うつぼ舟について
うつぼ舟に惹かれてやまない。その話。
まずうつぼ舟とは、虚舟(うつろふね)、空穂舟(うつぼぶね)とも呼ばれる、架空の舟のことだ。
私は「うつぼ舟」という響きが好きだな。
各地の民俗伝承や古事記にも記述がある、簡単に言うと潜水艦のような、中身ががらんどうの中空構造になっている舟のことで、見た目のイメージからオカルト界隈だとUFOだ、と言われている。空を飛んだという記述はないけど。(好きな発想の飛躍だ)
だいたいうつぼ舟には異国の女が乗っていると書かれていて「誰かが乗っている」ということに心が反応する。
(先に言っておくと空飛ぶうつぼ舟のイメージ、UFOのフォルムや形状には興味があるけど、宇宙人とかには興味ないです。)
※「うつぼふね わたしは まれびと」
2017年 木製パネル、綿布、アクリルガッシュ、岩絵具、アルミ箔
うつぼ舟の物語に影響を受けて描いた作品。
最初は古事記で蛭子(ひるこ)が乗せられて流されちゃう舟とか、謡曲だったら鵺が乗せられて流されちゃうヤツくらいの認識だったけど、だんだんと気になっていった。(と思う)
なんで惹かれるのか自分で納得したくて、人に話を聞いたりしてだんだん興味が固まっていったと思う。
金色姫伝説では養蚕との結びつきから完全に「繭」のイメージがついたし、
常陸国に漂着したとされるうつぼ舟の伝承、曲亭馬琴の『兎園小説』の『虚舟の蛮女』…
柳田國男は たまのいれもの、神の乗り物だとか、少彦名命の乗っていたかがみの舟は荒ぶる波を掻き分けて到着したもの…だとか言ってたし、
折口信夫はうつぼ舟は、他界から来たモノがこの世の適した姿になるまでの間入っている必要があるためのいれもの…。(まさに繭のよう)
と言っていた。
(うまくまとめられないのでWikipedia参照)
澁澤龍彦の東西不思議物語でも「ウツボ舟の女のこと」でうつぼ舟に乗ってきた女性のことを書いている。
古事記だと少彦名命が乗ってくるカガミの舟もかわいいな。(小さい神が蛾の服を着て、豆の鞘のような舟に乗ってくる…可愛いじゃないか)
番外編としては、諸星大二郎の「うつぼ舟の女」(これはただのファン)
調べると本当に面白い。
だいたいうつぼ舟は海の彼方とか異界…「あちら側」から、私達が生きている世界「こちら側」に何をもたらすかは謎だけど、なんらかの役目を持つ、漂着するモノとして描写されている。
もしくは「こちら側」から「あちら側」、他の世界に追い出すために流す…というパターンもある。
でも、これは勝手な妄想になってしまうけど、私は、「選ばれし人としてうつぼ舟が迎えにきて欲しいな…」
「この世界からどこか新天地へ運んでいってくれないかな…」
「行く先の新天地にふさわしい姿になるまで、うつぼ舟に入って旅したい…」
そんなことを結構真剣に考えたりしていた。
やや生きるの辛くて真面目に現実逃避をしているのかもしれない。
なので、だいたいお迎えのうつぼ舟を待ち望んでいる、新天地を目指す、憧れる、そんな絵を描いている。
それに合わせて海を行くうつぼ舟、空飛ぶうつぼ舟。
平たく言うと絶対に迎えにこない、選ばれもしない、そんな自分を笑ってしまう気持ちもある、だから描いてる。
随分前に展示の表題を「たま まゆ うつぼぶね」(漢字で書くと「魂 繭 虚舟」)にしたことがあったけど、まだそのテーマにずっとずっと関心がある。気持ちの行先は、真剣な現実逃避は何と繋がっているんだろう、まだわからない。
でも描くべき「なにか」はあると強く思っているし、まだ描く必要を感じている。
言葉にした以上の「色々」があるだろうから文章にする。
どんなに抱いた興味を話しても作品のネタバレになりようもない。意味不明すぎて。
(最後にもう一度言っておくとうつぼ舟の形と連動してUFOのフォルムや形状には興味があるけど、宇宙人とか陰謀には興味ないです。)
※画像上↑「うつくしいほし」制作年2016年
※画像上↑「歓迎光臨虚舟」制作年2015年