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奇跡の送り人

1‘

2020年6月27日

私は人知れず、森の中で…

自殺した…

そう…自殺したのだ…

2‘

それなのに…

どうして…

どうして…私は…

ここに…

3‘

真佑「あの〜…?」

⚪︎「どうしました?」

真佑「私…死んだはずじゃ?」

⚪︎「はい、亡くなられました、森の中で首を吊って」

真佑「ならなんで、ここに?」

4‘

⚪︎「ここは此岸と彼岸の間です」

周りを見渡すと夕焼けに染まった、河原の側に立っている。

真佑「此岸?彼岸?」

⚪︎「簡単に言うと、この世とあの世の間ってことです」

真佑「あぁ…それで、私はどうなるの?自殺したから地獄行き?」

⚪︎「いいえ、田村様は地獄には行きません」

5‘

真佑「なら生まれ変わるの?」

⚪︎「そうですね、田村様は記憶を消され、まっさらな状態の魂になって転生します」

真佑「そっか…で…あなたがその案内人?」

⚪︎「それも違います」

真佑「ならあなたは何?」

6‘

⚪︎「申し遅れました、私は久保〇〇と申します、送り人です」

真佑「送り人?」

⚪︎「はい、送り人…正しくは納棺師といいます」

真佑「納棺師?」

⚪︎「亡くなられた方のお身体を洗い清め、身支度を整え、お棺に納め、送り出す準備をします」

7‘

真佑「あぁ…葬儀屋みたいなものね…」

⚪︎「そんなところです」

真佑「でも、なぜその納棺師がここに?さっきの説明だとここは死んだ者しかこれなさそうだけど?」

⚪︎「私は少し変わった送り人でして、此岸と彼岸の間に意識を飛ばせるのです」

真佑「じゃあ…ここにいるのは本物の久保さんじゃない?」

8‘

⚪︎「現実の肉体ではないという意味でならそうですね」

真佑「久保さんはなんでここに?」

⚪︎「弊社のサービスの一環です、亡くなられた方の思いをお聞きして、後悔なく転生してもらう為です」

真佑「後悔?」

⚪︎「何かございませんか?誰かに何かを伝えたいことなど」

9‘

真佑「……ないです」

⚪︎「本当に?」

真佑「…はい」

⚪︎「それでしたら…私はいいですが、これは最後の選択です」

真佑「最後の選択?」

10‘

⚪︎「誰も彼も、誰かに大事なことを伝えられるわけではありません…言う前に亡くなってしまわれた方がたくさんいます…しかし、田村様は違う…こうやって伝えられる手段があるかも知れない…」

真佑「……」

⚪︎「亡くなった方が全員、こうやって最後の選択ができるわけではありません、こうしてる間にもどこかで誰かが納棺され、転生のする準備をして輪廻にいきます」

真佑「でも…どうやって…」

11‘

⚪︎「誰に何を伝えたいですか?」

真佑「…お母さんに…」

⚪︎「それでは…お話を聞きましょう…」

真佑「はい…」

12‘

〜〜〜〜〜

13‘

〜〜〜〜〜

14‘

〜〜〜〜〜

15‘

“ピンポーン”

真夏「はい」

⚪︎「真夏様…どうも」

真夏「ぁ…あなたは…久保さん」

⚪︎「今日は真夏様にお話があり、お伺い致しました」

16‘

真夏「?…どうぞ、お上がりください」

玄関に入り、リビングに通される。

⚪︎「まずは、お線香をあげても?」

真夏「はい、お願いします」

〇〇は仏壇の前に座り、線香をあげる。

17‘

⚪︎「では、早速ですが、これを」

一通の手紙を渡す。

真夏「これは?」

⚪︎「ある方からの手紙です」

真夏「…?」

手紙を広げる真夏。

18‘

真夏「……っ!?」

手紙から顔を上げて、〇〇を見る。

⚪︎「まずは手紙に目を通してください」

真夏「はい…」

19‘

『拝啓、お母さんへ

お母さん…お元気ですか?

こうして、お母さんに何かを伝えるのも何年振りかな?

まずは…ごめんなさい…

親不孝者の娘でごめんなさい

20‘

お母さんの反対を無視して、

女優になる夢の為に東京に行って、

絶対に成功するからって

啖呵切って…

でも…現実は甘くなくて…

21‘

女優になっても、

全然仕事もらえなくて…

仕事の為に人にも言えないこともした…

私は綺麗じゃなかった…

22‘

そんなある日…私はあるプロデューサーの子供を孕んだの…

それを彼に伝えたら…認知しないって…

堕ろせって言われた

私は自分の夢の為に彼の言う通りにした…

23‘

それなのに…彼は私を切り捨てた…

それで、自暴自棄になって…

森で…自殺したの…

本当にごめんなさい…

24‘

お母さんに相談すればよかった…

でも怖かった…なんて言われるのかが…

この事を知ったら、あなたなんか娘じゃないって、

言われるかも知れないって

だから言い出せなかった…

25‘

お母さんがそんな事言うわけないのに…

もう遅いけど…さ…

私を産んでくれてありがとう…

生まれ変わったら…またお母さんの子供がいいな…

真佑より…

26‘

真夏「っ…ぁぁ…っ…あああああああ!真佑ぅぅ!ま…ゆ…!」

⚪︎「これは娘さんの真夏様にお伝えしたかった思いです」

真夏の背中をさする〇〇。

⚪︎「信じるかは真夏様次第です…」

真夏「うぅ…いえ…ありがとうございます…娘の思い…確かに…受け取りました…」

27‘

⚪︎「それでは…私はここで…」

真夏「本当にありがとうございました…」

⚪︎「いえ…失礼します」

家から出る〇〇。

28‘

⚪︎「よかったですね…お母様に思いが伝わって」

真佑『はい…ありがとうございました』

⚪︎「いえ…仕事ですので」

真佑『久保さんがいなかったら私も母も…後悔してましたから』

“ポワポワ”

29‘

真佑の体が光だす。

⚪︎「お時間です」

真佑「本当にありがとうございました!」

⚪︎「来世での幸福を願っております」

30‘

“ポワワワン”

光の粒となり、消える真佑。

⚪︎「さて…もう一仕事ですね…」

どこかに電話する〇〇。

31‘

〜〜〜〜〜

32‘

〜〜〜〜〜

33‘

〜〜〜〜〜

34‘

櫻坂放送の放送プロデューサーを務めている、

木谷健吾(きたにけんご)さんが東京都港区にある自宅で

首を吊って死んでるのが7月20日に見つかったもよう

遺体の側には遺書があり、警視庁東京湾岸署は自殺と見て

調べているようです。

35‘

⚪︎「ふむふむ…」

“プルルル”

⚪︎「はい、久保です、ええ…いや、助かりました…えぇ…先ほどニュースで…はい…はい…では」

“ピッ”

⚪︎「これで依頼人も心配なく転生できますね…ふふっ…ふふふっ…」

36‘

To be continued

37‘

この作品はフィクションです。

実在の人物や団体などとは関係ありません。

またこの作品内の表現や行動はあくまでも、

作品内での表現・行動なので実際に行っても、

一切の責任は取りかねますのでご了承ください。

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