君に贈る火星の

「君にこれあげるよ」
 と言って、友人がくれたのは玉ねぎだった。

「え? 何これ?」
「僕、玉ねぎ好きだなんて言った?」
 どちらかといえば嫌いだ。あのシャリシャリして苦いか甘いかどっちか分かんないやつ、頭がごちゃごちゃするからどちらかに統一してほしい。だから、玉ねぎをもらっても、「うわー嬉しい」と素直には喜べない。

「知らないの? これ火星の玉ねぎだよ」

「か火星の玉ねぎ……いや、いらな〜い!」
 火星の石や砂とかなら欲しいけど、火星の玉ねぎを貰った所でどうしろと?

「そもそも、これ本当に火星のなの? スーパーに売っているやつと大差ないように見えるけど?」

「本物だって。食べれば分かる、しっかりと火星の味がするから」 

「分かった。さっそく今日食べてみるよ」

 その日の夜、火星の玉ねぎは母の手により、無惨にも、焼きうどんの具材の1つとして使われ、ソースまみれになっていた。

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