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アリス味

不思議の国のアリスは世界で最も有名な童話……と言っても過言ではないほどの知名度です。また、個性豊かな登場人物、トランプや紅茶と言ったお洒落なモチーフ、何処か怖さも感じられる世界観から、他の童話とは一線を画す人気を集めています。体感の話になりますが、現在童話モチーフの作品を見てみても、アリスをモチーフにしているものが一番多いような気がします。

私も漏れなく、そういったサブカル関連から不思議の国への魅力にのめり込んでいったわけですが、どういう訳だか段々と「原作至上主義」と呼ばれるアレな存在へと進化を遂げてしまいました。大人になるって悲しい。

とはいえ、じゃあ原作とモチーフ作品の間で自分が感じている温度差って一体なんだろう。私には一つだけ、これなんじゃないかな、と思うことがあります。

「意味なし」

なんじゃそりゃって話なんですけど、原作のアリスって内容がとにかくはちゃめちゃなんですよ。考察とかは多分好きなだけ出来るっちゃ出来るけど、基本的にナンセンス。ぶっちゃけ駄洒落ばかりです。

私の考える「アリスらしさ」は、この意味なし――ナンセンスに集約していると思っています。ただ「意味の無い話」を作り、更にそれを市場に出し、かつ面白く作るなんて難易度HELLクラスにもほどがあるので、正直自分が「これこそアリス!!」って思う作品が少ないのは、仕方が無いかも(そもそも非ナンセンスであっても、面白いアリスモチーフの作品は沢山ありますしね)。

自分がこのあたりの言語化に成功したのは、ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』という映画を観たことです。

共産主義時代のチェコで作られた映画なので、多分色々な比喩表現があるんだろうというのは知っていますが、表面のシナリオを見ただけだと、淡々とアリスが夢とも悪夢ともいえない不思議な空間を進んでいく、という感じで奇妙な映像が無ければ、正直途中で寝てしまうほどにストーリーラインは弱いです。このストーリーラインが弱いのに、何故か惹きつけられてしまうところに凄くアリス味を感じました。


日本のサブカル内でアリス味を感じたのは、アニメ『戦国コレクション』の8話です。

このアニメはソーシャルゲーム『戦国コレクション』(2023年現在サービス終了)が原作となっているのですが、かなり変わった作りがされていて、ストーリーは大筋はあるものの基本オムニバス形式で、毎回主役が変わります。また、毎話なにかしらのパロディが仕込んであるのも特徴です。

豊臣秀吉ちゃんが主役の8話は、先ほど紹介したヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』を彷彿とさせる演出が一瞬だけ差し込まれています。ストーリーの内容は地下の世界に来た秀吉ちゃんが米の救世主として麦との戦いに巻き込まれる……的な話なのですが、いかんせんカオス過ぎて、ストーリーなんてあってないようなものです。こんな挑戦的な作品を原作付きアニメでやるの、尖り過ぎているだろ。

軽い余談なのですが、自分が「アリスらしさとはナンセンス、つまり意味なしである」という結論に辿り着いたとき、真っ先に思いついたのはこの谷山浩子の『意味なしアリス』という歌でした。やっぱこの人、凄すぎるな……。



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