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「君が思い出すまで」

1‘

死後……人は転生をする。

その際に記憶と感情を消されて転生し

魂はそのままで新しい肉体と精神を持つ。

これが一般的に死後の処置である。

2‘

しかし例外があり、一つだけ…ある"選択"が出来る。

それは氷のように冷たい水の中で

苦痛を味わいながら1000年待つという

3‘

そして1000年の時が経つと前世の記憶と体に

ある"印"を残して輪廻し前世の愛する人を探すことができる。

4‘

これはある男が愛した女性を探し

思い出してもらう話である

さぁ…始めよう

僕と君との物語を…

2‘

____

3‘

女神「本当にいいの?」

?「はい…」

女神「耐え難い苦痛が1000年も続くんだよ?」

?「彼女のあの時の苦痛に歪めた顔をもう一度見るくらいならなんてことないです」

女神「仮に会えたとしても思い出してくれるかわからないよ?」

4‘

?「思い出してもらえるように努力します」

女神「思い出しても結ばれるかわからないよ」

?「わかってます」

女神「君とその子が結ばれなかったら・・・・・よ?」

?「彼女が幸せならそれで」

女神「では…転生の儀を開始します…」

5‘

?「わがままをごめんなさい」

女神「いいえ…たまにあなたみたいな人はいるもの」

?「そうなんですね…結果は?」

女神「……」

?「そうですか…女神様はお優しいんですね」

眉間に色白美人には似合わない皺が寄っている。

6‘

女神「あなたに幸せあれ…」

?「ふふっ…女神様に言われたら幸せになれそうですね」

女神「さぁ…長きに旅に」

?「はい」

こうして僕の長い旅が始まる

7‘

_____

8‘

美月「最近さ…変な夢見るんだよね」

美波「変な夢?」

美月「うん、結構大昔の風景で男の子と手を繋いで逃げてる夢」

美波「確かにそれは変な夢だね」

美月「うん、でも親近感がある夢なんだよね」

9‘

学校のお昼時間に屋上で話してる2人。

美波「へぇ〜」

美月「あ、興味ないな?」

美波「興味ないっていうか…夢でしょ?気にしなくていいんじゃない?」

美月「そうなのかな…」

10‘

ーーーーー

11‘

梅に夢の話をしてから数日後

うちのクラスに季節外れの転校生が転入してきた。

○「初めまして…常闇〇〇です」

“かっこよくない?”“色白ーい!”

美月「常闇〇〇くん…(心:どこかで…)」

12‘

先生「じゃあ…常闇は山下の隣だな」

美月「こっちでーす」

私の隣まで歩いてくる常闇くん

○「よろしくね?山下さん」

美月「うん、よろしく」

13‘

隣ということもあって、私が〇〇くんと仲良くなるのに

時間は掛からなかった。

○「最近、彼氏さんとは仲良くしてる?」

美月「うん、〇〇くんのおかげで前よりいい感じ!」

○「そっか…よかった!」

14‘

〇〇くんは私によくしてくれる

最初は私の事が好きなのかな?って思ったけど

彼氏と喧嘩した時とか仲直りに協力してくれた

一度、どうしてこんなによくしてくれるのか聞いたら

15‘

○「美月は…今、幸せ?」

美月「…?うん、幸せかな」

○「“美月が幸せならそれでいいんだ“」

なんとなくだけど…話を逸らされた感じがした

16‘

美月「ふっふ〜ん♪」

今日は購買の幻の焼きそばパンが、二つも買えた!

だから〇〇くんにもお裾分けしようと屋上に向かった。

屋上に続く、扉を開けようとすると

中から〇〇くんと誰かの声がする。

17‘

○「っ…」

麻衣「あなたの時間はそろそろ終わりを迎えようとしてるわ」

白石先輩?どうして〇〇くんと白石先輩が?

○「わかってます…」

麻衣「早くしないと、あなたの魂がその体に定着せずに消滅するわ」

魂?定着?消滅?2人の会話が理解できない

18‘

麻衣「あなたは転生の輪廻から外れた存在よ」

○「それでも…」

麻衣「はぁ…覚えておきなさい、あなたの魂はもっても2ヶ月よ」

○「…はい」

19‘

私は中に入ってはいけないと感じてその場を後にする。

教室に戻り、先ほど買った焼きそばパンを食べる。

美月「…うまっ…」

この後の授業に身が入らずに先生に何度も注意された。

20‘

○「大丈夫?ぼーっとしてるけど」

美月「う、うん…今日はすぐに家に帰るね」

○「うん、気をつけてね」

美月「ありがとう」

21‘

私は家に帰るとすぐにベッドにダイブした。

目を閉じると、お昼に屋上で話していた2人の会話を思い出す。

美月「調べてみよう…」

机にあるパソコンを開いて、検索ワードを入力する

22‘

美月「なんだっけ…魂、消滅、定着…」

白石先輩が言っていたワードを入力する。

検索してみたはいいけど…よくわからないものばかりがヒットする。

美月「てか…何してるんだろ…」

23‘

自分のしてることがバカらしくなり

パソコンを閉じようとすると一件のサイトに目がいった

美月「1000年の恋?」

サイトのタイトルは私が知りたいものと関係ないもの

なのに、なぜだかURLを開いていた。

24‘

美月「死後、輪廻の輪から外れ1000年間、氷のように冷たい水の中で苦痛を味わいながら待てば記憶をそのままに蘇ることができる…」

私は食い入るようにスクロールをした。

美月「肉体は得る事ができるが魂が定着するわけではない…」

そもそも前世の記憶を持ったまま、生き返りたい理由は?

