無宗教者の信仰

あたいはこれといって特定の宗教を信仰している訳ではない。
強いて言えばアザトースを崇拝している程度である。

あたいもそうなのだが、この国には無宗教の人間であっても、宗教と関わり深い行事を色々と執り行う何とも不思議な風習的な何かがある。
年末年始の一連の流れは最たるものだろう。
クリスマスを祝ってプレゼントを投げつけたかと思えば大晦日には蕎麦を啜りながら除夜の鐘を聞き、年が明ければ神社に初詣に行く。
一体お前らはどういう信仰をしとるんだと。
色々な人がよく言っている事で、耳にタコができる程その手の話を聞いた人も少なくないのではなかろうか。

一方で、無宗教である事とは別に無神論という考え方がある。
そもそも崇めるべき神など居なければ、人間の存在を司る事ができるような高次元の存在も居ないという考え方だ。
そういう考え方もなかなか面白いだろう。

自分は別に相手が有神論者であろうが無神論者であろうが一向に構わない側の人間で、別にどっちと喧嘩する気も無ければどっちと仲良くする気もない、一番危険な立ち位置にいる人間なのだが、どちらかと言えば無神論者の話を聞いている方が興味深さで言えば一枚上であるように感じる。

これまで自分が出会ってきた中で言えば、無神論者にも色々なタイプがいる。
最も分かりやすいのは、”非科学的なもの”全てを一切認めないタイプである。
つまりは、神も居なければ幽霊もおらず、天使も悪魔も存在しないという考えだ。潔くて大変によろしい。
この手のタイプの人に出会った時、あたいが必ず聞く事があって、それが「では宇宙人はいると思うか」という質問である。
この質問をすると返ってくる返事は大抵の場合次のどちらかで、「いるわけないだろアホか」というものか、「いないとは思うが居たとしても不思議ではない」というもののどちらかである。
有神論者に同じ質問をすると、これら2つの返事とは別に「いると思うよ」というオーソドックスな答えから、世界の深淵か何かを覗き見した不埒な輩でしかたどり着けないような異次元の返答まで返ってくる事があって大変愉快なのだが、少なくともあたいが出会った中で言えば無神論者にこの質問をすると先に述べた2つの答えのどちらかが返ってくる。
これは個人的に重要な違いだと思っていて、この2つの間には「自分で観測するなどして、あると確実に言える物しか信じない」か「科学的に可能と言える物しか信じない」かの差があるように感じられる。
もっと雑に、「自分の目で見た物以外認めない人」と「科学的な説明がつく物以外認めない人」と書いてみれば大分話が違っていると分かると思う。
個人的にはこの2パターンはあまり変な事にならないイメージがある。
一応、前者の目で見た物以外信じない人については、話をしたり連絡をしたりする時に少々面倒臭いやり取りが必要になる場合があるかもしれないが。

それとは別に、「神は居ないと思うけど妖怪はいるかもしれない」とか言い出す人もいる。つまりは、「信じている存在のグループに神が含まれない人」である。
個人的に話を聞いていて一番面白いのはこのパターンの人なのだが、このパターンに当てはまる人は何か知らんがわがままな人が多くて話をするのに苦労する事もしばしばあるのが悩みのタネである。
ちなみに、このパターンで過去出会った中で最も興味深い考え方をしていた人がいて、その人の思想というのが「天使はいるけど神はいない」という物であった。
その人曰く、「天使というからには天の使いである事は間違いないと思うけど、あくまで天というのは運命のような何かであって、神とはまた別の物だと思ってる」という事であった。
「運命は神と無関係と考えているって事かな?」と聞いた所、「運命はその通り、生まれた時にどうなるかが決まっていて、誰も変える事ができない物だと考えている」と答えてくれ、続けて「その変えられない天、すなわち運命を正しく辿るために何かちょろまかしをする天使みたいな存在はいるのかもしれないけど、既に決められた運命を変えるような、それこそ神みたいな物は存在しないと思ってる」と言ってくれた。「ちなみに、その運命は誰が決めてると思ってる?」と聞いたら、「くじ引きみたいな物であって誰が決めてるとかそんな物はないと思う」とも答えてくれた。なかなかに楽しい考え方だと思う。

有神論にも色々な考え方があるし、無神論にも色々な考え方があると思う。
ただ、その色々な考え方によって人はいい具合に前を向いて生きていられる所もあるし、ちょっちキツイなあと感じるような所もあるんだと思う。
色々な物の考え方はあれど、人に無理やり勧めるでもなく、自分が生きていくため、その上で人が生きていくための標になれば良いのかなぁ、なんていう風に、さっき眠くてあくびした時になんとなく考えたのでここに書いてみた。

特にオチらしいオチは別にない。許せカツオ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?