人間って、案外カンタンに死なないんだな~さよなら集中治療室編~

手術から5日でやっと個室へ

紆余曲折あって、5日目で一般病棟に移れることにはなったが、ナースステーション近くの個室だった。

その間には、血液中の酸素濃度が極端に低くなっていて、レントゲンでは肺に血が溜まった状態だったらしい。

私の意識がもうろうとしている中で、家族はもう一度、外科の主治医から呼び出されて、依然として私の全身状態が悪いのと、最悪な合併症も発症してしまったと、厳しいことが言われていたらしい。

「今週は手術が立て込んでいるので」と、病棟の師長さんは言っていたが、集中治療室にいた時のように、毎日2人組で看護師さんが来るので、今までとは何ら変わらないままだった。

毎朝、体を吹いてもらって、パジャマを着替えさせてもらって、新しい点滴に変えてもらう。

その間も熱が出ている状態だった。ステロイドが60ミリのままで手術してしまったこともあり、血液中に細菌がないかの検査もしたが、案の定手術した部分から、細菌に感染していることも判明した。

相変わらず採血の結果も悪いままで、回復もかなり遅いままだったが、もう少ししたら、外科の病棟にも移れるらしい。

一番の大きな壁は食事

ベッド上での動ける範囲も、少しずつ広がって、SNSに近況報告が出来るまでになったが、ここで出て来た問題が、ご飯の問題だった。

手術前も手術後も、約3週間近くは固形物を食べていない状態だった。口から摂取したものといえば、水分だけだった。

気が付くと、水分以外のものは受け付けない体になってしまったのか、胃袋もかなり小さくなってしまっていた。

薬も点滴の横から入れている状態で、毎日の点滴の量もかなりの数と種類だった。

外科の主治医からは、毎日のように「ご飯は始められそう?」と聞かれるが、私には首をかしげて笑って誤魔化すくらいしか出来ない。

しばらくご飯を食べていなかったこともあって、栄養分は点滴に頼りっぱなし、先生も「口から食べられると、傷の回復も早いんだけどなぁ」とつぶやくが、まずは水分から攻めてみることに…。

先生の指示を受けた看護師さんが、「テルミール」をダース入りの箱で持ってきてくれた。カロリーメイトのような栄養価が高い飲み物で、大きさはミルミルみたいなサイズのもので、色んな味があるらしい。

バニラ味やチョコレート味、色んな味がある中で、看護師さんも勉強の過程で試飲するのか、「一番マシなのはバナナ味かな」と教えてくれた通りに、記念すべき初テルミールは、バナナ味に決定した。

もらって手に取ってみると、案外カンタンに飲み切れそうな感じもする。「これは栄養食じゃなくて、ジュースだ!!!」と自分に言い聞かせながら、テルミールを一口飲んでみる。

思い切って1口を口にはしてみたものの、想像していたバナナジュースの味ではなかった。看護師さんが「味わって飲むものじゃないよ」と言っていたのを思い出してしまった。

確かに味わって飲む代物ではなかった。看護師さんは飲むのにも時間が掛かるだろうからと、違う患者さんのところに行っている間に、私はテルミールの味わってはいけないバナナ味に決闘を申し込んだ。

決闘の結果は、私の圧倒的な完敗。この小さな飲み物に、完膚なきまでに負かされてしまうとは…

味合わないように、一気に飲んでしまったのが良くなかったらしい。飲んだ直後に、全てを一気に吐いてしまったのだ。

吐いたテルミールが鼻まで上がって、鼻から口は胃酸が混ざった、最悪のバナナ味。これがトラウマとなって、食事からも遠ざかってしまったのだった。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?