渋谷ハジメVS鈴原るる


「Aブロック7回戦!青竜の方角!
火炎獄炎なんでもこいよ!爆炎に愛されしにじさんじのハジキ!渋谷ハーージーーーメェェェェ!!」
歓声が聞こえる。ボクを応援してくれる涼やかな声。観戦者(リスナー)のみんながボクを見ている。相手はまだまだ若手の『女の子』。
苦戦はしない

と思っていた。

対面から出てきた相手は、『女の子』と呼ぶに相応しい見た目と

あまりにも歴戦の血煙を身にまとったヒトだった。

「白虎の方角ゥ、
1998年魔界生まれジャングル育ち、ラクーンシティ勤務!今日もこんるるで敵を葬るる!鈴原ァァァァるーーーーーーるーーーーーー!!!」

場内がざわつく。たしかにここまで女の子は出てきているのだが明らかに何かおかしい空気を彼女から感じ取ったのだろう、素人目でも纏うオーラがあまりにも異質であることがわかる。
「こんるる~♡」
ささやきが心地よさそうなウィスパーボイスであいさつした彼女はボクに気づき丁寧にお辞儀をする。無邪気な笑顔で、とても、普通の女の子の様に。

先輩に気づきお辞儀をする。至極当然の行動。それすらもなにかこれから始まる悍ましい事の前兆のようであり、あのお辞儀して見えなくなった顔はどのような表情をしているのだろうと思案する。
嗤っているのか、無表情なのか、怒りに満ちているのか。
だがボクも一期生の矜持がある。―負けるわけにはいかないんだ。

はっきり言って先は長い、こんな所で手こずっているわけにはいか―

おい。
何だこれ。
アイツは

『女の子』それ以前に・・・

『人間』なのか!?

ピンク色の服をふんわりと来てきょろきょろと物珍しそうに周りを見渡す彼女。闘技場を見渡し終えボクの方を見据えるとその瞳孔は絞られ、ゆっくりと、人間が放出してはいけないオーラを隠そうともせず剰え垂れ流しながら近寄ってくる。
攻撃を仕掛ける動作は微塵も見受けられないのに気圧されそうになるが自分も場数は積んできている。先制攻撃を仕掛けねば。
腕を振りかぶり炎を貯めこむ。彼女は何か気づいたように目を見開きこちらを見ている。見開いている「だけ」。
構えをなぜか取らない。攻撃の構えも、防御の構えも一切を見せない。
それなら好都合と手の炎を投げつける。カマイタチと纏めれば女の子なら戦意喪失するくらいのダメージは与えられるだろう。

投げる。飛ぶ。当たる。裂ける。噴き出す。
何度だって、何度だってやってやるさ。やらなきゃ、負けるんだ。
もう一回、もう一回。彼女の代名詞にも近いセリフをいまボクが振り回している。勝つ為には、それがとても大事なんだ。
次第にカマイタチと炎の上昇気流で巻き上がった砂煙が彼女を包む。
何度投げたかわからない。まだ不足か?もう声も出ず倒れたか?
無反応な時間が続き、ボクは一度投げることを中断する。その時だった。

「すごい!すごいです!そんな攻撃できるなんて・・・すごい!!」
背中に冷や汗が流れる。砂塵の中から聞こえてきた彼女の声は

『とてもうれしそうで たのしげなこえだった』

「もっと見せてください!こんなに血が滾るの、初めてなんです!
 嬉しい!参加してよかった!楽しい・・・ですッ!」

楽しい?
嬉しい?

ここはそんなことを宣う場所じゃないよ?
やせ我慢でそんなことを言ってるのか?
あまりボクをナメないでくれ――――

砂塵が消え、姿が映し出される。
彼女の足元には後ろにズレた後はおろかその場で避けたと思われる移動の後すら残っていなかった。
まして衣服や皮膚はカマイタチで裂けたのであろう裂傷が数多見られる。なのに、なのに!

