見出し画像

チテキフクガン思考法とは

今まではWEBCMの紹介をしてきましたが、今回は本のご紹介を!

苅谷剛彦さんの「知的複眼思考法ー誰でも持っている創造力のスイッチ」について自分なりにまとめていこうと思います。

まず、この本は以下のような方におすすめです↓

・自分なりの考えかたやものの見かたを身につけたい方
・「自分の考えをはっきりことばに表して相手にわかるように伝えられたら……」と思ったことがある方

人の意見を聞いて最初は疑問や反対に思っていたはずなのに、途中から分からなくなりいつの間にか賛成側に回っていた経験はありませんか?

内容はそうでもないのに強い言い回しや堂々とした態度にあっちが正しいと思い込んでそのまま突き進んでしまった経験はありませんか?

私はあります。恥ずかしながら、今でもそういう節があります。

複眼思考法とは
ありきたりの常識や紋切り型の考えかたにとらわれずに、ものごとを考えていく方法(P27)

この本を最後まで読めば、「常識を疑う」意味と重要性、論理的に自分の考えを組み立てる方法がわかると思います。ただし、できるようになるかどうかは別の話。

論理的に考えるというのは習慣化されて理解して身につくものです。1年ぶりに取り出して、忘れた頃に読み返すことが重要だと気付いたことは自分の体験談からお伝えしておきます。

第1章 創造力読書で思考力を鍛える

本は考え方のさまざまなパターンを身につける上で有益です。他のメディアと比べて受け手のペースでメッセージを追うことができるため、文章を行ったり来たりしてじっくり考えることができます。「創造力読書」の方法は以下の通りです。

<方法>著者と対等な立場に立ち、批判的に読む
①著者を簡単には信用しないこと
②著者のねらいをつかむこと
③論理を丹念に追うこと、根拠を疑うこと
④著者の前提を探り出し、疑うこと

文章を書く人は目的やねらいが必ず存在します。筆者はこのときのチェックポイントを「読んだ印象が内容ではなくスタイルに影響されていないか」「論理の飛躍はないか」「根拠が薄く支持されない意見はないか」「反対意見を完全に否定できているか」など20個ほど挙げています。

また、本書の中では社会に溢れる実際の文章を用い考えることができ、筆者による解説がされます。こんなにも自分は別の要因に引っ張られていたときっと驚くことになるでしょう。


第2章 考えるための作文技法

第2章では論理を明確に伝える作文と反論の書き方について解説されていますが、作文の書き方は割愛し、ある立場の人の意見に自分の見解を述べるための練習方法のみ紹介します。

<方法>ひとりディベート
①自分で仮想の立場を複数設定、それぞれの立場からの批判や反論を試みる
②反論を書くことで書き手の前提が見えてくる
③反論や批判は頭で考えるだけでなく、必ず文章にする。文章にすることで、論理の甘さや第三者的にとらえることも可能になる


第3章 問いの立てかたと展開のしかた

疑問を持つことがあっても、答えを求めず放置していれば「考えること」には繋がりません。「考える」ためには、問いのブレイクダウンという方法があります。

問いのブレイクダウンとは                         最初の大きな問いを複数の小さな問いに分けていって、それぞれの問いに答えることが最初の問いへの解答になるようにしていく方法(P180)

実態を問う「どうなっている」より、考えることを要求する「なぜ」で進んでいく方が深く考えることにつながります。

「なぜ」は自分の想像をはたらかせ因果関係や仮説を立てる必要があるのに対し、実態は調べたら答えが出てしまう正解探しにならざるを得ないからです。

ただし、「なぜ」に行き詰まったら「どうなっている」を組み合わせて進めていくのは問いの分解になり効果的な場合があります。

具体例:「最近の大学就職はなぜ難しいのか」→学生を分解→「男子学生と女子学生とでは、どのように違うのか」→結果→「なぜ、女子のほうが就職が難しいのか」→女子を分解→「大学や短大のタイプによって、女子の就職難にはどのような違いがあるのか?」→結果

つまり、最初の問い「大学就職は難しい」に対する答えとして、大学全てが難しいわけではなく、大学によって違いがあるという新たな視点でてくるかもしれない、ということになります。

問いを分解するときは、どんな要因の影響があるのかを見当をつけることが大切です。また、このとき原因だと思われている要因が、じつはあまり重要でない場合(疑似相関)には注意しましょう。疑似相関についてはこう述べられています。

原因以外の要因が影響を及ぼしていないかどうかに目を向ける。他の社会や組織、違う時代との比較が有効なヒントを与えてくれることがある。(P216)


第4章 複眼思考法を身につける

普段私たちは抽象的な概念をよく理解せず使ってしまいがちが、これは人々の考えを止めてしまうマジックワードと呼ばれるものでとても危険です。

例えば、「構造」「個性」「偏差値教育」「人権」「IT」などが代表的ですが、他者と話したときその概念が一致するのはどのくらいでしょうか。

このような言葉はひとり歩きしがちで、問題として扱われることも多いです。しかし、現状を見るだけでは本質的な問題の解決には至りません。複眼的に捉えるためにはその関係から考える必要があります。

その方法として、○○化とプロセスとして問題を捉える(主語にしない)ことだと述べられています。 

偏差値教育が批判された時代、偏差値で生徒を切るのは良くないとして「偏差値自体をなくすべきだ」という意見がありました。

しかし、実際に偏差値をここまで重視したのは教師や生徒、親です。変えなければいけないのは生徒を取り巻く関係かもしれないのに、「偏差値」だけがひとりで進んできます。果たして偏差値をなくせば問題は解決するものなのでしょうか。


第3章の「なぜ」の問いと同様、「ある問題を立てることで、誰が得をするのか、誰が損をするのか」といった問いは自分の視点を持つ重要な方法です。以下はそのステップになります。

①「なぜ、それが問題なのか」に着目することによって、ある問題を問題と見なす視点は何かをとらえる。
②同じようなことがらでも、問題にする視点によって問題のとらえかたや問題のしかたが違ってくることに注目する。
③ある問題がクローズアップされることで、隠れてしまう問題がないのかに目を向ける。
④さらに問題の文脈に目を向けるための方法として、
(a)ある問題を立てることで、誰が得をするのか損をするのかに目を向ける。
(b)当該の問題がどうなるか、を考える


簡単に書いてきましたが、気になった方はこちら。


新たなクリエイティブには常識を疑う力が必要だと思います。

しかし「当たり前にある」現状を捉えなおすのは想像以上に難しいもの。

ヒットを生み出している人たちは新たな時代を掴む感覚が長けているのはもちろん、普通を普通だと思わない習慣が土台となっているのでしょう。


私も、スタート地点に立ちたい。