夕陽リリの見た世界


その世界ではある一人の女性に蹂躙され世界が破滅へと向かった。
その名は「鈴原るる」にじさんじトーナメントの覇者であり世界の覇者となった女性である。

経緯を話しましょう。
突如として現れた戦闘機械のような彼女はトーナメントで優勝しました。
すると強者を求める彼女は世界の人間に宣戦を布告し挑戦を受けるだけでなく自らあらゆる「強き者達」へ戦いを仕掛けていきました。
街のケンカ自慢とされる者、格闘家、軍人と戦闘に長けた者、
それだけではなく、権力者や為政者や宗教家のような所謂「動かす力の強い者」へも「武力による戦い」を仕掛け続けました。
中には罠や武器などで一度は彼女を斃せる人もいました。
しかし其のたびに

「もう一回」

と再度現れる彼女は自らを打破した相手をラーニングし更に強くなるという特性を持ち、どんな相手であれ最終的には倒されてしまうのです。
後者のような者たちは勿論彼女に傷をつけることも出来ず蹂躙され、世界の経済や外交も破壊されて行きました。
しかしこれまでの世界統一を目論んだ者たちと違い彼女は
”世界の統一でなく自らが戦うことのみを目的としていた”ため、
それに乗じて新たに掌握や統一を目論むものが現れたのですがその者たちも強き者と見做され彼女に駆逐される繰り返しでした。

結果として世界は混沌を極め、人々は争い勝ったものがまた戦い、タイミングが悪いとそこに彼女が現れ倒され、またそこに入り込もうとする者たちが争い、人口は減り世界は人がいなくなる終焉へのループを開始しました。
世界の人口は戻ってきた2018年から1%未満にまで減ってしまいました。
戦争の影響で工場や発電所なども破壊され世界の環境も再生不可能な段階まで陥りました。
―もうどうにもならない。その時時間遡行で世界を変えることを決意しました。

そして世界が混沌に陥る切欠となった日が訪れました。

実は何度も何度も何度も何度も何度も何度も戻って歴史改竄を行おうとしました。でも私の体質なのか世界は最終的に同じ歴史へと修正されてしまい正直私の心も俺かけていました。

ですが今回は最初の相手が違い、静先輩です。
初めての異なる道に私の心もいやがおうでも心に高まりが生まれます。

勝てなくてもいい、とにかく運命を変えるきっかけを作らなきゃ。

対峙し静先輩に囁く。鈴原さんを斃さなければ世界が終わる。人の消滅した世界が生まれる。と。

運命のバトンは託した。私はもう祈るしかない。

闘いは続く。しかし託した静先輩はアンジュさんに敗れました。
ですが運命は続いている。静先輩はアンジュに世界を託したことを私に伝えてくれました。
そして決勝ラウンド。
何度も見たメンツのラウンド。
鈴原さん、エリーさん、アンジュさん、樋口先輩。
メンツを見ると「今回もダメだった」と諦念の感情が強くなる。

1回戦、エリーさんが負ける。いつもの通りだった。
また、タイムリープまで待たなければならないのかと肩を落とさざるを得なかった。
始まる2回戦、

転機が訪れた。

「決勝ラウンド第二回戦、はz・・・」

煙が上がる。会場が騒然となり闘技場の二人は動きが止まり煙を見遣る。

「待ちきれなくてきちゃいました!初めての1対2面白そうなんで、やってみます!!!!」

闘技場の画面に移されるサムネイル、全ての人が画面に目を向け絶句する。先ほどまでのどよめきは水を撃ったように静まり返る。

決勝トーナメント乱入してみたっ!勝つまであきらめない!【Part1】

観客はまさかのイベントバトルに歓喜の声を上げる。無理もない、決勝まで残った実力者がここまで圧倒的な強さを見せつけてきた相手に共闘するのだ。見ていて面白く無い筈がない。
だが、私は恐怖でしかなかった。
もし二人とも負けたら結局はいつも通りなんだ、その可能性を秘めているのが彼女なんだ。と。

闘いは始まり、圧倒的な猛攻に押される二人。

祈る

祈る
 
祈る

眼を開ける。
絶望。
アンジュさんが倒れている。息はあるようだが出血が…嗚呼、嗚呼!

お願い樋口先輩、どうにか!どうにか!と強く祈る。力を持たない自分が憎い、圧倒的過ぎる力を前に祈るしかできない自分が憎い。
出来ることは樋口先輩が勝ってくれることを祈るのみなのだが、相手は不死のような輪廻能力を持つ鈴原さん、あくまで強いが普通の人間である樋口先輩ではいつまでもつのだろう。
不安しか、残らない。

刹那、樋口先輩がバランスを崩した。足に来ていたのだろうか、隙を見逃さなかった鈴原さんのパンチが樋口先輩の顔面に向けて撃ちだされる。
また運命は変わらなかった。長い時間の揺蕩いが訪れるのかと足の力が抜けその場に頽れてしまう。

その時だった。
先ほど敗れたエリーさんが手にした真新しい銀のお盆が鈴原さんの拳から樋口さんを護っていた。
間に合ったといった表情で彼女は声を上げた

「リリさま!話は凛さまから聞きました。助太刀致さざるを得ませんわ!」

光。
光!
光!!!