「渋谷先輩、私、今とっても痛いんです。でも、でも・・・

 今とっても 生きてるって実感があるんです!」

戦慄とはこの事か。恐怖が身体中を駆け巡る。アリが体を包み歩き回るような悍ましい感覚が脳髄に響いてくる。
ボクが対峙した相手はやはり人間ではなかったのだ。
悪魔そのもの、悪魔の子、夢魔、吸血鬼。
ボクの同僚にはいろんな奴がいる。

だのに!

あの娘はなんだ!?亜人なのか?異世界の人間なのか?それとも人間の形をした悪魔なのか?
脳が処理を拒否する。それと同時に一刻も早く彼女を倒さねばと身体が反応する。
また、炎と風の複合魔術で彼女を包み込んでやる。動く隙も与えない!

「ああああああああ!!!!燃えろ!刻まれろ!ボクの能力が知りたいのか!?そうだ!ボクは火炎術と風の刃を打ち出す!燃えろ!燃え盛れ!!!!そして風に切り裂かれ、打ち抜かれボクの力に屈しろォ!!」

彼女の周りで渦を巻く炎、炎渦とともに風渦刃が彼女を襲う。明らかに切れる音が聞こえる。それでも手は抜けない。先ほどの言葉で彼女が危険であることは十二分に分かった。徹底的にやらなければボクが、やられ―――

『こんるる~』

炎渦が弾け飛ぶ。風渦刃の音も消える。
少し笑ったような、此方に慈悲を投げるような眼が一瞬見えたかと思えば、次の瞬間には獲物を見つけた肉食獣のような瞳孔が絞られた眼でボクを見る。

「最初の攻撃で火と風を使うのは分かったので、もっと別の攻撃とかしてほしかったな~って思ったんですけど・・・残念です・・・。」

一転して悲しげな表情を見せる。ころころと忙しく変わる顔とボクに失望したような言動にフラストレーションが増えていく。ふざけるなよと怒りに代わる。
なまじ纏わせて動けなくしようとした事が間違いだったんだ。もしかしたら見えない炎の中で術式とかを練っていたのかもしれない。
ならばそれもやりようがないくらい撃ちだしてやればいい。

「避けられるか!この千の斬撃!!!!」
風の刃に炎を纏わせて打ち出す。避けるなら避けた方向に重ねて飛ばす。逃がしはしない。

『こんるる~』

・・・ボクはいま瞬きをしたか?
 
ボクはいま目をそらしたか?
  
「なん・・・だと・・・!?」

彼 女 は 一 体 何 を し た  ! ? 

ボクは今風を撃ちだした。これは確定だ。瞬時に目の前に100発分くらいを出して撃ちだした。
ボクは今視線の先に彼女がいることを確認した。これも確定だ。
ボクは今確認した直後に目の前から後ろに吹き飛ぶ砂塵を確認した。
ボクは今一瞬彼女の体が消えたことを確認した。

ボクは今自分の後ろに彼女が居て、こちらを振り向き、首元に何かを突き付けていることを確認した!

汗すら流れなかった。いや、流す暇すらなかった。

意識が薄れゆく一瞬で考えることは考えた。ボクは何も悪くなかった。ただ―――

「おつるるですっ♡」

Aブロック7回戦勝者ァァァァ
 
 鈴原ァァァるゥゥゥゥゥるゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」


―ただ、相手が悪かった。


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基本的なベースは配信の妄想の流れに従い作成しています。
解釈違いとかあるかもしれないですがご容赦ください
配信すっごい楽しかったです。
今一番の推しのるるちゃんがラスボスになっていく姿に推しててよかったって感情が爆発しました。
全ブロックとても面白かった!
シリアスとギャグのA
エリーちゃん無双とシェリンのB
悲劇のさんばかと相撲と食戟と咎人に惨敗する女神のC
チャイカと緑仙即死とでろちーいちごちゃんの激熱なD
そして混沌と化す決勝からの全員主役は美しい流れでした!

発案の緑仙さん、リオン様、社さん、加賀美社長お疲れ様でした!

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