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Netflixでアートとは何かについて学んだ話。

Netflixに「アート・オブ・デザイン」という番組があるのをご存知でしょうか。

唐突ですが、この番組について語らせていただきます。
まだ1話しか見てないのに語るなよと言われそうなんですが、語らずにはいられない程感激してしまいまして、とりあえず1話目についてだけでも語らせてください。

まず、私はアートカフェATELIER CICAで店長として、様々なアーティスト達と日々働いておりますが、特にアートに造詣が深いというわけでもなんでもなく、まだまだ勉強中の身なのです。

そんな私がNetflixで見つけたこの番組。
初回エピソードのタイトルには、世界的な有名アーティスト、オラファー・エリアソンの文字。

彼の作品のうち日本で有名なのは、金沢の21世紀美術館にある作品でしょうか。

大学の時に授業で彼の作品についてサラッと触れたことがあり、代表的なものをいくつか見て、レポート(その場しのぎのものではあるけれど)も書きました。
が、正直、文字情報だけで仕入れた作品の内容は、よくわからないの一言に尽き、「環境とか自然とかを取り入れたアート作品を作る人」という滅茶苦茶に漠然とした印象だけを持っている状態でした。

彼の作品がなぜ世界的に有名なのか。
知らなきゃいけない、という使命感に駆られ、再生ボタンを押す真夜中1時過ぎ。

オラファーさんのインタビューや解説を交えて、これまでの作品や、現在製作中のもの、彼のルーツなどが語られていきます。

初めの数分は、
やっぱりよくわかんないなー
と、ぼんやり見ていたのですが、

「色を消す照明」が登場した辺りでガツンと来ました。

すごい。

ある黄色い光の照明を点けると、その空間の中にあるもの全ての色が消えるのです。モノクロの世界になる。
理屈は簡単で、色というのは物体に反射した光なのですが、その黄色いライトは全ての色の光を吸収し、何も跳ね返さない。
(どういうこと??となった方は、「色」について書いたこちらの記事を合わせてどうぞ▶︎『本当は赤くないかもしれないリンゴの話』

真っ黄色の世界の中で、白色のライトを照らした瞬間、そこには虹色の世界が存在していたことが解ります。

一瞬で、「世界の見え方」を変えてしまう。
これがアートの力なんだ。ゾクゾクしました。


例えば街の中に滝を造ること。
建物の中に太陽を造ること。
部屋の中に虹を造ること。
道路の真ん中に、北極の流氷を持ってくること。

これらのすべてが、「そういうこと」なのです。

滝や太陽、虹に氷。
その物について、私たちはどんなものか、良く知っている。

ところが、それが本来在るべき場所ではない所に唐突に現れるだけで、見え方が全く変わるのです。
道路に置かれた流氷に触って、「冷たい!」と声を上げる人たち。
氷が冷たいなんて、みんな知ってる。
だけどその時、とても新鮮な気持ちと驚きをもって、その体験を受け入れているのです。

なんてすごいアーティストなんだろう。

例えば、何か伝えたいことがあったとして。
それをなるべく、そのままの形で相手に届けるには、どうすればいいか。
これは、私の人生をかけた課題なのですが、彼も同じなのだと(傲慢にも)気付いたのです。

伝えたいことを、きちんと伝える為には
適切なタイミングと、適切な環境、適切な方法を選ぶことが重要で、
オラファー・エリアソン氏の作品は
正にそれを実行したものなのだと気付いたのです。

自然の中に当たり前に存在する現象を、全く別の場所へ持ってくることで、気にしていなかったことに気付くことが出来る。
視点を変えるだけで、見知ったものが、全然違うものに見える。
それを意図的に行うのが、彼にとっての「アート」なのです。

思いつきそうで思いつかない。コロンブスの卵のよう。


アートってなんだろう。
私は今もずっと、考え続けているのですが、その自分なりの答えに一歩近づけたような気がします。
もちろん答えはきっと一つではなく、アーティストの数だけあるとは思います。その中のひとつを知った気分。

「視点を変える」ことができる。
これもまた、アーティストの持てる力のひとつなのだと思うのです。

残念ながら私は、彼の作品を見ただけでこれらのことに気づける程の教養も、鋭い感受性も持ち合わせていないので、作家自身が作品について語ることは邪道と言われようと、とても有難いこと。
なんて素晴らしい番組。ありがとうNetflix。

全14話あるようなので、ひとまず全部観てみたい!
ただ、この番組は『アート・オブ・デザイン』の名の通り、どちらかというとデザインがテーマのよう。衣装デザイナーやフォントデザイナーなど魅力的なエピソードが盛り沢山。皆様もぜひ!

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