忘却の青い空
忘れていた。
私は、けっこう記憶力も良いほうだし、地元にかえってきたわけだし、懐かしさに浸って、自分でもおどろいちゃうくらいに文章が書けるんじゃないかな。
そんなふうに思っていた。
土曜の朝、近くの喫茶店に行ってモーニングでも食べながら、雰囲気に酔いながら、自分でもバカみたいに文章が書けるんじゃないかな。
こんなふうにも考えていた。
実際の朝は、甥っ子4人に起こされて、一緒にマリオカートをして負けていた。
おもいのほか、マリオカートが楽しくてついつい本気で遊んでしまった。
小学生のころ、スーパーファミコンにハマっていて毎日毎日よくゲームをした頃が懐かしい。
昨日、東京駅でわざわざ買ったフルーツサンドを朝ごはんに食べ、出かける準備を念入りにする。
妹に最寄り駅まで送ってもらい、地元の駅にコワーキングスペースができていて感動したのも束の間。
時代の流れを感じる。
そっか
地元は二年半ぶりなんだなぁ
地元の駅名とか、地名とか見ると、28年も住んでいたはずなのに、なんだか本当に久しぶりな気がしてたまらない。
景色をみながら電車に乗っていると、突然それはやってきた。
「パンとコーヒー」を更新していないという事実に気づく瞬間だ。
地元に浸ってる場合ではないのである。
すっかり私の地元である名古屋駅周辺、名駅は変わっていた。
私の働いていたお店は、私の知らない人が今日も元気に働いていたのを確認し、知っている人がいても「もう私のことなんて覚えてないだろうなぁ」と感じて、声がかけられない。
声はかけないけど、同じ場所でずっと働いてくれるだけで、なんだか嬉しくなる。
がんばってるんだなぁ。
生きてるんだなぁ。
またまた何ともいえないような切ない思いを抱える。それはとてつもなく色んな記憶も鮮明によみがえってくるわけで。
高島屋の靴をよく仕事帰りに見に行ったなぁ。
デパ地下のパン屋さん好きだったなぁ。
1階でお財布買ったなぁ。
だらだら三省堂を見ながら、タワーズのスタバに行っていっぱい愚痴って、いっぱい喋って楽しかったなぁ。
たくさん思い出がある名駅なのだけど、地上は新しいタワーができていてよくわからない。地下なら大丈夫かと思ったけど、地下もめちゃくちゃ進化していた。
名駅が変わっていたように、きっと私も変わっていて、名古屋に住んでいた頃の気持ちではない。
同じように名駅で働いていた同僚は、今も変わらず働いていたけれど、あの頃と同じようにいっしょに笑えるだろうか。
変わることはいいことだし、私は変わりたい。
ただ、変わってしまうと同時に少しだけ楽しかった頃と同じ気持ちではないということに気づいた瞬間、さみしいと思った。
あの時、一緒に靴を買いに行ったお店の前で、私はいま文章を書いている。
あの頃の気持ちも忘れないように。
そんな土曜の昼下がり。
追伸.
高島屋のローズパティオおすすめ。どこ行っても混んでいて座れない、買い物に疲れた、ちょっと喋りたいけど、お金ない。そういうときに活用していた場所だったのです。
Photo&Text. nanamedori
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