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夢は夢のままで

"もぅ〜!待ってよ!"

"これおいしー!!"

"あはははっ!!(笑)"

"○○!好きだよ!"


この声…君は誰なんだ?

どうしてそんなにも嬉しそうに話しかけてくるんだ…

顔はわかるのに名前がわからない




?「起きて!起きてってば!」

○「んっ…ふぁ〜…おはよ…"真夏"」

真夏「うん、おはよ!」

○「いい匂いするね?」

真夏「今日はスクランブルエッグを作ったよ!」

○「おっ!じゃあ、リビングに行こう」

真夏「いえっさー!」



この子の名前は秋元真夏

僕の奥さんだ。

夢の中に出てくる女性に似てる。

でも夢の彼女は名前が違う気がする…

真夏「またボーッとしてるよ?大丈夫?」

○「あ…あぁ…大丈夫」

真夏「今日は遅いの?」

○「うん、今日の依頼者は友人なんだけど浮気調査だから泊まり込みをする」

真夏「わかった、気を付けてね?」

○「うん」

俺は家から出て自身の探偵事務所に向かう。

今日は友人が訪ねてくる。

どうやら旦那が浮気をしているようだ。

それから友人がきて話を聞き、彼女の旦那が浮気をしているかの調査依頼を正式にされた。

俺はすぐさま彼の仕事場に行き見張りを始めた。

それから何日も尾行をしているが中々尻尾を出さない。

…少し寝るか

車中で眠る○○。

"きゃぁぁぁあ!"

"○○…ごめんね?"

"愛してる…"

○「うわぁぁぁ!はぁはぁ…なんだあの夢…」

あれは真夏が死ぬ夢?

どうして?

俺は今見た夢に不安を覚えて真夏に電話をする。

"prrrr…ピッ"


○『真夏?』

真夏『どうしたの?急に、張り込み中じゃないの?』

○『あぁ…ちょっとね』

真夏『何かあった?』

○『真夏が死ぬ夢を見たんだ…』

真夏『……』

俺は夢の中の事を真夏に伝える。

真夏から返事がない

○『真夏?』

真夏『あ、うん、何でもないよ?ほら、私は生きてるから安心して?』

○『あぁ、悪い急にこんな…』

真夏『ふふっ、気にしないで?たまには帰ってきたら?ゆっくりしたら気分も変わるよ?』

○『…いや、もう少し張り込んでみるよ』

真夏『そう、頑張って!』

電話を切る。

○「疲れてんのかな…」

この後、粘った甲斐もあり旦那の浮気現場の証拠をおさえることができた。

俺は1週間ぶりに家に帰る。

○「ただいま〜」

真夏「お帰りなさい!」
"絵梨花(お帰りなさい!)"

な、なんだ今のは?

真夏に重なって夢の世界の彼女が見えた。

○「えり…か…?」

"パリンッ"

真夏が持っていたお皿が床に落ちて割れる。

真夏「えっ…」

○「えりか…絵梨花?誰だ?」

くっ…頭が痛い…

○「なんで!何で"絵梨花"って名前が出てくる!なんで真夏に重なる!」

俺はパニックになる。

真夏「落ち着いて?"絵梨花"って誰?」
絵梨花(思い出して?)

○「やめろ!誰だ!」

真夏「どうしたの?」
絵梨花(思い出して!)

○「やめてくれ!」

俺は膝から崩れ落ちる。

真夏「○○!?」

真夏はしゃがんで俺の肩に手を置く。

○「はぁはぁ」

真夏「疲れてるんだよ、休もう?」
絵梨花(貴方は思い出さなきゃいけない!)

