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視点を変えてみる

私は視覚特別支援学校(盲学校)に勤めている。

そこでは、目の見えない、見えにくい子ども達が学んでいる。

ある日の事務室での一コマ。

事務室の台車が古くなり
ガタガタ音がするようになったので
新しく買い替えた。

新しい台車が届いた時の皆の反応は
「わぁ~静か~」「静かでいいね~」だった。

それはごくごく自然な反応なのかもしれないが
私は若干の違和感を覚えた。

見えない、見えにくい者にとって
「音」は非常に重要な情報源である。

確かにガタガタ音のする台車は耳障りかもしれないが
台車が「そこにある」「近づいてくる」ことを知る上では
重要な要素を含んでいると言えるだろう。

もちろん、台車を押す人は晴眼者(見える人)で
子ども達の近くを通る時には注意を払い
「通ります」などの声かけをすれば
問題はないのかもしれない。

同じような現象はハイブリッド車にも言える。
とても静かでいいのかもしれないが
無音でスーッと横を通り過ぎていくのは
見えない、見えにくい者にとっては脅威である。

ハイブリッド車に関しては
あえて音を出す装置も開発されてきているが
やはり、視覚障害者や歩行者への配慮は必要だろう。

もちろん古い台車はケガの原因にもなるかもしれないし
新しく買い替えることは間違いではない。

ただ、心に留めておきたいのは
ある人にとってはプラスのことでも
ある人にとってはマイナスのこともある、ということである。

社会の中で
物事はマジョリティのプラスになるように考えられがちだが
それがマイナスになる人はいないか
何かを変えることで、不利になる人はいないか
さまざまな角度から検証する必要がある。

世の中には、いろんな立場の人がいることを心に留め
想像力豊かに生きていきたい。

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