![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/119004847/rectangle_large_type_2_16814acf54d040efbf001cf3f6eb80d7.jpg?width=1200)
僕の心臓をもらってください
1‘
七瀬「はぁ…余命3年かぁ…」
私は西野七瀬(29)
小説家だ…
定期的な健康診断で、
心臓に病気があるのがわかった。
2‘
どうやら、その心臓の病気は
現状の医学じゃあ、治らないらしい
唯一の助かる方法は心臓移植
今はドナーが現れるのを入院して待っている。
3‘
入院してから2ヶ月経った。
私は入院中も執筆はしている。
タイトルは『脇役の僕は主人公になれない』
内容はまぁ…似たようなもんだ
4‘
私はいつも通り、病室で執筆してると
病室の扉が開く。
“ガラガラ”
七瀬「…誰ですか?」
?「初めまして、西野七瀬さんですよね?」
5‘
七瀬「そうですけど…」
見知らぬ男性に警戒心を抱く。
こっそりとナースコールを握る。
?「ぁ…名乗るのが遅れました、僕の名前は与田〇〇と言います」
6‘
七瀬「与田さんがなんの用ですか?」
⚪︎「僕は西野先生のファンなんです」
七瀬「は、はぁ…?」
⚪︎「西野先生は心臓のドナーを探してるとか?」
七瀬「ぇ…まぁ…そうです…でもどうしてそれを?」
7‘
⚪︎「たまたま、看護師さんが話してるのを聞いてしまって」
七瀬「ぁあ…」
⚪︎「そちらに行っても?」
私の近くの椅子を指す
怪しい…怪しいけど…
悪い人には思えなかった。
8‘
七瀬「いいですよ」
⚪︎「ありがとうございます」
七瀬「それで、どうしてここに?ファンだって伝えるためですか?」
⚪︎「まさか、それだけではありませんよ、1番は西野先生に提案をしに来ました」
9‘
七瀬「提案?」
⚪︎「はい、僕は先生のファンですが、1人の女性として好きです」
七瀬「っ…!?」
⚪︎「ですが、別に付き合って欲しいわけではなく、友人になって欲しいんです」
七瀬「友達に…?」
10‘
⚪︎「その見返りとは言わないですが、僕の心臓をもらってください」
七瀬「……はぁ?」
⚪︎「心臓をあげます」
七瀬「何言ってるん?冗談はやめてぇーや」
動揺して、関西弁が出てしまう。
11‘
⚪︎「冗談じゃありませんよ?僕は運動も定期的にしてますし、タバコも吸わないので健康です…西野先生とも血液型が一緒です、なのでドナーとしては最良だと思います」
七瀬「与田さん、年齢は?家族は?」
⚪︎「僕は26歳です、家族は6年前に亡くなっているので、身内はいません」
七瀬「どうして…好きだからでこんなことができるん…」
12‘
⚪︎「…西野先生は必要とされている人だからです」
七瀬「私が?」
⚪︎「そうです、先生の小説は誰かの気持ちを動かしたり、励ましたり…生きる活力にもなっています、そんな先生が若くして死んでしまうのは勿体無い…」
七瀬「でも、心臓を移植して、小説家をやめたら?」
⚪︎「それはそれでいいと思います、好きな人が進む道ならそれで」
13‘
七瀬「でも、私に心臓移植したら与田さんは死んでしまうんやで?」
⚪︎「3年は生きれます」
七瀬「3年?……まさか!」
⚪︎「はい、西野先生…いや、西野さんの心臓を僕に移植します」
七瀬「本当にそれでいいん?与田さんと恋人にはならへんのよ?」
14‘
⚪︎「それでもいいんです」
七瀬「そんなら…お願いします」
こうして、私と与田さんはお互いの心臓を
心臓移植にて、交換した。
15‘
〜〜〜〜〜
16‘
最初はお互い、リハビリの休憩中におしゃべりしたり、
退院した後も、お互いの家に行って、小説の話をした。
私は友人の高山一実こと、かずみんに紹介した。
かずみんは私の担当編集者だから小説も好きで、
与田さんともすぐ仲良くなった。
17‘
与田さんは執筆の息抜きがてらに、
私を色々な所に連れてってくれた。
七瀬「今度、石垣島行ってみたいな…」
⚪︎「いいですね、行きましょう」