25‘

1000年間も苦痛に耐えて、得るものが肉体?

割に合わない気がする…

私はさらにスクロールする。

美月「魂の定着条件…?」

魂の定着条件は愛する者に思い出してもらい

結ばれること…

26‘

美月「…やっぱり割に合わない…」

だってそうだ…愛してる人にに会えたとしても

思い出してもらえなければ苦痛で苦しんだ100年間が

無駄になる…

27‘

美月「って…〇〇くんがそうだっていうの?」

それなら〇〇くんの愛した人が私達の学校に?

美月「はっ…馬鹿らしい…」

私はパソコンを閉じて、ベッドに寝転ぶ。

28‘

____

29‘

それからサイトのことはすっかり忘れて

いつも通り、変わらずに過ごしていた。

変わったとすれば、彼氏と別れたこと

彼氏が浮気していたのだ

30‘

その時は〇〇くんと梅がそばにいてくれた。

だからそんなにダメージがなかった。

美月「ふっふ〜ん♪」

ご飯を食べよう〜

31‘

屋上に続く扉を開く。

○「っ…」

美月「〇〇くん!?」

〇〇くんが倒れていた。

○「美月…」

美月「ど、どうしたの!?顔色が悪い!」

32‘

○「なんでも…っ…ないよ…」

〇〇くんに近づいて体を起こす。

美月「何でもなくないでしょ!?」

○「そろそろ時間が尽きそうなだけだよ…」

美月「時間?なんのこと?」

33‘

○「美月…ごめん…ごめんね…」

“美月…ごめん…ごめんなさい”

美月「っ…!?」

何…今の…なんで…

私の意識はそこで途切れた…

34‘

ーーーーー

35‘

私は夢を見た…いつもの変な夢…

あぁ…なんでかな…

いつもの変な夢なのに

懐かしく感じるのは…

36‘

まるで遠い…記憶のような感覚…

いつも私の手を引きながら逃げる男の子…

その子の顔はいつも霞かかってる…

だれかもわからない男の子

37‘

必死に私の手を引いて…最後は大人たちに捕まり

目の前で殺される…

そして私は“神”に生贄として捧げられる。

そこで私はいつも起きる…

38‘

なのに…今日は終わらない…

目の前が光に包まれると白い空間にいた…

目の前には肌が白い女性とあの男の子がいた…

美月「あの〜?」

39‘

どうやら私の声は聞こえてないようだ…

女神「本当にいいのですか?」

?「はい、お願いします」

女神「これは報われないかも知れない」

?「それでも…美月が幸せなら…それでいい」

40‘

美月「っ…!?」

“美月が幸せならそれでいいんだ”

あの男の子なんて知らない…

知らない…

でも…知ってる…

41‘

“み…き…みづ…美月…”

だれ…?

“みづ…美月…”

その声は…

42‘

ーーーーー

43‘

○「美月!」

美月「だれ…」

○「よかった…」

美月「〇〇…くん…」

○「大丈夫?」

44‘

心配そうに私を覗き込み〇〇くん

美月「〇〇く…いや…久しぶりだね…〇〇」

○「っ…!?」

美月「思い出したよ…君のこと…でもどうして…最初から正体を明かさなかったの?」

○「それは…」

目を逸らす〇〇

45‘

美月「彼氏がいたから…?」

○「それもある…」

美月「それも?」

○「怖かったんだ…君に全てを伝えても思い出してもらえなかったらって…仮に思い出しても今の幸せを壊してしまうのが」

美月「優しいんだね」

46‘

○「違う…臆病なだけ…」

美月「それこそ違うよ、臆病者なら1000年も苦痛に耐えられない」

○「君に会いたかったから」

美月「どうして会いたかったの?」

○「謝りたかった…」

美月「謝る?なんで?」

47‘

○「君を守るって言ったのに…守れなかった…」

美月「あれはしょうがない…」

○「それでも僕は君を守れなかった…」

美月「君は悪くない…こうやって私の為に1000年の苦痛に耐えて会いに来てくれた…」

48‘

○「……」

美月「聞かせて?〇〇はどうしたいの?」

○「僕は…」

美月「教えて?〇〇の気持ちを」

○「僕は君に出会った時から恋をしていた…1000年前からずっと君を…“愛している”!!」

美月「私もっ!愛してる!」

49‘

この物語は1000年間苦痛に耐えた男が最愛の女性と結ばれるお話…

麻衣「やっと…幸せになれたのね…さぁてと…天界に戻ろかな…あ、でも今回かなり任せきりにしちゃったから怒ってるだろうな…奈々未…」

天界にいる三大女神の1人を思い出して苦笑いをする。

麻衣「じゃあね…〇〇…今度はその手をはなしちゃだめよ」

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