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人間って、案外カンタンには死なないんだな~集中治療室古株編②~

術後の経過は最悪ですが、なにか?

ほとんど誰もいない集中治療室にいると、テレビやスマホもないまま、痛みと闘いながら、ずっとベッド上で過ごすことになってしまう。

そんな時に限って、『タラレバ』の話が頭から離れない。今更になって、自分の生活態度を後悔したところで、何かが戻って来るわけではないし、これが夢で終わることもない。

・あの時、先生の言うことをもっとちゃんと受け止めていれば・・・。
・もっと自分の体を労っていれば・・・。
・あの時、誰かに相談してたら・・・。

まぁ、今更になって考えても、どうしようもないことである。

術後すぐに、高熱が出るのが4~5日は続いた。毎日看護師さんが解熱剤を点滴で投与してくれて、体を拭いてパジャマを取り替えてくれる。血栓が出来るのを防ぐために、医療用の着圧ソックスを履いて、自動的に足をマッサージしてくれる機械に、足を入れる。

毎日採血をして、部屋にレントゲンを撮りに来てもらうのだが、体位交換するシーツで持ち上げられて、その下にレントゲンの板みたいな物を差し込む。それだけで、かなりの激痛だった。

土日の週末の期間も、外科の主治医の先生は、毎日来て傷口や全身状態の様子を見てくれた。時には深夜に来ることもあって、『先生は本当に休んでいるのか?』と、心配になったくらいだ。

ステロイドを60ミリも服用したままだと、手術の傷口が縫っても開いてしまったり、そこから細菌に感染するリスクが高いらしい。そして、私の全身症状から見ても、未だに予断を許さない状況らしかった。

だから、まだ集中治療室からは出られないらしい。

外科の主治医の先生は、処置や回診が終わると、「よく頑張りましたね」と微笑んでくれるが、内心では「めんどくせぇ患者だな」と思っているかも知れないと疑心暗鬼になっていたが、先生と話していくうちに、そんなことを疑っていた自分が恥ずかしくなるくらいのスーパドクターだったのだ。

週末の集中治療室には、とうとう私1人しかいなくなったが、未だに自分で体勢を変えることも出来ないまま、高熱と痛みにうなされるのだった。

口から飲めるのは水だけで、薬も点滴から入れてもらっていた。全身状態が回復してくる気配もないまま、毎日看護師さんのお世話にならないと、着替えすら出来ない。

「先生、私みたいな面倒な患者っていますか?」と、ある日の回診の時に主治医に訊いてみたが、主治医は微笑んで誤魔化しつつ、「確かに珍しいケースではありますね」と言った。

やはり、私みたいな状況の中で、手術するってこんなに大変なのかと思った出来事でもあった。

そんな時は、看護師さんが唯一の話し相手となってくれた。独り言を話していて、ヤバい奴だと思われても恥ずかしいし、テレビも見れないし、スマホもない状態で、本当にどうにかなりそうだったのは事実だった。

看護師さんは自分の仕事の合間を縫って、私に看護と安らぎと笑いを提供してくれたが、笑ってお腹に圧が掛かるだけでも痛かった私は、相当変な顔をして笑っていたんじゃないかと思う。

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