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愛しいから卑しかった

愛しかった、何よりも。誰よりも。
愛していた、醜いほど、卑しいほど。

『lowly』なんて曲に共感しちゃダメだよ
いやでも、ちょっと分かって欲しいとか思ってごめん。

きっと生涯忘れることは無いだろうなと思う恋があります。そんな相手がいます。これが俗に言う一世一代の恋とか言うやつなんだろうなとか思う日々があります。

気付けば遠くに行ってしまって、もう手は届かないけど。

戻れない、と分かっていながらも「もしかしたら」にかける気持ちの悪い厭らしい、みっともない私です。

君と離れて、思いを断ち切りたくて切った髪。それなのに、君がロングヘアーの女の子が好きなことを知っていてエクステをつけた。

「新しい男の好み?」なんて聞いてきた君に「いや、何となく」なんて嘘を吐いた。口が裂けても言ってはいけない気がして飲み込んだ「君のためだよ」って台詞。

もしかしたら君と会うかもしれない日には無意識だって自分を誤魔化して、君好みの服装で、いつもより少し時間をかけたメイクで家を出た。服を脱ぐことまで考えて選んだ下着。

都合のいい私が脱がされるたびに痛感するのは自分の卑しさ。汚さと醜さ。どうしようもなさ。

好みに合わせて開けたピアスも、伸ばした髪も、選んだ服や下着も、結局全部無意味。家に帰って髪を解いて化粧を落とす。服を脱いで、下着姿の私は鏡の向こうで泣いていた。

終わった。「これでいいんだ」なんて言い聞かせては胸が痛んだ。忘れようとして、でも忘れたくなんてなくて忘れられなくて瘡蓋を何度も剥がした。

偽物の自分の長い髪を結った。「君の好きな女の子になるためには、これでいい?」なんて飲み込んだ。紛れもなく君は私の隣に居たんだ。笑いあっていたんだ。

今じゃ2人して会えば痛い思いして、私の傷は化膿するばかりで想いは止められなかった。そんなことを言っても「今更もう遅いんだよ」なんて君はきっと切なそうな顔で私に言うんだろうけど。

「やり直そう、今の私たちなら大丈夫」なんて、ありもしない未来に少しでも期待を隠しきれない私。卑しい。気持ちが悪い。

飲みの席では大して強くないお酒でワザと酔ったフリをしていた。心配性の君に手を引かれて歩くことを期待したから。長いこと一緒に居すぎたんだ。私のことをよく知ってる君だから、酔うと元気になる私にかける君の声はいつだって、今だって優しかった。

君に嘘はつきたくなかった。つかないと決めていた。

どうしようもなくてついた嘘が「大丈夫」「これでいいんだよ」だっただけで、君が私以外の人と幸せになる未来なんて本当は考えたくない。だなんて気持ちが悪いな。

胸が痛んだ。残された、残してしまった傷跡はお互いに消えないままだから笑い会うことすら出来ないんだろう。

散々傷つけておいて、今もまだ傷付けようとしてしまう私の悪いところ。全部見透かすように「ずるい」と言う君のその苦しそうな顔が好きだった。

早く私を忘れてね、気にしないでね。は自分でもはっきりと分かるほどの嘘。

ねぇ、忘れないでいて。覚えていて。許されるならたまにでいい、冬が来るたびに私を思い出して欲しい。
卑しい。醜い最低な私の歌に『lowly』という名前をつけた。

愛していたのは自分だけだと思っていた、なんて言った君が、いつかちゃんと自分も愛されていたんだって思えるように生きたい。いや、死んだ方がいいのか。

そばに居なくとも、他に誰かがいようとも、私の生きる理由は今も尚君でした。

そんな私の厭らしい曲に、歌詞に、旋律に、共感なんてしなくていいよ。ただ、馬鹿な女だって他の誰でもなく君がいつか笑って、私の手を取る日を今でも、待っていたりなんて。

どうか幸せにならないでね。私を手放したことを後悔して、一生不幸でいてね。

愛してたよ。



2023.10.3

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