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Wrap the lupus
最近お気に入りのマリンテイストのトートバッグの中をそっと覗いて、メイは口元をほころばせた。エレベーターが1階に着く。同じお菓子教室から出てきた大人数人と一緒なので、エレベーターの出入りに用心が要らないのはありがたい。
教室からつれてきた甘い香りを素っ気ないビルのエントランスに振りまきながら、その日だけのクラスメイト達は挨拶を交わして通りを右へ左へと散って行く。
「あなた、お迎えの人が居るのよ
FIREWORKS 4
「星とタカラモノ」~指し示すFire works ~Isaac 8才~
「それじゃあ5時にはお戻りですね?ご一緒出来れば一番いいのですが、、」
マルトフ家の馬屋番を務めるエイキンは、ホテルで目覚めてから何度となく同じ事を確認している。
「大丈夫だから早く行って。その、、デート、、なんでしょう?」
「は、あの、すいません、、」
往来も盛んな宮殿広場、大の男が子供に頭を下げている構図。気
FIREWORKS 3
「ヒカリの迷宮」
~焼き付くFire works ~お町4才~
「めりーくりすまーす!」
甲高い声が弾む。椅子に立ち上がりテーブルに手をついて、膝がぴょんぴょん踊って。
「揺れるわ町子。ママ、ナイフを持ってるのよ?」
素直にはしゃぐ娘を見ながら、母親はまるで夢のような光景だと、思わず感じ入ってしまった。日頃の夫の激務を考えれば、クリスマスだからと言って親子三人水入らずなどと、全く奇跡
★FIREWORKS 2
「指先のシンジツ」
~ひとごとのFire works ~K id6才~
引っ越してきて3日目。丈太郎はここの町並がすっかり気に入っていた。古い石造りの町の中心にはサークルスクランブルがあり、噴水の中央には苔むした彫刻から水が吹き出している。
環状に広がった町の外側は新興住宅街、特に東の方向へはよく発展して、隣町の真新しいサークルスクランブルまで途切れなくショッピングモールが続く。双方のサー
FIREWORKS 1
「アカルイミライと物置き」
~しらけきったFire works ~Bowie 6才~
シスターメリーが電話を終えたのを見計らってボウイは声をかけた。
「ただいまシスター。病院いくの?」
「ああ、おかえりなさい。早く帰ってきてくれてうれしいわ。あのね、リンディが帰り道で怪我してしまったんですって。サニヤが付き添ってくれているのだけど、私も行ってあげないと」
ボウイはすぐにうなづいた。ち
Dancing Philosophy
入り組んだ海岸線、西日と影を交互に浴びながら、銀のオープンカーが白い建物のガレージに納まった。夕凪の入り江はプライベートビーチさながらに静まり返っている。
車から降りた四十がらみの男は、黒のジーンズに白いシャツ、それからサングラス。派手ななりではないのに浮ついた、、、これがもっと若い男だったならホストといったことろか。どこかそういった風俗稼業を思わせる。
助手席から少女が降りる。つんとした顎
Midnight Crocodile
その時私は、生暖かい水の浅瀬に寝そべっていた。
ぬるい水と湿った土の匂いが心地よく、最新のリラクゼーションシステムでもここまでは出来まいと言うほどゆったりとくつろいでいた。
ふと、違和感を覚える。
なぜ、こんな水が心地よいのだろう。私の記憶の奥に刷り込まれた水は、溶ける事を許されないほどに凍りつく、透明で清廉な水のはずだ。
ここはどこだ。なぜ水に浸かっているのだろう。
心地よさを自ら遮
西暦2001年カルナバルの反省文
カルナバルの思わぬ大嵐で、遊び疲れ、仕事疲れ。キッドとボウイはこのところ基地内でおとなしくしている。
今もメインリビングで、メイとシンを相手にファミリー向けのボードゲームに興じている。どちらかと言えば、相手をしていただいているのではあるが。
「お町は?まだ戻らんのか、、」
通りかかったフリをしながら、いつ言おうかとタイミングを見ていたその一言をアイザックは口にした。
「心配ないだろー?
MATERIAL FRIENDS
明け方までキッドと遊び回ったせいですっかり朝食を取りそびれてしまったボウイ。腹の足しになるものを求めて徘徊し始めた。
キッチンに辿り着く手前、メイとシンの部屋を過ぎた辺りに小さな創庫代わりの部屋がある。創庫と言うよりは物置。日用品のストックや、家電の類いが置いてある。
「はぁい、リンリンは今日はA ブロックお願いね。ポコタンとアッシュは大変だけど、格納庫よ」
開け放しになったその部屋から
ぐり~ん ぐり~ん らびりんす
無数のドアを開け、うんざりするほどの仕掛けをクリアしてきた果てに飛び込んだその部屋は広くはなかった。
「辿り着いたぜ!こンのイカれトンチキのマッドゲーマーがっっ!」
幾つもの角を曲がり階段を上がりそして下り、息も上がっていると言うのに悪態をつく事だけは欠かさない。そのボウイの声も終わらぬうちにアイザックのビームロッドが直線を描いて飛び、デスクの向こうで腰を浮かせた中年男を捕らえる筈だった。