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【初心者投資家の読書(7)】つみたてNISAはこの8本から選びなさい

「世界の人口が増え、経済が成長する限り、長期投資は負けない」

初心者の率直な感想


今回はお得な制度【つみたてNISA】に絞って解説をしてくれている本です。

ここまで読んできた本で、

・長期投資前提で積み立て投資を行う
・米国株や世界株式など、日本株だけにとらわれない投資を行う
・個別銘柄の取引ではなく投資信託を中心とした投資を行う
・「iDeCo」や「つみたてNISA」などお得な制度は絶対に利用する

といった自分の投資の最低限の方向性が固まってきました。

そんな中で、これまで読んできた本の中でも何度も登場した「つみたてNISA」という制度について改めて深掘りするためにこの本を手に取りました。

つみたてNISA
投資信託の積み立て投資を前提にした非課税制度のこと。
通常、投資信託や株の利益に対して約20%もの税金が引かれるが、専用の口座で金融庁がお墨付きの投資信託を積み立てした時、値上がりして出た利益に最長20年税金がかからないという制度。一年に利用できる額は最高で40万円までと決まっている。

著者がファンドマネージャーで「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」、「セゾン資産形成の達人ファンド」の運用・販売していることから宣伝的な部分も一部見られたが、初心者に向けてつみたてNISAの概要だけでなく、選定対象などとても分かりやすく解説されていました。

またこの本では、著者の選択基準でスクリーニングした中から、8本のファンドを詳細なオススメ理由とともに紹介してくれている。

さらに「株・FX・仮想通貨などと同じように、投資信託も難しそうで、怪しそうな気がしてしまいます。どのように考えたら良いですか?」「お得な制度がいろいろあるようで、何を選べば良いのかわかりません」「ほったらかしで良いのでしょうか。」といった初心者が抱きやすい質問にも丁寧に答えている。


この本のマイナスポイント

ある程度投資に詳しい人が新たに得られる知識は少ない。

著者がこれまでのようにブロガーではなく、投資信託のファンドマネージャーの方なので、一部宣伝?と思われるような部分もあった。

・つみたてNISAだけで今後の資産運用を考えているなら、銀行や証券会社ではなく、インターネット証券やセゾン投信のような投資信託を直接販売しているところに口座を作るのも一手だと思います。
ちなみにセゾン投信は投信運用会社なので、他のいろいろな商品を販売している販売金融機関のように、さまざまな種類の投資信託や、外国債権、仕組債といった金融商品を扱うことはできません。直接販売しているのは、あくまでも自分たちが運用している投資信託のみです。
・ファンド・オブ・ファンズという形態は、実は極めて理にかなった、素晴らしい仕組みです。
セゾン投信が運用している「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」も、「セゾン資産形成の達人ファンド」も、両方ともファンド・オブ・ファンズの形式で運用していますし、国際的にもメジャーな形式。


作者がアクティブ型の投資信託を販売しているからかは分かりませんが、インデックス型とアクティブ型の違いに関して意図的に触れられていない可能性があります。

【コラム】
投資信託には大まかに「アクティブファンド」と「インデックスファンド」の二つがある。

アクティブファンド
プロ(人)が株や債券を選んで買うものをいい、アクティブファンドはプロがリサーチして運用するため人件費がかかり手数料が高くなる。

インデックスファンド
インデックスファンドは日経平均やダウ平均といった指標に連動する投資信託のことをいう。インデックスファンドは指標に沿って機械的に買うだけなので人件費が少なく手数料も安い。プロが運用するアクティブファンドの平均がインデックスファンドに勝ったことはほとんどない。

著者

中野晴啓さん
1987年株式会社クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。クレディセゾンインベストメント事業部長を経た後、「長期運用できる投資信託を開発して、世の中の人に本物の投資を知ってほしい」という信念から2006年セゾン投信株式会社を設立。現在では、「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」「セゾン資産形成の達人ファンド」の2本の長期投資型ファンドを運用、販売し、預かり資産は2400億円を超える。2014年には、日本郵便株式会社と資本・業務提携。全国各地で年間150回以上の講演やセミナーを行い「つみたてNISA」や「国際分散投資」の重要性を伝えてきた。公益財団法人セゾン文化財団理事、一般社団法人投資信託協会理事。


内容紹介(Amazonより)

つみたてNISAがはじまって1年。
銀行は儲からないので教えてくれませんが、

・税金がおトク
・金融庁が決めた条件をクリアした投資信託だけしか購入できない
・1万円以下などの少額でできる(証券会社によっては100円から! )

と、投資初心者にはいいことづくしな制度です。けれど、すでにその厳しい条件をクリアした投資信託は160本以上あり、どれを選んだらいいかわからない、という声が多いのも事実。

