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女性用下着高すぎねえか問題

ブラがヨレヨレ(というかほぼ半壊)してきたので年末までに買い替えたいな〜なんて思って、お風呂の中でオンラインショップを徘徊。今まではユニクロとかで買っていたけれど、素材や縫製段階に搾取のないものがいいので、今後はなるべく避けたいな…なんて思いつつ。

いろんなサイトを覗き見ながら、ワイヤー、ノンワイヤー、キレイ寄せ、ボリュームダウン、楽ちんキャミetc….普段本当に縁のない「キレイめセクシー」みたいな言葉を見ると、こういう世界線もこの世にあるよなあとちゃんと思い出したりする。一方でシンプルなデザインものも少しずつだけれど増えていて、とても嬉しい。私はレースがあんまり好きじゃないから。虎とか、龍とか、カマキリとか、それらがカッコよくレースになってるデザインもあったらいいんだけれど。大体はカップ部分にバラだったり小花だったり、フローラルなモチーフばかりがあしらわれているのは、なぜなんだろう…なんてことを考えながら、値段もチェック。う〜〜〜〜〜〜〜ん…しかしまあ、どれも、高い!まとめて買い換えるには、高すぎるカモ!??なんて思いながら、一旦スマホを置いて風呂から上がる。

なんで女性用下着ってこんなに高いんだろうか。なんなら、レースが付いてないものほど、高い。淡い色になればなるほど、高い。装飾がまったくないほうが、高い。もちろん素材にこだわり、環境配慮を徹底し、少ないロット数で制作したらその値段になることは容易に想像できるので、ケチをつけようってわけではない。ただ、男性用下着(パンツ)が3枚セット1000円でも、爆裂に品質が悪いわけではなかったり(製造過程は良くないかもしれない)、そもそもパンツ一枚だけ履けばいいのと比べると「…え?!」と思ってしまうのだ。下着は毎日替える、が衛生的に日本ではスタンダードな考え方。それなのに、一枚3500円〜(ブラのみ)? そこに3000円〜のショーツを合わせて買えば、アンダーウェアだけでトータル6500円??? 週末に洗濯をする、という仮定で5セット分揃えるとなると32,500円、そこに生理用のショーツ3500円を5枚買ったら…50,000円?マジ????正気???これって普通????私だけ貧しい感じ???

そりゃみんな、いい下着ばかりを買ってるわけじゃないのは分かってる。ユニクロや無印やGUやニッセンやzozoセールetcを行脚し、セット販売の下着を血眼で探し、自宅用やとっておき用などなどを揃えていることだろう。ていうか私がそうだ。けれど、そこで「せっかく通年使うものだから…」と環境や人権に配慮したもの、肌触りの良いものを選ぼうとすると、急に値段が上がり、生活を圧迫してしまう。現状、私は上下の下着に6000円以上かける余裕は全然ないし、今後余裕が生まれたとしても、そのお金は他のこと(エンタメ)にお金をかけたい。そうなってくるとブラ&ショーツ VS エンタメの対決が始まる。ん?この二つって、天秤にかけなきゃいけないんだろうか…??てかどんな対決????変じゃね?VS バンド? VS 寄席??VS 美術館???文化系タッグマッチですか???

一旦落ち着いて考えてみる。男性がパンツだけでよくて、女性が上下の下着が必要なのは、女性は胸も急所だからとか、衛生的に守る必要があるからとかではない。それで言えば男性だって胸部は急所だけど、なんならトップレスで歩いていても「危ない!!死ぬぞ!隠せ!!!」なんて言われないだろう。じゃあなぜ女性だけが下着をつけなければならないかというと、胸の膨らみと乳首に性的な文脈が強くついているがゆえに、それを他者の視線から隠す必要があるからだ。ということはブラジャーって「半強制的に社会から求められて装着せねばならないもの」ではなかろうか?

ヨーロッパで盛んな「フリー・ザ・ニップル(乳首解放運動)」。日本だと揶揄の対象になりがちだけど、私はあれを見るたびにすごく「わ、わかる〜〜〜〜〜〜!」という気持ちになる。性的に見られる、あるいはその眼差しを制御できない人たちのために、私は胸を締め付ける謎の拘束器具を、私からお金を出して着けているのか…???という憤りが、少なからず私の中にもあるからだ。そして何より「ブラを買わなければ、このお金で寄席に行けるんだよな…」「この3500円で、ライブに行けるな…」「あの展示に…」「あのポップアップに…」「私が男だったら、浮いていたお金だな…」と思ってしまう。

「乳首以外の女性の体のあらゆる部分を見せることができる文化の中で生きていることに、いまだに驚かされているわ。まるで(乳首が)女性の体の中で唯一性的に扱われる部分であるかのよう。赤ちゃんに栄養を与える乳首! 男性の乳首はエロティックに感じられないのかしら?! そして、女性のお尻はどこでも検閲されないのはどう? 40年にわたる検閲、性差別、年齢差別と女性差別の中で、なんとか正気を保ってこられたことに感謝するわ」とコメントし、「#artistsareheretodisturbthepeace(アーティストは平和を乱すためにここにいる)」というハッシュタグをつけて投稿した。

https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/a44100219/free-the-nipples-20230617/ (左記の記事より、マドンナのコメントを抜粋)

じゃあみんなこの運動に参加しようぜ!ということがこの唐突なエッセイで伝えたかったわけじゃなく、こんなに不景気な中で下着の値段と睨めっこしながら来月の収支と照らし合わせる時間があんまりにも惨めすぎた。忘年会にクリスマス、年末年始。年の瀬の芝浜を鈴本演芸場で連日聞くために貯金をしたいけれど、ブラ紐の限界を考えるとどちらを優先したらいいんだろう、とか…なぜ考えなくちゃいけないんだよ!という気持ちが、今にも爆発しそうなのだ。

とはいえヨレヨレの下着で年を越すのも流石にテンションが下がるので、風呂に上がったいま、これを書きながらさらにネット通販のサイトをリサーチし続けている。けど安いブラって結局すぐよれるんだよな…あとレースついてると洗濯面倒なんだよな…なんてブツブツ言いながら。いや〜、大変に惨めだ。もちろん下着のあしらいやレースやデザインが大好きな人たちを否定したいわけでもなく、どっちの選択肢もあってくれよと思うのだ。美しいデザインの下着は、着るだけでその人に勇気を与える。そんなパワーがあることも、もちろん知っている。楽しみたい人はそこにお金を使えばいいし、どうでもいい人、ていうかお金をかけたくない人は着けなくてもいい世界。体調に合わせて、洋服に合わせて、着けたり着けなかったりしていい日々。それって生きている間には難しいんだろうか。これからの人生で買うブラジャーの枚数と、その分犠牲になった寄席の木戸銭について計算しながら、髪の毛を乾かす。うーん。


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