人工内耳装用者から見たVRChat使用感
挨拶
みなさん、こんにちは。あるいは、こんばんは。
VRChatというVR機器を使って人々と交流するゲームに大ハマリして、1年と半年が経過していました。3Dアバターで好きな格好をして、気の合った仲間と雑談で盛り上がったり、キレイなワールドを散策したり、時にはホラー要素のある世界に飛び込んで肝試しをしたり……VR特有の感覚が身近に存在することが楽しくて、誰かが『終わらない放課後』と例えていた言葉がまさにその通りだと思い、日々楽しんでいます。
さて、そんな楽しいVRChatですが、私は難聴者として日々利用しています。もう少し具体的に書くと、中途失聴者で、人工内耳という道具を使っています。
あとで簡単に説明しますが、補聴器とは厳密に違うけども、同じように音を増幅させて聞こえるようにさせてくれる機器です。
私はこの人工内耳を使うようになって、聞こえが大きく代わり、日常生活での聞き取りが格段に良くなりました。VRChatの音が聞こえているのも、これ無しでは成立しないほどです。ですが、人工内耳も万能ではありません。
この記事では、人工内耳を使ってVRChatをしている私が感じたこと、便利だなと思った機能についてお話ししたいと思います。
人工内耳による聞き取りの差は、とても個人差が大きいと思っているので、あくまで私の一例として受け取っていただけると幸いです。人工内耳を装用したことによる聞こえを保証するものでもありません。
前置き
ざっと私の状態を書いてみます。
専門用語が並んでなんのこっちゃとは思いますが、だいたいそんな感じなのだな、くらいに思っていただければと。
・人工内耳とは
詳しい説明は引用先で解説しているので簡単に書きます。
手術が必要ですが、内耳に電極を入れて電気信号で刺激させて音を聞く方法です。
・私の聞こえについて
突発性難聴により失聴。長年補聴器を使っていたが、聴力の低下により、人工内耳手術を受ける。人工内耳歴は右耳が4年目、左耳が3年目です。
装用していない状態の聴力は、両耳100dB以下。
両耳に装用時の聴力は40~30dB辺りです。
(正常な健聴者の平均聴力レベルは25dB未満)
私の2023年地点での聞き取り能力。
右耳
単音節42% 単語32% 文章30%
右は元々聞こえが弱くて、人工内耳になった後でも聞き取りはあまり良くありません。
左耳
単音節70% 単語92% 文章50%
雑音が発生している状況時の数字です。
主に左をメインに聞き取りをしています。
昔から左の耳では補聴器を使って音楽を聞いていたりしていたので、聞こえの土台がよくできていたようです。
ここからが本題。
補聴器や人工内耳を使っていて気になるのは、使いたい道具や帽子などが機械に干渉しないかという点です。人工内耳は埋め込んだコイルとプロセッサが磁石でくっついて使いますが、そこに物が当たったり、こすれたりすると、正しい聞こえになりません。できれば、プロセッサ周りがスッキリしているのが理想だと思っています。
VRを始める前からちょっと気難しいですね。
私の使用環境を書いてみます。
また機器を装着時の写真も添えておきます。リアルアバターにご注意ください。
・HMD機器
使っているHMD(ヘッドマウントディスプレイ)はQuest2です。
マイクとスピーカーも、そのままデフォルトのものを使っています。
・デフォルトのストラップはNO!
で、HMDってどうやって固定しているのかというと頭部にストラップを締め付けるように当てています。
特に、Quest2のデフォルトストラップでは、写真の通りに人工内耳を付けた箇所と重なっています。上手くフィットさせる方法があるかもしれませんが、これでは装着時にも、ゲーム中にも外れるきっかけになりかねなく、私は使っていません。
・エリートストラップはだいぶギリギリ!
そこで、私は写真のような角度をつけて装着できる他社が出したストラップを購入しました。コイルの埋め込み位置によって個人差がありそうですが、ギリギリなんとかなっています。シンデレラフィットです。
・VRChat空間内の聞こえ
さて、前情報が長くなりましたが、聞こえの準備を説明したので、VRChat内について話してみます。主に注目したいのは、この世界ならではの便利機能です。
・ネームプレート
VRChat内では他者の名前がアバターの頭上に浮かんでいます。
そして、このネームプレートの便利なところは、その人が発声中は青く光ります!