希望は繋がった!
破滅を回避するために私が蒔いた種が今!やっと芽吹いたんだ!
ライバーの皆が闘技場の周りに集まりだしすぐに戦える人達は闘技場へと足を進めて行く。負傷している人も側でリゼさんやリオンさんたちが回復魔法で治療を進めている。そして―――

「夕陽さん、私たちは皆でにじさんじ。あなたの言葉を疑う人なんて一人もいませんでしたよ。さ、全てを知ってるのはあなたしかいないんです。しっかりとその足で立って、皆の戦う姿を見て。未来を、変えるんでしょう?」

静先輩―――

そっと私の肩に手を載せてそっと私へとほほ笑んでくれる。ありがとう、ありがとうとしか言葉が出ない。
でも!云われた通り私しか先のバッドエンドは知らないんだ、回避する方法をわかるのは私しかいなかった。でも、今は皆がいる!
運命は変えられるんだ!

皆が自分の力を振り絞って鈴原さんに挑んでいき、傷つけることが出来た人、守りに徹する人回復に徹する人役割を分担して鈴原さんを削っていく。
だが、圧倒的なまでの攻撃で復活してきた皆さんも無事ではなく、一人、また一人と倒れて行きました。
ですが鈴原さんも目に見えて消耗してきていました、ここまで息を上げた様子を微塵も見せなかった彼女が肩で息をしている。しかしその顔にはまだ戦う嬉しさや楽しさを湛えた眼をして残った人たちを見ていました。

残った人たちが樋口さんとアンジュさんまで減ったところでした。
すこし回復して立ち上がった瞬間の樋口さんに気づき鈴原さんがここまででも最高に近いスピードで右ストレートを放ちました。
立ち上がった瞬間で防御の体制が取れない樋口さんは避けることも間に合わない様子で周りの人達の壁も間に合いそうになく、希望が潰えそうになった刹那、

「楓さん、私で隠さなきゃ、ね。」

「ほら、魔王様はお疲れですよ。早く満足させてあげてください。」

今までそこにいたかのように威風堂々と委員長がたたずんでいて、鈴原さんの右ストレートを透明の障壁で樋口先輩を護り、樋口先輩とアンジュさんに合流する用に促しました。

「アンジュさん、最後の一撃。かましたりましょう!」
「了解!私も全身全霊込めてブっぱなします!!」

「ウチが!」「私が!」

「皆が!」

「「にじさんじだ!!!!!!!」」


樋口先輩の金属バット、アンジュさんのヘルエスタセイバーが鈴原さんを貫き闘技場の壁へと吹き飛ばし叩き付ける。
崩れ落ちた鈴原さんはうつむいたようで反応がない。
ついに、ついに運命がかわっ―――

「フ ァ イ ナ ル ラ ス ト ア ン コ ー ル !」

私も、樋口先輩も、アンジュさんも凍りつく。
鈴原さんは笑顔で叫び、腕の力だけでその場から飛び跳ねた。

だが、

「あれっ?」

鈴原さんは着地してもその場に立ち留まることはできなかった。
もう、限界に達したということだろうか。

「立てませんねぇ?これは、私の・・・負け?なの?かな?」

これまでこのようなことはなかったのだろう。立ち上がれないことに疑問を呈して尚も立ち上がろうとしている。だが鈴原さんの足は言うことを聞かないようで何度も立とうとしては倒れることを繰り返した。
それが10回ほど続いた後だろうか、立つことをあきらめ仰向けに寝転び彼女は口を開いた。

「こんなにいっぱい沢山の人と戦えて、私幸せでした!」

鈴原さんが、満足した。
世界が、運命が変わった。
私は崩れ落ちた。絶望じゃない、感謝と、明るい未来への希望が溢れて立っていることはできず、涙が止まらない。あまりに嬉しくて、有りがたくて!

静先輩が小さく「よかったね、変わったよ。」と囁いてくれた。
その顔には涙があふれている。そして―
「また、会えるよね。ううん、また会おうね。リリさん」

そうだ、運命は変わったのだ。破滅の未来線に私は入た。
希望の未来線に私は・・・

「きっと、会えますから。待ってくださいね。静さ――」

リリさんは言い切る前に消滅してしまいました。彼女が作り出した世界線に彼女は居なかったのでしょう。
トーナメント表も私のブロックだけ2人のブロックで、リリさんの名前はありませんでした。彼女は自分がいない未来が来たとしても、この瞬間からを生きる私たちの幸せを願った。それに私たちは答えなければならない。これからも、バーチャルライバーとして、『にじさんじ』として。

さて、司会のグウェルさんに勝者を宣言させないと締まりませんよね。私はコテンパンに叩きのめされた彼をさらにたたき起こし耳打ちで宣言内容を吹着込みました。

「しょ、勝者!!!!にじさんじィィィィィィ!!!!!」


割れんばかりの拍手と共に闘いが終わり、鈴原さんも満足し戦いにあふれることは今のところ起きていません。
リリさん。あなたが紡いだ世界は綺麗に花を咲かせています
にじさんじはこれからも発展していくでしょう。私も先達、1期生として頑張っていきますからね。
そっと誰もいない闘技場に百合の花を添えて私はその場を後に―

「静先輩」

「平和な未来でもやっぱり皆と一緒に活動したくって、戻ってきちゃいました!」

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長くなりました。リリちゃんの視点でタイムパラドクスシナリオを描きたかったのですが稚拙ですが必死こいてまとめました。

介錯違い等あるかも知れませんがそこはご容赦ください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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