そこで前著『 『投資信託はこの9本から選びなさい』で、販売されている投資信託3000本以上ある中から長期投資にぴったりな投資信託をチョイスし、その本がベストセラーになった著者が、今回はつみたてNIS購入できる160本の投資信託から、本当に買っていいと思われる8本を紹介。

つみたてNISAで選ぶべき投信の条件とは、
●世界へ分散して投資する
●日本株は入っているけれどの比率は1/3以下
●為替ヘッジなしのもの
●純資産総額が50億円以上のもの
●「ターゲットイヤーファンド」は外す
という条件でスクリーニング。

なぜこの条件が必要なのか、それは本書を読めばわかります。また投資信託やNISAの仕組みも、基本から図解で解説。だれでもわかる、ためになる内容になっています。

勉強メモ

インフレに打ち勝つためにも投資をしておいた方が安心。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」の最重要課題は「デフレからの脱却」。現状なかなか目標である消費者物価指数の2%上昇には届いていないが、何が起こるかはわからない。しかも、アベノミクスでインフレ率が上がらないのは、日本経済が恒常的な需要不足だからで、需要が生まれなければ経済は縮小に向かい、やがては衰退を前提とした悪性のインフレの時代がやってくるかも。
インフレとは、物の値段が上がっていくこと。物の値段が上昇すれば相対的にお金の価値が下がる。このリスクに備えるため、インフレに強い株・金・不動産などの資産を自分の資産に組み入れる必要あり。
日本の財政赤字は世界的に見ても最悪の水準。現状は日本国債を大量に発行しても日本国内で資金調達ができているので、日本国債の信用力が悪化する懸念は少ない。しかしいつかは限界が訪れる。日本国債の信用力が低下し、円が売られ、円安になり、海外から輸入される物の国内での価格が値上がりする。
世界の人口が増え、経済が成長する限り、長期投資は負けない
日本の人口は減っていても、世界の人口は増加傾向をたどっている。人間は欲望を持った生き物なので、人口が増え続ける限りは経済も成長し続けると考えられる。
分散投資
つみたて投資による「時間の」分散投資と、資産(アセットクラス)の分散投資の2つがある。

大きく株価が下がったところで大量に買う自信があれば、誰でも一括投資をするが、実際にそんなタイミングで買える人はほとんどいない。積み立て投資によって買い付けのタイミングを分散させる。積み立て投資は毎月買うため、値段が高いところで買わざるを得ないタイミングもあるが、定期的に同じ金額で同じものを積み立て投資していけば、値段が高い時は買う量を抑えられ、値段が安い時は多くの量を買うことが可能。

資産分散は、株式だけではなく、債券など自分がいいと思う資産クラスを複数組み合わせて投資を行う。
つみたてNISAの注意点
1.非課税枠が余ったとしても、それを翌年に持ち越すことはできない
2.非課税枠は消化されるだけで、復活はしない。
3.分配金を再投資した分も新規の買い付け金額にカウントされること
4.投資対象となる商品が限定されている
6000本以上ある投資信託の中で「つみたてNISA」で買えるのは162本しかない。これは金融庁がお墨付きを与えた商品しか「つみたてNISA」では買えないから。
「つみたてNISA」はなぜ20年もの長期運用なのか
1985年以降の国内株式・外国株式・国内債権・外国債権という4つの資産に同額ずつつみたて投資をした場合、保有期間が20年の資産のリターンは元本を割り込むケースが一度もなかった。
つみたてNISAの対象となる投資信託はどの銀行・証券会社でも、全ての商品を扱っているわけではない。だから金融機関ありきで始めるのではなく、欲しいと考える投資信託を扱っている金融機関がどこなのかを考えなくてはならない。
つみたてNISAの口座で買うならファンドを一本にすべき。解約してもその枠を再び使うことができないという点を考慮すると、リバランスができない。最初から複数資産に分散投資するバランス型のファンドを選ぶべき。
投資信託の運用スタイルは「指定インデックス投資信託」と「指定インデックス投資信託以外の投資信託」の2つがある。インデックス運用はあくまで市場平均への連動を目指す偏差値50の運用。インデックス運用以外=アクティブ運用は平均プラスαの運用成績を目指して運用される。

アクティブ運用は「ベンチマーク」と呼ばれる目標値を設定、それに勝つ運用を目指す。(日本株式のアクティブファンドであれば、日経平均株価や東証株価指数)。日経平均が10%値上がりすれば、それを1%でも上回るように運用する。またベンチマークがマイナスになった場合はマイナス幅がベンチマークよりも小さければ、ファンドマネージャーとして評価されることになる。
ファンド・オブ・ファンズ
株式や債権の代わりに、様々な投資信託を組み入れて運用するタイプの投資信託。高い分散投資効果が期待できる。投資信託を組み入れて運用する投資信託であるため、運用管理費用などが二重で取られるイメージがあるが、中には様々な投資信託に投資していながら、運用管理費用率をできる限り抑えているものもある。