それの何がすごいのか。静かな場所でも、混雑時でも、ネームプレートが光りだしたらその人の声に意識を傾ける合図になるのです。耳を傾けることで声が拾いやすくなるのは現実でも同じですね。
アバターの口が動くことも判断材料になりますが、現実とは違って口の形を読むことはできません。このネームプレートであれば、目でみて音の発生源の判断ができる。その違いはとても大きいと思っています。
現実でも欲しいですね。
・イヤーマフモード
自分を中心に、声を拾う範囲を設定することができる機能。
VRChat内は声の距離減衰が設定されていないと、ワールドのどこに居ても他の音が聞こえることがあります。マイクで音を拾ったら一定の音量が発生するので、少し離れていても他の音が混じりやすいことも多いです。
そこでイヤーマフモードを使うと、自分が音を拾いたい範囲を指定できます。
他のグループが会話しているけど、隣で話している人の声を聞き取りたい場合は、音を拾う範囲が狭くしてやると非常に便利です。
・個別の音量設定機能
その人の声が小さい(大きい)かな、と思ったら個別で上下できる。
人によってマイクの環境は様々で、中には声が小さい(大きい)人も居ます。個別設定では、その人のみの音声を0%~150%で音量をいじれるので、よりピンポイントに声を聞くことができます。
聞こえづらいもの
・騒がしい場所
イヤーマフモードを使っても人が密集していると、やや聞き取りが大変な場面があります。その場合、広い場所に移動するなり提案します。
・ボイスチェンジャー
このゲームでは、機械やソフトを通して声色を変えて、アニメのような可愛い声をだしたり、カッコいい声を出す人も居ます。そんなボイチェンですが、声がくぐもって聞こえてしまうとか、ガビガビ声になっている人も居ます。
ボイチェンの調整による。発声の仕方。という一言で終わってしまうのですが、そもそも、人工内耳はボイチェンの機械音声を聞けるように設定されていません。人の声の波長に合わせてマッピングしているので、どうしても聞き取りにくさが出てしまうのだと思います。
・声の距離減衰
ワールドによっては距離に応じて声が大きくかき消される仕様があります。これもしょうがないです。そういう時は他のワールドに移動するなりします。
豊富な会話手段
マイナス面も紹介してしまいましたが、VRChatは声以外でもコミュニケーションがとれます。主に使われている方法を書いてみます。
・口語
私は主に口語のやり取りをしています。
設定と環境に大きく左右されるものはありますが、安定して聞こえている使いやすさ、伝わりやすさの面で素の声を出しています。
・文字チャット
ゲームに備わっている為、どこでも誰でも使える。
マイクがない人でも使いやすいシンプルな機能です。
・筆談
中には無言勢という、声を一切出さずにゲームを楽しんでいる人々もいます。その人たちはワールドに置かれたペンを使って筆談をしています。
空中に文字が書ける、絵も描ける、パッとワンタッチで消すこともできる。ちょっと未来を感じる会話方法で、私はとても好きです。
ペンが置いていないワールドもあります。
・VR手話
VRでは機器によって手の形が限られていますが、それでも使えるようにVR用の手話を作って教えているグループがあります。現実の手話と同様にコミュニケーションをされています。すごい!
また、中には指の形を自在に動かせる機種もありますが、私は持っていないので割愛します。
VRChatは人工内耳に優しいのか
便利な面、不便な面を上げてみましたが、可視化された便利機能がサポートをしてくれます。
もちろん、自分がいるコミュニティや、一緒に遊んでくれるフレンドさんの好意など、人と交流をする場面が多いからこそ、人間関係の積み重ねによる理解の部分が多いと言えます。日々感謝です。ありがとうございます。
・自分から伝えよう
「聞こえが遠いので、ゆっくりと話してもらっていいですか?」
「すみません、聞こえませんでした。もう一度いいですか?」
「今のところ聞こえなかったので、ペンで書いてもらっていいですか?」
やっていることは現実と変わりませんね。
各々の話し方のスタンスの違いはありますけど、だからこそ、喋る人も、無言の人も居て、それぞれの話し方で交わっていくので、「私が居ていいんだ」と感じやすい、優しい世界ではないでしょうか。
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