教育参加によって、学歴志向の低い保護者の子どもへの影響がプラスの認識があったという結果があります。保護者自身への影響にもプラスの認識が生まれています。
※2,橋本洋治(日本福祉大学)学校教育への保護者参加の効果と参加意欲に関する研究
以上から保護者を教育者として学校教育に参加してもらう主体者として招き入れます。
学校と家庭を棲み分けるレストラン型ではなく、学校も家庭もどちらも調理者で摂食者とするBBQ型です。
行事はこのコメントを送ってもらう絶好のチャンスです。
運動会は「頑張る彼らにエールを」と行事前に求めることもできますし、行事後に「頑張った彼らに労いの言葉」とすることもできます。
始業式に「夏休みのお家での頑張りを教えてください!」というのもありです。
学級応援団を形成する。family engagementを行う。そして、みんなで子どもたちを育てる。それが私なりに考えるBBQ型学級経営です。
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