ファンド・オブ・ファンズの3つの注意点
・運用管理費用率を無意味に割高に設定していないものを選ぶ
・全く意味のない分散投資を行っているファンドに注意
・成績の振るわなくなった投資信託の見直しを行っているか
資産運用のリターンの約8割は、銘柄選択ではなく、資産配分で決まる。
国際分散投資を行う場合、比率を決める基準はGDPによる基準と株式や債権市場の時価総額による基準の2つがある。GDPの規模で決めようとすると、どうしても新興国への投資配分比率が高くなってしまう。新興国はどんどん経済が成長してGDPが高くなっている。それに対して新興国の資本市場は脆弱。運用は市場を通じて行うもので、実体経済に直接資金を投じるわけではないことからも、市場の時価総額で判断すべき。
ファンドの選択基準
・国際分散投資
・日本株比率は3分の1以下
・日本株が入っている
・為替ヘッジなし
・純資産総額が50億円以上のもの
・ターゲットイヤーファンドは外す

「投資信託」の仕組み

投資信託は大勢の人からお金を集め、様々なものに投資、その運用によって得られた収益を、個人投資家に対して還元するという仕組みの金融商品。
投資信託には3つの会社が関わっている。投資信託の販売窓口の「販売金融機関」、投資信託を設定し、運用の指図を行う「投信運用会社」、組入資産の管理や売買発注を行う「信託銀行」の三者。
運用管理費用の高さと成績の良さは、まったく関係がない。運用管理費用率の高いファンドが、常に高い運用実績を上げることができるという保証はどこにもない。優秀なファンドマネージャーでも、常にトップクラスの運用成績を維持できる人はいない。過去にノーベル経済学賞を受賞した人たちが中心となって構築した運用システムを持つヘッジファンドが、通貨危機の影響で破綻したこともあった。
年5%のリターンが期待できる2つの投資信託があったとする。投資信託Aの運用管理費用率は2%、投資信託Bは1%だったとする。そして100万円を30年間運用すると考える。Aは242万7262円である一方、Bは324万3398円になる。運用でリターンを1%向上させるのは血の滲むような努力が必要だが、コストを1%削るのは、買うときにコストを考えて選べばいいだけ。
「別に年2%の運用管理費用率でも、運用が好調で年30%のリターンが得られれば、1%の差に目くじらを立てる必要はどこにもない」
年30%のリターンが確実に得られるなら1%の差は確かに大したことがない。でも、長期で常に30%のリターンが得られる保証もなければ、高いリターンが得られるファンドは高いリスクをとって運用しているため、マイナス30%になる可能性もある。
「信託財産留保額」はコストであってコストではない。投資信託は購入するときに「購入時手数料」がかかるが、「解約手数料」をとるものは少数。解約時にかかる手数料として「信託財産留保額」があるが、これは販売金融機関に行くのではなく、その投資信託を保有し続ける投資家に残される。
解約注文をすると、投信運用会社が投資信託に組み入れられている株式や債権などの一部を市場で売却し、必要な現金を作る。その際にかかる手数料を負担するために「信託財産留保額」が存在する。
購入時手数料が取れず、かつ代行手数料も低率にせざるを得ないため、つみたてNISAは販売金融機関にとってうまみが少ない。
通常、投資を行うときに、きちんと知っておくべき要素である顧客サイドの情報が存在する。どこまでリスクを負えるのか、どういう運用をしたいのか、年収がいくらなのか、どのような資産を保有しているのかがその要素。だが金融機関は顧客にあった投資信託を勧めるのではなく、とにかく自分たちが今、売らなければならない商品を勧めてくる。
・テーマ型ファンドは買ってはいけない
テーマ型ファンドとは、その時々で話題に上っているテーマをファンド名に冠し、そのテーマに関連性の強い銘柄を組み入れて運用する投資信託のこと。例えば「IT関連銘柄ファンド」であれば、コンピューター会社、家電、電話会社、半導体メーカーなど、ITのハード面・ソフト面に関連する企業の株式のみを組み入れて運用する。株式市場において、そのテーマが一番注目を集め、株価がピークに達しようとしているときに新規設定されがち。
・毎月分配型ファンド
毎月決算のある投資信託を購入し、分配金が毎月受け取れるというもの。低金利時代ではお目にかかれないような好配当の分配金がもらえるという触れ込みだった。ただしこの投資信託の分配金の実態は利息ではなく、運用がうまくいかないと元本から取り出して分配金が支払われる。金融庁の平成28年度の金融レポートにおいて「複利効果が働きにくいことに加えて、元本を取りくずしながら分配される場合には運用原資が大きく目減りして、運用効率を下げてしまう」ことが問題点として指摘されている。

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