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「14歳の栞」

懐かしい気持ちが胸に充満すると同時に
あそこにはもう戻れないんだという気持ちが胸を刺す。

当たり前だったはずの日常が美しい。

「14歳の栞」という映画を見た。
胸があったかくなって高揚している。

落書きで埋め尽くされた机
なぜか二人で行くトイレ
好きな先輩とすれ違った廊下
好きな先生の授業
謎に本気でやる合唱祭
青春の塊みたいな体育祭

思い出は美化される。

辛い記憶はどんどん色あせ、楽しい記憶はどんどん色濃くなる。
そりゃあ辛い記憶は思い出したくないし、覚えておきたくもない。
だって辛いから。
人間の脳みそってよくできてると思う。
だからこそ辛かった思い出を美化させてはいけない。

悩んで悩んで悩んで苦しんだはずの中学時代が終わりを告げて、5年もの時が経つとこうも輝いて見えるのか。

仲間外れにされたこと
顧問に「消えろ」と言われたこと
他人の評価を一番に考えていたこと
暗い道を泣きながら帰ったこと
もう全てどうでもよくなったこと

目に見えるものが全てだと思い込んで
この世界を拒絶し諦めたあの日のことを思い出す。

いつか思い出は美化される。

あの時にしかわからないあの瞬間を
真空パックで閉じ込められたようなそんな映画。

極論をあおりたがる現代社会で
ハッピーエンドでもバッドエンドでもどちらでもない、
エンディングに収まりきらない彼らの人生は
まだまだ続く。

桜散る桜散る
ひらひら舞う文字が綺麗
「今ならまだやり直せるよ」が風に舞う

今からだって何にも遅くない。
今ならやり直せる。けど
やり直さなくたっていい。
過去をそのままに積み重ねていくことだってできる。

きれいにしまっておきたくなる思い出をどうか
新鮮なままで保管してほしいと願いたくなる。
変わらないで欲しいとは言わないから
どうか美化しないでと。

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