18‘
〜〜〜〜〜
19‘
一年が過ぎた
〇〇さんは少しずつ、体調を崩すようになってきた。
七瀬「大丈夫ですか?」
⚪︎「ぇえ、大丈夫ですよ」
そんなの嘘だ…
20‘
⚪︎「それより、小説の執筆具合はどうですか?」
七瀬「最後の結末をどうしようかなって」
⚪︎「七瀬さんはどうしたいですか?ハッピーエンドにしたいですか?」
七瀬「ん…」
21‘
この小説は主人公が好きな人の為に、心臓を提供をする
その結末をどうするか…
それをずっと迷ってる…
七瀬「〇〇さんはどうしたい?」
22‘
⚪︎「僕は…それを決められません」
七瀬「なぜ?」
⚪︎「それは僕は物語の書き手ではないからです、七瀬さんが書き手なのです…七瀬さんの描きたい結末を」
七瀬「そっか…私が書き手…そうやな…」
その言葉に、私の中で閃いた。
23‘
〜〜〜〜〜
24‘
『脇役の僕は主人公になれない』が発売されてから
1年が経った。
〇〇くんは私の家に引っ越してきた。
理由は起き上がるのが大変になった為。
別に付き合ったわけじゃない…
25‘
でも、私が〇〇くんをみないといけないと思ったから
七瀬「今日の体調は?」
⚪︎「大丈夫です…僕は気にしないで、執筆してください」
七瀬「今日は休もうと思って、体調がいいなら外を散歩せぇへん?」
⚪︎「でも…」
26‘
七瀬「車椅子で押すし、〇〇くんが好きな紅葉も見れるで?」
⚪︎「…じゃあ、お願いしてもいいですか?」
七瀬「っ!肌寒いから少し着こもうな!」
私と〇〇くんは少し暖かい格好をして、
外に出る。
27‘
七瀬「厚着して正解やな」
⚪︎「ですね」
七瀬「寒ない?大丈夫?」
⚪︎「大丈夫です」
〇〇くんとは歩きながら色々なことを話す。
28‘
公園に着くと、2人でベンチに座り、
赤くなった紅葉を眺める。
少し咳き込む〇〇くんを見るのは忍びない。
〇〇くんの余命はあと…1年
29‘
〜〜〜〜〜
30‘
とうとう…〇〇くんは起き上がれなくなった。
1日に2時間起きてればいい方
ほとんどの時間を眠っている。
最近は小説の話ができてない
31‘
今では外も出る時は1人で、
買い物帰りに公園に寄って、
紅葉の木を見上げてから帰宅する。
32‘
〜〜〜〜〜
33‘
それは突然とやってくる。
〇〇くんは静かに息を引き取った。
遺品を整理してると
手紙が出てきた。
内容は私に感謝してるということ、
私を好きだということが書いてあった。
34‘
七瀬「私が書いた小説みたいやな…」
そう…『脇役の僕は主人公にはなれない』と
同じ終わり方。
七瀬「ぁー…なんで今なんや…なんで今…気づいたんよ…」
溢れ出す涙を止めることができなかった。
35‘
七瀬「っ…なんで…なんで…今、〇〇くんがいなくなってから…気づくんよ…私…〇〇くんが…好きやったんやな…っ…」
こんな所まで似ひんでもいいのに…
でもこんなにも似てるんやったら…
私がそっちに行った時にはちゃんと
会いにきてくれるんかな?
36‘
〜〜〜〜〜
37‘
〇〇くんが死んでから、1年後…
私は新作のサイン会に来ていた。
七瀬「みんな…この作品を好きになってくれるとええんやけど…」
一実「大丈夫だよ!絶対に好きになってくれるよ!」
七瀬「それならええんやけど」
38‘
一実「ほら、お客さんがきたよ!」
七瀬「じゃあ、しっかりとサインを書かな」
一実「そうだね!じゃあ、始めるよ?」
かずみんがメガホンを持つ。
39‘
一実「これから、西野先生の新作!『僕の心臓をもらってください』のサイン会を始めます!」
〇〇くん、あなたが生きた証はこうやって、
みんなの中に残るよ…
40‘
この作品はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
またこの作品内の表現や行動はあくまでも、
作品内での表現・行動なので実際に行っても、
一切の責任は取りかねますのでご了承ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?