○「真夏…君は誰なんだ…僕は誰なんだ…」

ポツリと膝と手を床につき言葉を漏らす○○。

真夏「誰って、秋元真夏、貴方の奥さんで、それで貴方は秋元○○でしょ?」

○「そうだ…君は俺の奥さんでずっと一緒に暮らしてきた…」

真夏「そうだよ!」

○「でも違うんだ…君が奥さんで間違いないのに…君という存在を認識してるのに…心が…体が…違うと言ってる…」

真夏「……」

○「君は…誰なんだ…」

真夏?「"Who are you?"…君は誰?か…」

○「え…」

真夏?「○○、貴方は思い出したいの?全てを」

○「それはどういう…」

真夏?「全てを知ったら貴方は後悔するよ?思い出さなくていいこともある…」

○「……それでも!俺は思い出さなくちゃいけない気がするんだ!!」

真夏?「本当に?"夢は夢のままで"いた方がいいこともある…」

○「教えてくれ…君は誰なんだ?」

真夏?「本当…困った人ね?貴方は…」

困ったように笑う真夏?…

真夏?「なら目を覚まして…起きる時間よ」

○「それはどうい…うっ…なんだ?…眠気が…」

真夏?「もっと貴方といたかったわ」



"ピコンッ…ピコンッ…ピコンッ…"

○「ここは……」

真夏「起きた?!」

俺は眠気に誘われて意識を失い目が覚めるとそこは知らない白い天井が広がっていた。

口元は何かで覆われていて腕にはチューブが刺さっていた。

そしてすぐに俺のベットの横から声が聞こえる。

そこには"真夏"がいた…

○「あれ?俺はなんで…いっ!」

真夏「待ってて!すぐにお医者さん呼んでくるから!!」

そう言って真夏は医者を呼びに行った…



すぐに医者と真夏が戻ってきて俺に質問する。

医者「頭に痛みはありますか?」

○「少しだけ…」

医者「この指は何本に見えますか?」

○「3本…」

医者「脳に異常はなさそうですね…念の為に検査をしましょう」

それから俺は検査を受けて何があったのかを聞いた。

どうやら俺は妻の"絵梨花"とドライブ中にトラックの居眠り運転に巻き込まれたみたいだ。

2人ともすぐに病院に運ばれたが妻は運ばれてから10分後に死亡…

俺は1ヶ月近くも昏睡状態だったらしい。

そう…俺はずっと…夢の世界で生きていたらしい…

夢の中で見ていたと思っていた彼女は現実で

"真夏"と呼んでいたのが夢の世界の彼女だった。

彼女の言った通りだ…夢から覚めない方がよかった…

俺は絵梨花を失ってどうやって生きていく…

俺は!俺は!

俺は自暴自棄になり車椅子で病院の屋上に向かう。

絵梨花…そっちにいくよ…

俺は車椅子から降りようとする。

すると背中に優しい温もりを感じる。

?「だめでしょ?そんなことしちゃ…」

俺は後ろを振り向くそこには会いたかった絵梨花がいた。

絵梨花「私の知ってる○○はそんな人じゃないでしょ?」

○「絵梨花…絵梨花っ(泣)」

絵梨花「私が知ってる○○は強い人よ」



○「俺は強くない!俺は絵梨花がいないとだめなんだ(泣)」

絵梨花「大丈夫!○○は1人じゃないよ?真夏だっているしいつだって私がいるよ?」

○「無理だよ…」

絵梨花「できるよ…だって私が愛した人だもん!」

○「絵梨花…」

絵梨花「私の分まで生きて?」

○「わかった…生きるよ」

絵梨花「それでこそ、私の○○!」

絵梨花が光り始める

○「もういくのかい?」

絵梨花「うん!」

○「ならこれを持っていくといい」

俺は屋上に置こうと思って買った花束を渡す。

絵梨花「これ、私が好きな花だね!」

○「ゆっくりとそっちにいくよ」

絵梨花「待ってるね?」



そう言って絵梨花は光に包まれて消えていった。

○「頑張るよ…」

真夏「あっー!ここにいた!病室に行ったらいなかったから探したよ!」

○「ごめんごめん!」

真夏「泣いてたの?」

○「うん、少しね」

真夏「…戻ろっか?」

○「そうだな…」



絵梨花…愛してるよ

"私もだよ!"

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