あなたの目が、眼差しが
1‘
今日は私の誕生日
毎年、私の隣に座ってる大型犬(彼氏)に祝ってもらってる。
奈々未「何?そんなに見つめて」
⚪︎「いえ?可愛いなって」
2‘
奈々未「…そう」
⚪︎「何かしてほしいことありませんか?」
奈々未「どうして?」
⚪︎「今日は誕生日なので!」
奈々未「あぁ…」
3‘
⚪︎「それで!」
目を煌めかせて、私の言葉を待っている。
奈々未「……」じー
⚪︎「…??」
犬耳と尻尾が見える。
4'
毎年、こんな感じ。
奈々未「苦手だったんだけどな…」
⚪︎「え…」シュンッ
あ、耳と尻尾が垂れた。
5‘
奈々未「ふふ、ごめんごめん、〇〇のことじゃないよ」
⚪︎「…本当ですか?」
奈々未「本当だよ」
⚪︎「じゃあなんですか?」
奈々未「知りたい?」
6’
⚪︎「奈々未さんのことなら全部知りたいです!」
今度は暖かい眼差しで見つめてくる。
奈々未「私が昔言ったこと、覚えてる?熱い眼差しが苦手だって」
⚪︎「…はい」シュンッ
またシュンっとする〇〇。
7‘
奈々未「昔は苦手だった…私が冷めてるからかな…熱い目線で見つめられると私の奥底の…なんて言うのかな…」
伝えたいのに言葉が見つからない。
簡単な言葉でなら伝えられるのに、伝えたくない。
⚪︎「ゆっくりでいいです…」
8’
私の手に優しく、そっと手を重ねる。
いつもは暑苦しく、戯れてきて
アホの子みたいな子なのに
こういう時はすごく大人。
9‘
私の方が4歳も上なのに
抱擁力って言うのか、
別の人間に見える。
奈々未「私は臆病なの」
10’
私何言ってるんだろ…
乃木坂時代から知り合いで、
卒業後に〇〇と付き合って、6年。
色んな事があって、別れそうにもなった。
11‘
そんな時でも私は本心を言えないで、
いつも〇〇が本心を伝えてくれて、
私はそんな〇〇の優しさに甘えて、
何も言わずに、ただ抱きしめて
それだけ…
12’
それなのになんで今日…
自分の誕生日に…
⚪︎「奈々未さん…」
奈々未「臆病で…それを知られたくなくて、顔に出さないように心を落ち着かせてたの、本心を凍らせてた…」
13‘
ただ黙って、静かに話を聞く〇〇。
だからなのか、どんどん言葉が出てきてしまう。
奈々未「だから熱い眼差しで見つめられると、その本心が溶かされそうで怖かったの…」
⚪︎「そうだったんですね…話してくれてありがとうございます」
14’
私から目線を離す〇〇。
それが嫌で、両手で頬掴み目線を私に戻す。
奈々未「私の目を見て聞いて?」
⚪︎「はい」
15‘
奈々未「だけど、〇〇が私を見つめる度に溶かされるんじゃなくて、氷の上から包み込まれるように温めてくれた、それは決して本心を溶かすんじゃなくて…」
また言葉が詰まってしまう。
⚪︎「奈々未さん…言葉が出るまで僕の話をきてください…」
私の手を握る〇〇の手に力が入る。
16’
⚪︎「僕は奈々未さんと出会うまで、僕は冷たい目をする人が嫌いでした…」
奈々未「え…」
そうなんだ…〇〇が握手会に来てくれた時から
そんな感じはしなかったから…
誰にでも平等に優しいイメージだったし
17‘
⚪︎「僕の両親は忙しい人達で、誕生日も一緒に祝った記憶がありません…ほとんど家にいなかったので話したこともほとんどなくて、久々に会っても話す内容は勉強はしてるのかとか、そんなことばかり…」
悲しそうな顔をする〇〇、抱きしめてあげたいのに
〇〇に強く手を握られてる為、それができない。
⚪︎「そんなある日、僕のテストの点数が悪くて、それを見た両親が喧嘩をしたんです…」
18’
奈々未「ご両親が?」
⚪︎「はい、2人は言い合って、父は母に“お前が面倒を見ないから点数が悪いんだろ!”って、そんな母は“私は産みたくなかったのにあなたが産めって言ったんでしょ!!”って…」
奈々未「そんな…」
⚪︎「しかも小学生の僕の目の前で…それで父は母の頬を叩くと家を出て、叩かれた母に近寄ると…母は僕に冷たい視線を向けて、何も言わずに家を出て行きました…」
19‘
残酷すぎる…
⚪︎「だからなんですかね…僕はグレちゃって、中・高共に喧嘩三昧…ところかまわずに喧嘩をしました…だけど、そんなある日…あなたをテレビで見たんです…」
伏せていた目線を私に向けるその顔は先ほど違い、
なんとも言えない穏やかな顔をしていた。
20‘
⚪︎「その時、奈々未さんの目に冷たさを感じたのに、それと同時に暖かさを感じた…気がつくといつの間にか最古参のファンになっていました!」
あ、犬耳と尻尾が見える。
奈々未「そっか」
簡単でいいんだ…難しく考える必要も、
難しい言葉も使う必要はない。
21‘
ただ…思ったことを言えばいいんだ
奈々未「私は〇〇のおかげで本心をいえるようになった、〇〇のおかげで、今幸せなの!」
⚪︎「…そっか…嬉しい…あははっ…奈々未さん!」
“ぎゅうううう”
奈々未「〇〇…」
22‘
⚪︎「来年も再来年も明後年もその先もずっと…あなたの隣であなたの生まれてくれた日を祝わせてください…っ…」
奈々未「それって…」
⚪︎「僕と結婚してください」
奈々未「っ…ぅん!うん!」
〇〇の言葉に涙が溢れ出す。
23‘
“ちゅっ”
〇〇が私にキスをする。
⚪︎「奈々未さんと一緒なら冷たい目が嫌いになることはないから」
奈々未「〇〇と一緒なら熱い眼差しが好きなままでいられるから」
2人『『この先もずっと2人で』』
24‘
この作品はフィクションです。
実際の人物や団体とは関係ありません。
またこの作品内の表現や行動はあくまでも、
作品としてなので、実際に行っても、
責任は取りかねますのでご了承ください。
ありがとう!